邪魔者はどちらでしょう?

風見ゆうみ

文字の大きさ
24 / 35

24 爵位をもらうとはどういうことなのか

「ぐえっ」

 という変な声を上げて、ボルバー様はお腹を抱えてしゃがみ込んだ。

 キレーナ公爵はとても良いものを私に貸してくれたと思う。
 こうなると予想できていたのかしら。

 あとでキレーナ公爵に確認することにして、今はボルバー様の相手に専念する。

「どうして、ボルバー様が他国に渡ってきているんですか? というか、生きておられることに驚きです! 勝手に婚約を破棄したりなんかしてご家族からお咎めはなかったんですか?」
「ぐっ、さ、さすが、俺が認めた女だ。まさか、ステッキで攻撃してくるとはな」

 地面に跪いたままの状態で、笑みを浮かべたボルバー様は意味のわからないことを言って、私を見上げた。

「認めてもらえて、こんなにも嬉しくないことって初めてなんですが」
「恥ずかしがらなくてもいいんだぞ!」
「恥ずかしがってなんていません。とにかく帰ってください。迷惑です」

 ステッキの先で、二の腕をぐりぐりと押すとボルバー様は叫ぶ。

「痛い! ああ、やっぱりだ! 俺にはお前しかいない!」
「やっぱりの意味がわかりません。というか、もう勝手に言っていればいいですよ。一生、その気持ちは報われませんから。思うのは勝手です。そのかわり、私には近付かないでください」

 相手をしているのも馬鹿らしくなってきて、護衛に声をかける。

「申し訳ないんですが、この人を捨ててきてもらえますか?」
「どちらへ捨てましょう?」
「そうですね。警察署の前にでも捨ててきてもらえれば」
「警察署はゴミ箱ではありませんので、捨ててよいのかわかりません」

 若い護衛は困った顔をして言った。

 私はこの家の当主じゃないし、彼らにしてみればお客様の一人にしかすぎない。
 だから、どうしてここまで偉そうにしているのか不思議なようだった。
 
 いくら、大事なお客様でも自分の主の屋敷で偉そうにされるのは気持ちは良くないわよね。

 気持ちはわかるわ。
 まだ、私のことは詳しくは知らされていないでしょうしね。

「じゃあ、警察署内のゴミ箱に捨ててきてもらえますか?」
「承知しました」

 承知してくれるのね。
 会話が普通じゃない気もするけれど、通じたのだから良しとしましょう。
 
「良かったですね、ボルバー様。さすがに警察署では殺されることはないと思いますよ」
「殺されるだとか物騒なことを言うな! 俺が家から追い出されたのは確かだが、俺はお前のことを諦めるわけにはいかなかったんだ!」
「いや、だから忘れてくださいって言ってるでしょう」
「無理だ! 俺はお前と結婚するということを条件に公爵家に面倒を見てもらえることになったんだ! それに俺はお前が好きなんだよ!」

 ボルバー様は自分の胸に手を当てて叫ぶ。

 そんな告白をされても嬉しくない。

 生まれて初めて告白されたのに、何とも複雑な気持ちだわ。
 ……と、それよりも気になることがあるわ。

「公爵家に面倒を見てもらえることになったとおっしゃいましたか?」
 
 聞き返したその時、ボルバー様が降りてきた馬車の中から、新たに人が降りてきた。

 長身痩躯の男性で、病気かと思ってしまうくらいに肌の色が白い。
 面長で目はつり上がっている上に細く、私を見て浮かべた笑みは嘲笑しているように見えた。

 偉そうな態度にカチンときて眉根を寄せそうになったけれど我慢した。

 ボルバー様は降りてきた男性を手で示して私に紹介する。
 
「この方はエロージャン公爵閣下だ。俺とお前が結婚すると伝えたら、本当に二人が結婚した場合はお祝いに俺に自分の持っている爵位を一つ授けてくれるって言うんだよ!」

 馬車に書かれていた家紋は、どうやら、ボルバー様に授ける予定の家紋のようだった。

 それにしても、こんな人に爵位を授けるだなんて、一体、何を考えているのかしら。

感想 34

あなたにおすすめの小説

姉の所為で全てを失いそうです。だから、その前に全て終わらせようと思います。もちろん断罪ショーで。

しげむろ ゆうき
恋愛
 姉の策略により、なんでも私の所為にされてしまう。そしてみんなからどんどんと信用を失っていくが、唯一、私が得意としてるもので信じてくれなかった人達と姉を断罪する話。 全12話

【完結】女王と婚約破棄して義妹を選んだ公爵には、痛い目を見てもらいます。女王の私は田舎でのんびりするので、よろしくお願いしますね。

五月ふう
恋愛
「シアラ。お前とは婚約破棄させてもらう。」 オークリィ公爵がシアラ女王に婚約破棄を要求したのは、結婚式の一週間前のことだった。 シアラからオークリィを奪ったのは、妹のボニー。彼女はシアラが苦しんでいる姿を見て、楽しそうに笑う。 ここは南の小国ルカドル国。シアラは御年25歳。 彼女には前世の記憶があった。 (どうなってるのよ?!)   ルカドル国は現在、崩壊の危機にある。女王にも関わらず、彼女に使える使用人は二人だけ。賃金が払えないからと、他のものは皆解雇されていた。 (貧乏女王に転生するなんて、、、。) 婚約破棄された女王シアラは、頭を抱えた。前世で散々な目にあった彼女は、今回こそは幸せになりたいと強く望んでいる。 (ひどすぎるよ、、、神様。金髪碧眼の、誰からも愛されるお姫様に転生させてって言ったじゃないですか、、、。) 幸せになれなかった前世の分を取り返すため、女王シアラは全力でのんびりしようと心に決めた。 最低な元婚約者も、継妹も知ったこっちゃない。 (もう婚約破棄なんてされずに、幸せに過ごすんだーー。)

