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29話
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29話
くそ……
僕はかなり……幸せで、困っていた。
「私達は、ちょっと普通にデートしに来ただけだから、またね」
と、バカップルがついて早々、どこかに行き、
「私達も元々、普通にデートするつもりだったから、またね」
と、先輩カップルも、どこかに行ってしまう。
それからというもの………
「お兄ちゃん。あっち行こうよぉ~」
「士郎。こっちだよね?」
右腕を白崎さん。左腕を梨花が僕の腕を綱引きのように引っ張り合い、端から見れば、美少女二人に囲まれた容姿もなにも普通程度のやつ。そんなの端からみたら、両手に花。ちっ!クソリア獣が死んじまえっ!って思うだろう。僕だって、そんな状況におかれて幸せじゃないわけがない。だが今は、そういうのは望んでない。
ただ、僕は白崎さんとデートがしたいだけだ。
でも、こういう状況が、まんざらでもない僕がいる……
だが、どうしようか。
このままじゃ、体が引きちぎれる。
二人を傷つけずに、助かる選択肢は……
「じゃ、二つとも行こうか。時間はいっぱいあるんだし、ね?」
「「じゃ、先にどっちにいくの!?」」
……これは、参ったな。
僕がこんなに幸せでいいのか?
美少女二人からこんなに、こんなに……
もう、言葉を失い、気も失いかかったが、ここは理性を保ち冷静に判断する。
「じゃ、こっち行こうか」
と言って選んだのは、白崎さんのほうだ。
「やったー!!」
と、無垢な子供のように素直に喜んでくれる白崎さん。
……え?
「さ、行きましょう!!」
少し、僕の思考回路は停止していた。
ガッと、僕の腕を白崎さんは両手で抱きしめるかのように掴み離さない。
だが、動揺してはいられねえ。
「う、うん」
そして、僕らは歩き出す。
「……ねーねー。お兄ちゃん。私とは?」
どうやら、妹はそれが気に入らなかったらしく、後ろからじとー。という眼差しを向けながら、僕らの後をつけてきている。
「わかった。じゃ、おいで」
僕は仕方なく、渋々ともう片方の腕、に妹を受け入れる。
本当だからね!?私は別に、女の子なんて白崎さんだけでいいんだからね!?
オカマ士郎オンライン。
そして、両腕が柔らかなものに包まれる。
ああ。僕はこの時のために生きてきたのか……
「着きましたっ!」
ほう。着いたか。
そこは単なる雑貨屋だった。
妹は、探索だ。とか言って、ふらーっと行ってしまう。なんか、すごい不自然だったけど………
だが、白崎さんは、僕の腕から離れない。
「ここの雑貨屋。可愛い付箋がいっぱいあるんですよっ!」
あ、そうか。そう言えば、付箋が好きなんだっけ?
変わった趣味をお持ちで……
てか、本当に好きなのね。
だが、はやり僕の腕からは離れようとしない。
「……行って見ないんですか?」
見たいなら離れればいい。素朴な僕らしく、素朴な質問をする。
「え、えっと……士郎の方が好きだから……なんて、ダメですか?」
やばい。こんな返事が返ってくるなんて……心の準備が全くできていない状態でのこれは………
「だ、だめじゃない……です」
目を見て話せるわけもなく、僕はどっか他の方向を向きながら、そう答える。
「あ、は、恥ずかしいこと言っちゃいましたね……」
なにその笑顔……もう、可愛すぎるんだよっ!!
「じ、じゃ……一緒に見ましょうか」
「は、はい…」
そして、僕らは付箋コーナーへと向かう。
もちろん、腕は組んだままだ。
「あ、士郎っ!着いたっ!!」
付箋コーナーに着くと白崎さんは、僕から離れて、付箋に釘付けになる。
誰でもわかるようなトラップの中に、可愛い付箋を入れていたら、白崎さんは釣れるな。
「どうですか?士郎っ!これ、かわいくないですか?」
と言って僕に「獲ったどー」と、言わんばかりに押し付けてくるのが、半分ピンク、半分、青で出来た。カップル専用の可愛らしい付箋である。
夫婦茶碗ならぬ、夫婦付箋といったところだろうか?
「か、かわいいです……ね」
「かわいいですよね!?」
「は、はい」
まあ、確かにかわいい。
おしゃれな喫茶店に置いてあっても、おかしくない付箋だ。
「お兄ちゃんっ!ただいまー」
と、後ろから妹が僕の腕めがけてダイブ。
がっつり捕まれ、右腕は動かない。完全に固められた……
「い、痛いんだが?」
「ん?なにが?」
「いや、君の今つかんでいる僕の腕が。だが」
「しらなーい」
掴んでるのに知らないはないだろう。
「でも、一つ知ってることがあるよ」
と、妹は小声で俯きながら、そう言った。
「お?その心は?」
と、ふざけながら訊く。
「お兄ちゃんが好き……」
先ほどと同じくらいのボリュームで、妹はそう言った。
………え?
