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32 邪魔者とはどちらでしょう? 前編
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セナ殿下と一緒に門に近づいていくと、お母様たちが門を挟んで言い争う声が聞こえてきた。
「アーティアは渡さないし、私も帰らないと言っているでしょう! あなたと私の関係はアーティアが死んだと私に嘘をついた日で終わったのよ! 大体、あなたは再婚しているんだから、離婚を受け入れたのでしょう! 私のことは忘れていたんじゃなかったの!?」
「アーティアを育ててやったのは俺だぞ!」
「アーティアが死んだと言ったから、私は彼女を置いていったのよ! 生きているとわかっていたら出ていってなんかいないわ! それにあなたはアーティアの父親でしょう! 娘を育てるのは当たり前のことよ!」
「違う、診断したのは俺ではない! 医者が嘘をついたのだ!」
お父様の話を聞いて、呆れた私が口を開く前にセナ殿下が口を挟む。
「いや、医者にそう言うように頼んだのはお前だろ」
セナ殿下の声が聞こえたのか、お母様とキレーナ公爵、そしてお父様がこちらに顔を向けた。
少し見なかっただけなのに、お父様の顔色はものすごく悪いし、太っていた体は驚くくらいにやせ細っている。
病気にでもなったのかしら。
お父様を見つめて、そんなことを思っていると、お母様が私の所に駆け寄ってきて不満げな顔をする。
「アーティア、どうして来たの!? 気にしないでとお願いしてもらったでしょう」
「ごめんなさい。ジッとしていられなかったんです。メイドは悪くないのでお咎め無しでお願いします」
苦笑してお願いすると、お母様はメイドの件は納得してくれたみたいで頷いた。
お母様との会話が途切れると、お父様が話しかけてくる。
「アーティア! 戻ってこい! お前のせいで俺の人生はめちゃくちゃなのだ! 責任を取ってもらわねばならん!」
「嫌ですよ。それに自分の人生をめちゃくちゃにした相手に戻ってこいだなんて、言っていることがおかしくないですか?」
「う、うるさい! お前が出ていったりするから、俺は家族に捨てられたのだぞ! 責任を持って俺を慰めるのだ!」
「嫌です」
はっきりとお断りしてから、お父様に近付く。
「追い出すと言っていたのはあなたですよ。もう、忘れたんですか」
そう言ってシルバートレイでお父様のお腹を突くと「うげっ」という声を上げて、その場に座り込んだ。
「うう……死ぬ、死んでしまう」
同情を買う作戦にでも出たのか、お父様はお母様に向って手を伸ばした。
けれど、キレーナ公爵が持っていたステッキで、その手を叩く。
「汚い手で彼女に触れようとするな」
お父様は叩かれた手をさすりながら涙目でキレーナ公爵に訴えかける。
「酷い、酷すぎるだろう! 私は元夫なんですよ!」
「そうだな。元夫なんだから元妻に近づこうとするのはやめろ」
「好きで別れたのではないのです!」
お父様とキレーナ公爵が話をしている横で、お母様は私がシルバートレイで攻撃したことがショックのようで、私を凝視している。
シルバートレイのことは話しにくかったので、現物が届いてから説明しようと思っていた。
だから、お母様は知らなかったのよね。
あとで、ちゃんと説明しましょう。
「助けるつもりはないけど、なんか気の毒になってきたな」
セナ殿下が憐れむような目でお父様を見つめる。
事情を詳しく知らない人間が見たら、私たちのほうが悪者になりそうな光景ね。
「そういえば、家族に捨てられたっていうのは、どういうことですか?」
気になって聞いてみると、お父様は涙目のまま答える。
「パララーが他の女の尻を追いかける男なんて御免だと言ってアフォーレとカバードを連れて逃げたのだ! その時に屋敷にある現金や宝石などを持って逃げているのだ! あいつらのせいで俺は生きていくのも精一杯になってしまった!」
「今日乗ってきている馬車を売れば良かったのでは? それに、他にも売れるものはあるでしょう。パララー様達はドレスも全部持っていったんですか?」
尋ねると、お父様は首を何度も横に振る。
「いや。そんなことはしていない。多くは置いていっている」
「では、とにかく売れるものは売ったらどうでしょうか。オーダーメイドのドレスですから、そう高くは買い取ってくれないかもしれませんが、持っていても意味がないでしょう?」
「う、う、うるさい! お前たちが戻ってこないというのなら、俺をここに住まわせるのだ!」
この人は何を言っているのかしら。
「嫌よ! どうしてあなたを住まわせてあげないといけないのよ!」
お母様が叫ぶと、お父様はキレーナ公爵を指差す。
「さっきから気になっていたんだが、そこにいる男は誰だ!? 俺というものがありながら浮気していたのか!?」
「私はあなたと離婚したの。浮気だなんて言われる筋合いはないわ!」
「私が勝手に彼女の世話を焼いていただけだ」
お母様の横に立ってキレーナ公爵が言うと、お父様は叫ぶ。
「お前のせいなのか!? お前がいるから、メイティは戻ってこないのだな!? くそっ! この邪魔者めが!」
