【完結】どうぞ他をあたってください

風見ゆうみ

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8  焦る人たち ①

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 最近のトータムは仕事があるからと言って、寝室で眠ることもなくなっていたのに、今日は違った。

「今日、ラフリード様が訪ねてきたらしいけど、どんな用件だったの?」

 義母からラフリード様が来たことを聞いて不安になり、様子を探るために来たようだった。

「あなたがフララさんとジゼル公爵家に伺っていたことについての話だったんだけど、何か気になることでもあるの?」
「いや、アリムは事情を知っていて許してくれていたのになんでかなって」

 実際は許してないのよ。アリム様は嫌な気持ちになりつつも、夫の相手をしてくれている。

「アリム様が許せても公爵閣下たちが許すとは限らないでしょう。そのことについて、シゼル公爵家から手紙をもらったの。フララ様から処理をしておけと言われたから、責任を持って仕事をさせてもらうわ」
「そうか。ありがとう」

 トータムはそれ以上、詳しい話は聞いてこない。なんといって、フララさんの待つ執務室に行こうか考えているみたいだ。
 彼を寝室から追い出すために、最後の確認をしておく。

「ねえ、トータム。そろそろフララさんとの仲を認める気にならない?」
「しつこいな。彼女は妹だって言っているだろ!」

 トータムは穏やかな表情を一変させて怒鳴った。

「妹だと言うんなら、そんなに怒らなくても良いでしょう。あなたの浮気の定義ってどんなものなのか知りたいわ」
「家族以外の女性と性的な関係を持つことかな」
「その言い方だとウララ様とも関係を持っても良いことになるけど、それについてはどうなの?」
「さすがに母親はなあ」

 笑うトータムを見て、妹なら良いのかと口から出そうになった。
 心を落ち着けて尋ねる。

「あなた、最近フララさんと遊び呆けているみたいだけど、仕事のほうは大丈夫なの?」
「お母様に任せているから大丈夫だよ」

 そのお母様は私に仕事を押し付けてるわよ。

 となると、離婚して家を出ていけば、トータムも遊び呆けていられなくなるわね。離婚するまでは、このまま黙って仕事をしておいてあげましょう。

「そう。それなら良かったわ。あ、そういえば、ラフリード様はメイドの件であなたに連絡を入れると言っていたわよ」
「えっ!? メイドの件ってどういうこと?」
「気になるならウララ様に聞いてみればいいと思う。もしくは、フララさんと仲良しのメイドたちにでも良いかもね」
「一体何があったんだ!? 教えてくれよ!」

 焦るトータムに私は笑顔で答える。

「私はもう眠る時間なの。トータムはまだお仕事があるんでしょう? 体を壊さない程度に頑張ってね」
「いや、話を聞いてから」
「眠ると言っているでしょう?」

 冷たい声で言うと、トータムは泣きそうな顔になって逃げるように部屋から出ていった。

 一度冷めてしまうと、今まで見えてこなかった部分が見えてくることもある。

 素敵だと思っていた彼は、浮気をするくせに妻を捨てることもできない、ただの優柔不断で弱い人だった。
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