【完結】偽者扱いされた令嬢は、元婚約者たちがどうなろうと知ったことではない

風見ゆうみ

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39   ミインジャーナ侯爵家の終わり ②

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 簡単にオルフェンに事情を説明し、まずはオルフの姿でメイフに応対してもらうことになった。

「ミインジャーナ侯爵が言っている男は俺のことだと思うけど、婚約者は俺だけど俺じゃないんだよ」

 スノウと入れ替わりに部屋に入ったオルフェンが微笑んで言うと、メイフは眉根を寄せた。

「お前は貴族じゃないだろう! 私にそんな口を聞いていいと思っているのか!」
「……貴族ではないな」
「そうですね。貴族ではありませんね」

 オルフェンとファリミナが顔を見合わせて苦笑すると、メイフは顔を真っ赤にして叫ぶ。

「ファリミナは伯爵家の令嬢だぞ! 平民が相手では吊り合わない!」

(クックルー伯爵夫人と似たようなことを言っているわね。あの時はオルフェン様に王太子と平民では……と言っていたっけ)

 何度も同じことを言うのは面倒だが、メイフに話すのは初めてなので、ファリミナは笑顔を作って答える。

「ミインジャーナ侯爵、私はもう伯爵家の令嬢ではありません。今は平民です」
「……なんだって?」
「王太子殿下の怒りを買ったと言われて除籍されたんです」
「……そういえば、そうだったか」
「ですが、婚約するに当たり、とある子爵家が養子にしてくださると言ってくださり、お受けしたんです」
「別に俺や両親は平民でも良かったんだけどな」

 オルフェンに優しく手を握られたファリミナは、頬を赤く染めて答える。

「世間体的にあまり良くないと思いますから」
「そんなことを言ったら、王家が平民を差別しているように思えるんだが?」
「そういうつもりではありません! ただ、貴族からの反発はあると思うんです。ロッテ様もそれを気にしてくださったんです」
「そうだな。だから、ジャクソンも動いてくれたんだろう」
「私がロッテ様の姉だなんて変な感じです」

 二人で話をしていると、メイフが割って入る。

「どういうことだ? この男は貴族じゃないんだろう!? なのに、婚約するのに貴族の養子になるって意味がわからないじゃないか!」

 そこまで言って、メイフははっとした顔になる。

「まさか、ファリミナ。私のことが忘れられなくて子爵家の養女になったのか?」
「違います」

 ファリミナは大きなため息を吐いたあと、オルフェンを見つめる。オルフェンは呆れた顔でメイフに話しかける。

「ミインジャーナ侯爵、先程、俺は貴族ではないと言ったよな」
「それがどうした。ただの平民がこの私に偉そうな口をきくな!」
「じゃあ誰なら、そんな口をきいても許されるんだろうか」
「そ、それはもちろん……侯爵以上の爵位を持つ者だ」
「なら、俺はどうだろうか?」

 オルフェンは魔法を解くとにっこりと微笑む。すかさず、ファリミナがメイフに紹介する。

「ミインジャーナ侯爵に紹介いたします。私の婚約者である、オルフェン・マジク様です」
「な、なんだって……?」

 聞き返したメイフの顔は引きつり、オルフェンに向けられた指は小刻みに震えていた。
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