邪魔者はどちらでしょう?

風見ゆうみ

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24 爵位をもらうとはどういうことなのか

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「ぐえっ」

 という変な声を上げて、ボルバー様はお腹を抱えてしゃがみ込んだ。

 キレーナ公爵はとても良いものを私に貸してくれたと思う。
 こうなると予想できていたのかしら。

 あとでキレーナ公爵に確認することにして、今はボルバー様の相手に専念する。

「どうして、ボルバー様が他国に渡ってきているんですか? というか、生きておられることに驚きです! 勝手に婚約を破棄したりなんかしてご家族からお咎めはなかったんですか?」
「ぐっ、さ、さすが、俺が認めた女だ。まさか、ステッキで攻撃してくるとはな」

 地面に跪いたままの状態で、笑みを浮かべたボルバー様は意味のわからないことを言って、私を見上げた。

「認めてもらえて、こんなにも嬉しくないことって初めてなんですが」
「恥ずかしがらなくてもいいんだぞ!」
「恥ずかしがってなんていません。とにかく帰ってください。迷惑です」

 ステッキの先で、二の腕をぐりぐりと押すとボルバー様は叫ぶ。

「痛い! ああ、やっぱりだ! 俺にはお前しかいない!」
「やっぱりの意味がわかりません。というか、もう勝手に言っていればいいですよ。一生、その気持ちは報われませんから。思うのは勝手です。そのかわり、私には近付かないでください」

 相手をしているのも馬鹿らしくなってきて、護衛に声をかける。

「申し訳ないんですが、この人を捨ててきてもらえますか?」
「どちらへ捨てましょう?」
「そうですね。警察署の前にでも捨ててきてもらえれば」
「警察署はゴミ箱ではありませんので、捨ててよいのかわかりません」

 若い護衛は困った顔をして言った。

 私はこの家の当主じゃないし、彼らにしてみればお客様の一人にしかすぎない。
 だから、どうしてここまで偉そうにしているのか不思議なようだった。
 
 いくら、大事なお客様でも自分の主の屋敷で偉そうにされるのは気持ちは良くないわよね。

 気持ちはわかるわ。
 まだ、私のことは詳しくは知らされていないでしょうしね。

「じゃあ、警察署内のゴミ箱に捨ててきてもらえますか?」
「承知しました」

 承知してくれるのね。
 会話が普通じゃない気もするけれど、通じたのだから良しとしましょう。
 
「良かったですね、ボルバー様。さすがに警察署では殺されることはないと思いますよ」
「殺されるだとか物騒なことを言うな! 俺が家から追い出されたのは確かだが、俺はお前のことを諦めるわけにはいかなかったんだ!」
「いや、だから忘れてくださいって言ってるでしょう」
「無理だ! 俺はお前と結婚するということを条件に公爵家に面倒を見てもらえることになったんだ! それに俺はお前が好きなんだよ!」

 ボルバー様は自分の胸に手を当てて叫ぶ。

 そんな告白をされても嬉しくない。

 生まれて初めて告白されたのに、何とも複雑な気持ちだわ。
 ……と、それよりも気になることがあるわ。

「公爵家に面倒を見てもらえることになったとおっしゃいましたか?」
 
 聞き返したその時、ボルバー様が降りてきた馬車の中から、新たに人が降りてきた。

 長身痩躯の男性で、病気かと思ってしまうくらいに肌の色が白い。
 面長で目はつり上がっている上に細く、私を見て浮かべた笑みは嘲笑しているように見えた。

 偉そうな態度にカチンときて眉根を寄せそうになったけれど我慢した。

 ボルバー様は降りてきた男性を手で示して私に紹介する。
 
「この方はエロージャン公爵閣下だ。俺とお前が結婚すると伝えたら、本当に二人が結婚した場合はお祝いに俺に自分の持っている爵位を一つ授けてくれるって言うんだよ!」

 馬車に書かれていた家紋は、どうやら、ボルバー様に授ける予定の家紋のようだった。

 それにしても、こんな人に爵位を授けるだなんて、一体、何を考えているのかしら。

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