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16 後悔し始めた元婚約者たち ③
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ある日の休憩時間。ファリミナが公園の木陰で休んでいた時だった。スノウは軽食を買いに行っているため、ファリミナは一人になっていた。
彼女の所に幼い女の子が走り寄ってきたかと思うと、白い紙を差し出してきた。
「これ、むこうのおじさんから!」
そう言って渡されたのは数枚の書類と小さなメモだった。
「ありがとう」
礼を言うと満足したように頷き、少し離れた所で待っている母親の元に戻っていく。その姿を追っていると、親子の向こうで人影が動いた。
(……元お兄様だわ)
ファリミナは眉根を寄せて、受け取った書類ではなく、メモを先に読んでみた。
走り書きの文字で『なんて書いてあるか翻訳しろ』と書かれていた。
教えてやる気はサラサラないが、何が書いてあるのか気になったファリミナは、書類を読んでみることにした。
内容は全て『支払いが滞っているので、指定日までに支払ってほしい』だった。支払ってもらえなければ家まで取り立てに行くとも書かれているため、相手には悪いがファリミナは知らないフリをすることにした。
(仕事が上手くまわっていないのね。身ぐるみ剥がされればいいんだわ。私が仕事を手伝っていることを知らずに縁を切ってきたのは向こう。あの人たちがどうなろうが知ったことではないわ)
督促状を四つ折りにしたところで、スノウが帰ってきた。走り書きされた文章を黒くつぶすと、空いているスペースに一言書く。近くにあった石を置いて、風で飛ばされないようにしたあと、ファリミナはスノウと共にその場を去った。
ファリミナたちが立ち去って少し経つと、ひょろりとセの高い若い男が、先ほどまでファリミナがいた場所に近寄ってきた。ファリミナの兄だったボイショだ。メモを手に取るまではニヤニヤしていたボイショだったが、メモに書かれていた言葉を読むと、表情が一変する。
「なんなんだよ、ファリミナの奴!」
ボイショはメモを破り捨てて叫んだ。
メモには『落とし物です』とだけ書かれていた。
◇◆◇◆◇◆
家に帰ったボイショは、駆け寄ってきた両親に叫ぶ。
「ファリミナの奴、拗ねてやがるんだ! 翻訳してくれと言ったのに無視しやがった!」
「くそっ。こんなことなら絶縁状など送らなければ良かった!」
「で、でも、どうして王太子殿下を怒らせたのに、ファリミナは王家に守られているのかしら」
「わからない」
「わかりません」
伯爵夫人の言葉に、伯爵とボイショは同時に首を傾げた。
オルフェンはファリミナの家族にも彼女に近づくなと、父に許可を取り、国王の名で命令書を送っていた。そのため、クックルー伯爵家は彼女に近づくことができなかった。
結局、他の人に頼んで翻訳してもらったところ、督促状だということがわかったが、延滞金が嵩み、伯爵家の家計を圧迫していくことになるのだった。
彼女の所に幼い女の子が走り寄ってきたかと思うと、白い紙を差し出してきた。
「これ、むこうのおじさんから!」
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「ありがとう」
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ファリミナは眉根を寄せて、受け取った書類ではなく、メモを先に読んでみた。
走り書きの文字で『なんて書いてあるか翻訳しろ』と書かれていた。
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内容は全て『支払いが滞っているので、指定日までに支払ってほしい』だった。支払ってもらえなければ家まで取り立てに行くとも書かれているため、相手には悪いがファリミナは知らないフリをすることにした。
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ファリミナたちが立ち去って少し経つと、ひょろりとセの高い若い男が、先ほどまでファリミナがいた場所に近寄ってきた。ファリミナの兄だったボイショだ。メモを手に取るまではニヤニヤしていたボイショだったが、メモに書かれていた言葉を読むと、表情が一変する。
「なんなんだよ、ファリミナの奴!」
ボイショはメモを破り捨てて叫んだ。
メモには『落とし物です』とだけ書かれていた。
◇◆◇◆◇◆
家に帰ったボイショは、駆け寄ってきた両親に叫ぶ。
「ファリミナの奴、拗ねてやがるんだ! 翻訳してくれと言ったのに無視しやがった!」
「くそっ。こんなことなら絶縁状など送らなければ良かった!」
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「わからない」
「わかりません」
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オルフェンはファリミナの家族にも彼女に近づくなと、父に許可を取り、国王の名で命令書を送っていた。そのため、クックルー伯爵家は彼女に近づくことができなかった。
結局、他の人に頼んで翻訳してもらったところ、督促状だということがわかったが、延滞金が嵩み、伯爵家の家計を圧迫していくことになるのだった。
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