邪魔者はどちらでしょう?

風見ゆうみ

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31 父親の考えとは

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 数日後の良く晴れた昼の午後、私の元に新しいシルバートレイが届けられた。
 届けてくれたのはセナ殿下だった。

「ありがとうございます! でも、セナ殿下が届けてくださるなんて暇なんですか?」

 憎まれ口を叩くと、セナ殿下は眉根を寄せる。

「言うと思ったよ。俺は君が本気で言ってるんじゃないとわかってるから良いけど、そういう冗談は他の奴らがいる時には言うなよ。あと、今日は休みの日だ。俺だって休みの日はある」
「わかってますよ。冗談が通じない人だと怒らせたり悲しませたりする可能性があるので言いません。ちゃんと選んでます」
「俺だって怒ったり悲しんだりするぞ」
「わかっていますよ。やりすぎないようにします」

 軽口をたたいたあと、談話室でセナ殿下からシルバートレイを受け取った。
 今までは丸かったけれど、今回は長方形になっていて、裏は二重底になっているのか厚みがあった。

「ちょっと重くなったかもしれないが、頑丈にはなってる」
「ありがとうございます! これで攻撃できますね!」
「シルバートレイは攻撃するもんじゃないんだけどな。職人も苦笑してたらしいぞ」
「間違った使い方はしませんから大丈夫ですよ」

 セナ殿下は呆れた顔をしているけど、止めても無駄だとわかっているのか、それ以上は何も言わなかった。

「使うことはないでしょうから大丈夫ですよ。ところで、両陛下は私の父に連絡を入れてくださったんですか?」

 尋ねると、セナ殿下はローテーブルに置かれていた紅茶の入ったカップを手に取り、喉を潤してから話し始める。

「連絡は入れていたよ。早馬を出したから返事は明日にはレモンズ侯爵に届くんじゃないかな」
「そうなんですね。お礼を」

 伝えてほしいと言おうとしたところで、扉が叩かれた。
 嫌なタイミングだったので、私とセナ殿下は思わず顔を見合わせる。

 セナ殿下が来ていることは知っているはずだから、よほどの用事だと思われる。

「お客様とお話中なんだけど、急ぎかしら」
「あの、お話し中に誠に申し訳ございません。当主からの伝言を預かっております。アーティア様、少しだけよろしいでしょうか」

 キレーナ公爵からの伝言なら、断るわけにもいかず、立ち上がって扉を開ける。

 すると、若いメイドは怯えた表情になり、体を縮こまらせて言う。

「お客様がいらっしゃっているのですが、当主様が応対してくださるとのことです。ただ声が聞こえてくる可能性があるので無視してほしいと伝言を預かりました」
「……当主様っていうのは、キレーナ公爵で間違いないわよね。そんなに大事なお客様なの?」
「それは……」

 メイドが言いづらそうにしているからか、セナ殿下が話しかける。

「客というのはレモンズ侯爵だったりしないよな?」
「そ、それが……」

 メイドが眉尻を下げたので、まさかと思って聞いてみる。

「本当にお父様が来ているの!?」
「……はい。どうしてもメイティ様に会いたいのだとおっしゃいまして……」
「今はどうしてるの?」
「屋敷内には入れたくないから、門の前で話をすると言っておられました」

 セナ殿下と私は急いで、談話室の窓に近づいた。

 でも、談話室は一階にあるから、木々が多くて遠くまでは見通せない。

「メイティ様も一緒に行っておられるそうです」
「お母様も!?」

 キレーナ公爵がいるから大丈夫だと思うけれど、お母様が心配だわ。

 ここで、大人しく待ってなんていられないわ。

「アーティア」

 セナ殿下はテーブルに置いていたシルバートレイを手にとって渡してくれた。
 受け取った私は大きく頷く。

「やはり、ここはボコボコにしないと駄目ですよね」
「凹む可能性が高いが、今日で仕留めれられれば使い道はなくなるからいいだろ」
「じゃあ、ちょっとやってきます」
「俺も付いていくよ。やりすぎそうで怖い」
「そこは黙って見届けてくださいよ」

 セナ殿下は苦笑して私を一瞥しただけで何も言わなかった。

 私たちが部屋を出ようとしているからか、困った顔をしているメイドに微笑みかける。

「あなたから伝言は聞いたし、あなたは悪くないと伝えるから、心配しなくても大丈夫よ」
「……ありがとうございます」

 メイドは安心したような顔をして、深々と頭を下げた。

 そして、私とセナ殿下は部屋を出て、お父様に倒しに行くことにした。
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