(完)婚約破棄ですか? なぜ関係のない貴女がそれを言うのですか? それからそこの貴方は私の婚約者ではありません。

青空一夏
恋愛
グレイスは大商人リッチモンド家の娘である。アシュリー・バラノ侯爵はグレイスよりずっと年上で熊のように大きな体に顎髭が風格を添える騎士団長様。ベースはこの二人の恋物語です。 アシュリー・バラノ侯爵領は3年前から作物の不作続きで農民はすっかり疲弊していた。領民思いのアシュリー・バラノ侯爵の為にお金を融通したのがグレイスの父親である。ところがお金の返済日にアシュリー・バラノ侯爵は満額返せなかった。そこで娘の好みのタイプを知っていた父親はアシュリー・バラノ侯爵にある提案をするのだった。それはグレイスを妻に迎えることだった。 年上のアシュリー・バラノ侯爵のようなタイプが大好きなグレイスはこの婚約話をとても喜んだ。ところがその三日後のこと、一人の若い女性が怒鳴り込んできたのだ。 「あなたね? 私の愛おしい殿方を横からさらっていったのは・・・・・・婚約破棄です!」 そうしてさらには見知らぬ若者までやって来てグレイスに婚約破棄を告げるのだった。 ざまぁするつもりもないのにざまぁになってしまうコメディー。中世ヨーロッパ風異世界。ゆるふわ設定ご都合主義。途中からざまぁというより更生物語になってしまいました。 異なった登場人物視点から物語が展開していくスタイルです。

妹の方がかわいいからと婚約破棄されましたが、あとで後悔しても知りませんよ?

志鷹 志紀
恋愛
「すまない、キミのことを愛することができなくなった」  第二王子は私を謁見の間に連れてきて、そう告げた。 「つまり、婚約破棄ということですね。一応、理由を聞いてもよろしいですか?」 「キミの妹こそが、僕の運命の相手だったんだよ」 「そうですわ、お姉様」  王子は私の妹を抱き、嫌な笑みを浮かべている。 「ええ、私は構いませんけれど……あとで後悔しても知りませんよ?」  私だけが知っている妹の秘密。  それを知らずに、妹に恋をするなんて……愚かな人ですね。

【完結】我儘で何でも欲しがる元病弱な妹の末路。私は王太子殿下と幸せに過ごしていますのでどうぞご勝手に。

白井ライス
恋愛
シャーリー・レインズ子爵令嬢には、1つ下の妹ラウラが居た。 ブラウンの髪と目をしている地味なシャーリーに比べてラウラは金髪に青い目という美しい見た目をしていた。 ラウラは幼少期身体が弱く両親はいつもラウラを優先していた。 それは大人になった今でも変わらなかった。 そのせいかラウラはとんでもなく我儘な女に成長してしまう。 そして、ラウラはとうとうシャーリーの婚約者ジェイク・カールソン子爵令息にまで手を出してしまう。 彼の子を宿してーー

真実の愛を見つけた婚約者(殿下)を尊敬申し上げます、婚約破棄致しましょう

さこの
恋愛
「真実の愛を見つけた」 殿下にそう告げられる 「応援いたします」 だって真実の愛ですのよ? 見つける方が奇跡です! 婚約破棄の書類ご用意いたします。 わたくしはお先にサインをしました、殿下こちらにフルネームでお書き下さいね。 さぁ早く!わたくしは真実の愛の前では霞んでしまうような存在…身を引きます! なぜ婚約破棄後の元婚約者殿が、こんなに美しく写るのか… 私の真実の愛とは誠の愛であったのか… 気の迷いであったのでは… 葛藤するが、すでに時遅し…

もう愛は冷めているのですが?

希猫 ゆうみ
恋愛
「真実の愛を見つけたから駆け落ちするよ。さよなら」 伯爵令嬢エスターは結婚式当日、婚約者のルシアンに無残にも捨てられてしまう。 3年後。 父を亡くしたエスターは令嬢ながらウィンダム伯領の領地経営を任されていた。 ある日、金髪碧眼の美形司祭マクミランがエスターを訪ねてきて言った。 「ルシアン・アトウッドの居場所を教えてください」 「え……?」 国王の命令によりエスターの元婚約者を探しているとのこと。 忘れたはずの愛しさに突き動かされ、マクミラン司祭と共にルシアンを探すエスター。 しかしルシアンとの再会で心優しいエスターの愛はついに冷め切り、完全に凍り付く。 「助けてくれエスター!僕を愛しているから探してくれたんだろう!?」 「いいえ。あなたへの愛はもう冷めています」 やがて悲しみはエスターを真実の愛へと導いていく……  ◇ ◇ ◇ 完結いたしました!ありがとうございました! 誤字報告のご協力にも心から感謝申し上げます。

婚約破棄!ついでに王子をどん底に突き落とす。

鏡おもち
恋愛
公爵令嬢パルメは、王立学院のパーティーで第一王子リュントから公開婚約破棄を突きつけられる。しかし、周囲の同情をよそにパルメは歓喜した。