「邪魔者はどちらでしょう?」
キレーナ公爵達が何か言う前に私が言うと、お父様は私を睨みつけた。
「アーティアは渡さないし、私も帰らないと言っているでしょう! あなたと私の関係はアーティアが死んだと私に嘘をついた日で終わったのよ! 大体、あなたは再婚しているんだから、離婚を受け入れたのでしょう! 私のことは忘れていたんじゃなかったの!?」
「アーティアを育ててやったのは俺だぞ!」
「アーティアが死んだと言ったから、私は彼女を置いていったのよ! 生きているとわかっていたら出ていってなんかいないわ! それにあなたはアーティアの父親でしょう! 娘を育てるのは当たり前のことよ!」
「違う、診断したのは俺ではない! 医者が嘘をついたのだ!」
お父様の話を聞いて、呆れた私が口を開く前にセナ殿下が口を挟む。
「いや、医者にそう言うように頼んだのはお前だろ」
セナ殿下の声が聞こえたのか、お母様とキレーナ公爵、そしてお父様がこちらに顔を向けた。
少し見なかっただけなのに、お父様の顔色はものすごく悪いし、太っていた体は驚くくらいにやせ細っている。
病気にでもなったのかしら。
お父様を見つめて、そんなことを思っていると、お母様が私の所に駆け寄ってきて不満げな顔をする。
「アーティア、どうして来たの!? 気にしないでとお願いしてもらったでしょう」
「ごめんなさい。ジッとしていられなかったんです。メイドは悪くないのでお咎め無しでお願いします」
苦笑してお願いすると、お母様はメイドの件は納得してくれたみたいで頷いた。
お母様との会話が途切れると、お父様が話しかけてくる。
「アーティア! 戻ってこい! お前のせいで俺の人生はめちゃくちゃなのだ! 責任を取ってもらわねばならん!」
「嫌ですよ。それに自分の人生をめちゃくちゃにした相手に戻ってこいだなんて、言っていることがおかしくないですか?」
「う、うるさい! お前が出ていったりするから、俺は家族に捨てられたのだぞ! 責任を持って俺を慰めるのだ!」
「嫌です」
はっきりとお断りしてから、お父様に近付く。
「追い出すと言っていたのはあなたですよ。もう、忘れたんですか」
そう言ってシルバートレイでお父様のお腹を突くと「うげっ」という声を上げて、その場に座り込んだ。
「うう……死ぬ、死んでしまう」
同情を買う作戦にでも出たのか、お父様はお母様に向って手を伸ばした。
けれど、キレーナ公爵が持っていたステッキで、その手を叩く。
「汚い手で彼女に触れようとするな」
お父様は叩かれた手をさすりながら涙目でキレーナ公爵に訴えかける。
「酷い、酷すぎるだろう! 私は元夫なんですよ!」
「そうだな。元夫なんだから元妻に近づこうとするのはやめろ」
「好きで別れたのではないのです!」
お父様とキレーナ公爵が話をしている横で、お母様は私がシルバートレイで攻撃したことがショックのようで、私を凝視している。
シルバートレイのことは話しにくかったので、現物が届いてから説明しようと思っていた。
だから、お母様は知らなかったのよね。
あとで、ちゃんと説明しましょう。
「助けるつもりはないけど、なんか気の毒になってきたな」
セナ殿下が憐れむような目でお父様を見つめる。
事情を詳しく知らない人間が見たら、私たちのほうが悪者になりそうな光景ね。
「そういえば、家族に捨てられたっていうのは、どういうことですか?」
気になって聞いてみると、お父様は涙目のまま答える。
「パララーが他の女の尻を追いかける男なんて御免だと言ってアフォーレとカバードを連れて逃げたのだ! その時に屋敷にある現金や宝石などを持って逃げているのだ! あいつらのせいで俺は生きていくのも精一杯になってしまった!」
「今日乗ってきている馬車を売れば良かったのでは? それに、他にも売れるものはあるでしょう。パララー様達はドレスも全部持っていったんですか?」
尋ねると、お父様は首を何度も横に振る。
「いや。そんなことはしていない。多くは置いていっている」
「では、とにかく売れるものは売ったらどうでしょうか。オーダーメイドのドレスですから、そう高くは買い取ってくれないかもしれませんが、持っていても意味がないでしょう?」
「う、う、うるさい! お前たちが戻ってこないというのなら、俺をここに住まわせるのだ!」
この人は何を言っているのかしら。
「嫌よ! どうしてあなたを住まわせてあげないといけないのよ!」
お母様が叫ぶと、お父様はキレーナ公爵を指差す。
「さっきから気になっていたんだが、そこにいる男は誰だ!? 俺というものがありながら浮気していたのか!?」
「私はあなたと離婚したの。浮気だなんて言われる筋合いはないわ!」
「私が勝手に彼女の世話を焼いていただけだ」
お母様の横に立ってキレーナ公爵が言うと、お父様は叫ぶ。
「お前のせいなのか!? お前がいるから、メイティは戻ってこないのだな!? くそっ! この邪魔者めが!」
「邪魔者はどちらでしょう?」
キレーナ公爵達が何か言う前に私が言うと、お父様は私を睨みつけた。
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