【完結】偽者扱いされた令嬢は、元婚約者たちがどうなろうと知ったことではない

風見ゆうみ

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36   嘘だとわかった時 ①

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 メイフたちが話し合いをしている頃、仕事を終えたファリミナは、オルフェンと共に寮に向かって歩きながら話をしていた。

「もうイザベルさんはミインジャーナ侯爵邸に着いたでしょうか。まさか、クックルー伯爵家に戻ったりしていませんよね」
「そんなことにはならないように監視を付けているから大丈夫だ」
「それなら良かったです。イザベルさんは自分の都合の良いことしか覚えていないようですし、伝言のことも忘れて帰っているんじゃないかと思ってしまいました」
「彼女に帰る家はあるのか?」

 不思議そうにするオルフェンにファリミナは苦笑して答える。

「イザベルさんはポジティブ思考ですし、クックルー伯爵家が自分を見捨てるなんて思ったこともないかなと思うんです」
「……そうだな。その可能性は高いし、ミインジャーナ侯爵に捨てられたらクックルー伯爵家に行くかもしれないな」
「良くいえば逞しい精神の持ち主ですけど、希望の道が全て絶たれて絶望を感じた時、彼女が馬鹿なことをしないかだけが気になります」
「そうだな。それに、ミインジャーナ侯爵が何を言い出すかわからない」
 
 苦笑したオルフェンに、ファリミナは尋ねる。

「ミインジャーナ侯爵が何か言ってくる可能性があるということでしょうか」
「君はそう思わないか?」

 問い返され、ファリミナは少し考えてから答える。

「そうですね。自分は悪くない。嘘を吐いた人間だけじゃなく、多国語を話せることをミインジャーナ侯爵に伝えていなかった私も悪いと責めてきそうな気がします」
「そうなった時はどうするんだ?」
「……そうですね。第三者を交えて一度だけ話をしてみたいと思います」
「話す必要があるか? それに一度で納得しなかったら?」
「婚約者を信じず、話をしていなかった私にも落ち度がありますから一度だけです。二度目はありません。もし、自分で対処しきれない時は、オルフェン様に助けを求めてもいいでしょうか」
「もちろんだ」

(私には王太子殿下の婚約者という肩書がある。だから、馬鹿なことをしてこないでしょう。それにできれば自分の手で片付けたいから)

「ありがとうございます」

 とりあえずはメイフたちが動き出すまでは、対策を立てつつも様子を見ることにしたのだった。


◇◆◇◆◇◆


 側近たちの様子を見たメイフは自分が騙されていたことがわかり、悔しそうな顔をして呟く。

「どうして今まで気づけなかったんだ」
 
(私は悪くない。イザベルだけじゃない。側近たちまで揃って私を騙したんだ。騙されても仕方がないだろう。絶対に許せない。それに真実を伝えてくれなかったファリミナも悪い。そうだ。ファリミナはどうして教えてくれなかったんだ!)

 最終的に判断したのは自分だというのにも関わらず、メイフは全て人のせいにしようとした。

(まずは目の前にいるこいつらから片付けてやる)

 メイフは怒りを抑えるために深呼吸をしてから口を開く。

「お前との取引は今をもって打ち切る」

 メイフに睨みつけられた薬売りはびくりと体を震わせ、涙目で訴える。

「ミインジャーナ侯爵! それは勘弁してください! 娘が……、娘がもうすぐ結婚するんです! ミインジャーナ侯爵家との取引が打ち切られたという噂が流れば職を失ってしまい、娘の結婚も取り消されてしまうかもしれません!」
「そんなことは私の知ったことではない。もし、そのことで結婚が取り消されるならば、金目当てで愛などなかったということだろう」
「そ、そんな! お、お願いです、ミインジャーナ侯爵! しばらくの間、商品代金はいりませんので、それでどうかお許し願えませんか!」
「許すわけがないだろう!」

 メイフはベルで兵士を呼ぶと、薬売りを外に追い出すように命令した。

「くそう! イザベル! お前のせいだ! お前のせいで私がこんな目にっ! 覚えていろよ!」

 兵士に連れ出される際、薬売りはイザベルに向かって喚き散らした。さすがのイザベルも呆然とした様子で俯いていたが、薬売りの叫び声が聞こえなくなると、パッと顔を上げた。

「あ、あの、メイフ様。私は用事を思い出しましたので、本日は失礼いたしますわ」
「私も仕事が残っていますので、仕事に戻ります!」
「私もです!」

 イザベルと彼女に弱みを握られている側近たちが勢いよく立ち上がる。最近雇われた側近たちは何がなんだかわからないといった様子で困惑の表情だ。

「イザベルと、出て行こうとしたお前たちは残れ。それ以外は行っていい」

 メイフがそう言った瞬間、イザベルの嘘に加担した側近たちは、もう終わりだと言わんばかりにがっくりと肩を落とした。

 
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