【完結】偽者扱いされた令嬢は、元婚約者たちがどうなろうと知ったことではない

風見ゆうみ

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37   嘘だとわかった時 ②(メイフSide)

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 側近たちは素直に罪を認めてメイフに泣いて謝ったが、彼は情けをかけなかった。

「荷物をまとめて出て行け。退職理由は自己都合だ。情けで家族になんと言うかはお前たちに任せてやる」

 側近たちはイザベルとの関係が家族にバレなくて済むというだけでも救いだった。何度もメイフに謝ったあとに、揃って部屋から出て行った。

 部屋の中に残されたのはメイフとイザベルのみ。
 イザベルはこんな状況でも自分なら切り抜けられると思っていた。そして、メイフは彼女がそう思っていることを見抜いていた。

「どうして嘘をついたんだ?」
「な、何のことを言っているんですか?」
「どうして私の命の恩人だなどと嘘をついたんだ!?」
「メイフ様を愛してしまったからです!」

 イザベルは迫真の演技でメイフに訴える。

「あなたを一目見てからずっと、あなたのことが頭から離れませんでした。だから、どうしてもあなたを手に入れたくて! 本当に……っ、本当にごめんなさい!」
「で、今はそうではないんだろう?」

 メイフは冷たい目でイザベルを見つめて尋ねた。

「……え?」
「今のお前は王太子殿下が好きなんだろう?」
「あ……えっと、はい、今はそうです。ですから身を引きます」

 先程までの涙はどこへやら、イザベルはけろっとした顔で言うと、メイフにカーテシーをする。

「では、失礼いたします」
「ふざけるな!」

 メイフは叫ぶと、イザベルの左頬を打った。

「な、なんてことを!」

 文句を言うイザベルの右頬に一発。

「酷い!」

 彼女が何か言おうとするたびに、頬を打ち続けた。

「お前のせいだ! お前が馬鹿なことをしなければ、私とファリミナは結婚していたんだ!」
「いやあああっ!」

 イザベルの悲鳴を聞いた兵士が扉を開けた時には、彼女の自慢の顔は腫れ上がり、一目見ただけではイザベルだと判断できなくなっていた。

「……ゆるして……」
「許すわけがないだろう!」
「おやめください、旦那様!」

 メイフがまた殴ろうとしたため、兵士が慌てて止めに入った。

「くそっ! この女のせいで時間を無駄にしてしまった!」

 兵士の手を振り払い、メイフは怯えた表情で彼を見つめている執事に指示をする。

「何とかしてファリミナと私が話すことができる機会を作れ! できないと言ったら、お前もこの女のようにしてやる!」
「ひいっ! しょ、承知いたしました!」

 執事はその場で一度飛び跳ねると、逃げるように駆け出していった。

(私は騙されていたんだ。何も悪くない。このことを伝えれば、ファリミナも泣いて謝ってくるだろう)

 この時のメイフは、ファリミナとオルフェンの婚約を知らない。それだけでなく、彼は自意識過剰で、ファリミナがまだ彼を愛していると思い込んでいた。
 ファリミナが自分の元に帰ってくるものだと、信じて疑わないメイフを見て、イザベルは涙を流しながらも、彼に見えないように口元に笑みを浮かべた。

 
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