犬猿の仲だと思っていたのに、なぜか幼なじみの公爵令息が世話を焼いてくる

風見ゆうみ

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27 ビアラの魔法

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「今日は何をしに行くの?」

 学園が休みの日のバイトを終えたあとに、私は馬車の中でミーグスと向かい合っていた。

「前に言ってたでしょ。君の属性を調べに行くんだ」
「調べてどうするのよ」
「調べておいて損はないだろ。僕は水と氷の属性の攻撃魔法が使えるんだけど、君は何だろうね」
「あなた、2属性も使えるの!?」

 攻撃魔法が使えるだけでも珍しい話なのに、基本は1人1属性しか使えないと言われているのに、2属性だなんて!

 魔法については属性が何かわかってからでないと使えず、しかも使い方は学園では教えてくれず、家族から教わるのが普通だ。
 だけど、私は属性を調べる前に家族は亡くなったし、調べるのにもかなりのお金がかかるので、一生知ることはないと思っていた。
 
 驚いて聞き返すと、ミーグスは不思議そうな顔をした。

「話をしていなかったかな」
「わからない。記憶がないわ」
「話していたとしても、君は僕に興味がなかったから、覚えていないだけかもしれない」

 どこかミーグスの言葉がトゲトゲしく感じたので眉根を寄せる。

「そんなことないわよ」
「じゃあ、君は僕の何を知ってるの」
「性格悪いとか」

 無言でミーグスが私を睨んでくる。

 私には意地悪なんだから間違ってないじゃないの。

 睨み返すと、ミーグスは続きを促してくる。

「あとは何があるの?」
「世話焼きだったりする。この点については感謝しております」
「他には?」
「えっと、好きな人がいる?」
「……そうだね」
「好きな人に好かれてる」
「どうしてそう思うの」
「なんとなく」

 もし、皆が言うようにミーグスが私のことを好きだったとしても好かれていることは間違いないでしょう。

 そこまで考えて、私は首を横に振る。

 ないない。
 やっぱり、ミーグスが私のことを好きなんてことがあるわけない!
 この無限ループみたいなやつから抜け出したい!

「さっきから、何を一人で百面相してるの」
「そんなことしてないわよ!」
「焦った顔になったり馬鹿にするような顔になったり、表情が色々と動いてたけど」
「正直な人間なのよ」
「本当にね。たまにそれが残酷だけど」
「ミーグス、あなた、私に何が言いたいの」

 真剣な表情でミーグスを見つめると、彼は焦ったように視線を逸らしてから答える。

「まだ言えない」
「どういうことよ」
「君が火の属性だったら言うよ」
「はい? 私の属性がミーグスに何か関係あるの?」
「ある。うちの家系は水属性が多いんだ。だから、それ以外の属性の人間を求めてる」
「何よ。私の身体で人体実験でもするつもり?」

 自分の体を抱きしめるようして言うと、ミーグスが鼻で笑う。

「そうなったら隅々までいただくよ」
「ちょっと、そんなの嫌よ! まだ死にたくない!」
「死なないから」
「死ななくても、今まで通りに生活は無理でしょう?」
「学園に通っている間は大丈夫だけど、それ以降は無理だね」
「ちょっと、私降りる!」
「危ないから大人しくして」

 ミーグスは私の腕を引っ張り、自分のほうに引き寄せた。

「ちょ、ちょっと! 離してよ!」
「こうしないと逃げるでしょ」
「ここまでする必要ある!?」
「僕にはある」

 少し暴れてみたけれど、ミーグスの力には勝てないことがわかり、諦めて大人しくしていた。

 やっぱり、ミーグスは私のことを好きだとしか思えなくなってきた
 私のこと好きなの?
 って聞いてみようか。
 だけど、違ったりしたら、どれだけ馬鹿にされるかわからないわ。
 それに、そうだと言われても気持ちには応えられない。
 なら、このままのほうが良いわよね。

 しばらく、ミーグスに捕まえられた状態のままでいると馬車が停まり、ミーグスはやっと私を離してくれた。

 連れてこられた場所は大きな教会だった。
 ミーグスについて中に入ると、黒のローブを着た穏やかな表情の老人が待っている部屋に連れて行かれた。

 何か胡散臭そうな人ね。
 
 部屋の中にある木のテーブルの上には、水晶玉が置かれていた。
 水晶玉が気になって見ていると、ミーグスから紹介される。

「この方は司教様だよ。君の属性を調べてくれるんだ」
「お、お目にかかれて光栄です」
「わたしもあなたにお会いできて嬉しいですよ」

 胡散臭そうなんて思ってしまったわ!

 挨拶もそこそこに、司教様は私に水晶玉に手を置くように指示された。
 そして、私は言われたように手を置く。

「魔力を手に集めてみてください」
「はい」

 魔力の集め方なんて知らないけれど、なんとなく手に集中してみると水晶玉が光り始めた。
 そして、すぐにまた元の透明に戻った。
 と思いきや、水晶玉の中で炎が揺らめいているだけでなく、稲妻が走っているのが見えた。

「何これ?」

 呟いてから、答えを求めてミーグスのほうを見る。
 けれど、彼は口をぽかんとあけた状態で私を見つめているだけで、何も答えを返してくれない。

 その代わり、司教様が教えてくれた。

「こ、これはすごい! あなたは2属性の力を持っていますよ!」
「はい?」

 興奮した様子の司教様に聞き返すと、ミーグスが呟く。

「こんなことってあるのか」
「ちょっと何なの」
「諦めなくてすむかもしれない」
「え? 何を? 人体実験!? 嫌よ!」

 ミーグスから離れようとすると、司教様が首をかしげる。

「人体実験とはなんのことかな?」
「彼の家は水属性以外の人間を求めているって言っていたんです」
「あ、ああ、そういうことですね。ミーグス家は水属性が多いから、他の属性の伴侶探しているんですよ。そうか。あなたは火と雷という2属性だから人生のパートナーにはもってこいなんですね」
「人生のパートナー?」

 聞き返すと、司教様は優しい目をして頷いた。




※ 
司教様ですが、異世界設定ですので現実のものとは違っております。
良い呼び方が思い浮かばなくて申し訳ないです。

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