「それは、なに?どーしたんだ?」
「………やっぱり、お兄ちゃんは私なんて……」
「おい!どうしたんだ?」
なんか、様子が変だ。ま、まさか。妹悪になるんじゃ……
「う、ううん。お兄ちゃんなんでもないよ。あ、ちょっと、用事思い出しちゃった。またね」
「お、おい……」
妹は走って何処かに行ってしまった。
あれ?この光景どっかで…
ふと、遊園地での白崎さんが走っていく光景を思い出した。
なんで?なんで今、遊園地でのことを思い出すんだ?
わからない。なにが、どうなってんだ?
「ねえ。士郎ったらっ!」
「あ、すいません……」
そうだ。今は白崎さんとデートなのか。なら、無駄なことは考えないでおこう。
今は、彼氏彼女になって初めてのデートなんだ。今前のことに集中しよう。
と、自分に喝を入れる。
「で、しかりん。それは買いに行きます?」
「あ、うん」
これにもペア。と書かれている。
という事は、手を繋いでいないと買えない……
ここは、男の僕から手を伸ばしてあげないと、ダメだよな?
僕はゆっくり、ゆっくりと白崎さんにの方に手を伸ばしていく。
やばい。すげえ恥ずかしい……
それをそっと白崎さんが包む。
それは柔らかく、すべすべしていた。
こんなに心の落ち着くものはあるのだろうか?
「おお!初々しいねぇ」
と、後ろから知った声が聞こえてくる。
バカップルの一人であるれんだ。
「な、なんだよ……」
だが、手は繋いだままだ。
「いんやー。なんでもぉー?じゃ、おせっ……んん。冷やかしも終わったところだし、火憐のところに戻るよ」
「はよ行けやっ!!」
全く、なんだよあいつは…邪魔ばっかりしやがって……
****
「れんっ!どーだった?」
「ああ。二人はすげえいい感じだったぜ?初々しい感じがまた、よかったしな」
「そっか……よかった。本当に……よかった」
「ああ、よかったな」
なんで、私らがここにいるのかは、単なる偶然ではない。話は、デート前まで遡る。
私は、れんと二人で、デートするためにここに来ていた。
ついて早々、みんなとばったり出会い、でも、今回は別に誰とも回る気はなかった。久々にれんとしっかり二人きりでデートがしたいと思っていたからだ。
だけど、私は白崎さんと士郎を見て、疑問が生まれる。なんで、あんなにべたべたしてるのだろう?と。すごい疑問で、すごく不安だった。
普通、付き合ってすぐ、そんなにべたべたはできるわけがない。
私達だって、バカップルと思われるほどべたべた出来たのは最近からだ。
なのに、あの二人はデート開始早々、初デートなのにも関わらず、べたべたしていた。
不自然だ。おかしい。では、なんで?
考える必要もなかった。
私が夏祭り後に、あんなことをしたから……
これが私に「れんと幸せになってほしい」という思いでやってるのだとしたら、どれ程、私は士郎に迷惑をかけてしまったのかと。謝っても謝っても、どれ程頭を地面につけ土下座しようとも、許されることではない。
そんな罪悪感に似た感情のまま、デートなんてできるわけがない。
だが、今はそのデートの真っ最中なのだ。
「なんか、大丈夫か?」
私の心を読んだかのように、そういってくる。そんなに、私は顔に出るのかな?
「ああ。そうか。わかったぞ?前のことを気にしてるんだな?」
「………え?なんで?」
確か、私からは言ってないし、士郎が!?
「あ……俺は気にしてないから」
「そ、そう。でも……」
「もう、俺は決めたんだ。火憐」
「な、なにを?」
「火憐。もう、お前を離さないって。お姉さんとも約束したしな」
「………う、うう……」
私は唸ることしかできなかった。
てか。不意打ち過ぎる。でも、このおかげで気付けた気がする。私はもう、迷わない。だから、しっかりと「未練がましいことなんてない」って伝えないと。
「火憐。あいつらを探すぞ!」
「うんっ!流石!私の彼氏っ!」
そして、趣味が付箋ならとここしかない。と思い、ここに来た。
案の定、二人は居てれんが私の代わりに行ってくれた。
そして、今に至る。
でも、よかった。本当に……
*****
本当になんなんだ?あいつらは……
まあ、いいか。
「……じゃ、しかりん。レジに行きましょうか」
「で、ですね…」
本当に嵐みたいに荒らして行きやがって。
そして、僕らはレジに向かう。手を繋いだまま。
端から見れば、まあ、そりゃ初々しいと言われてもおかしくはないかな?
自分からは見えなくとも、なんとなくわかる。
動きが固く、ロボットのようになってることくらいだが。
そして、なんとかレジまで辿り着くと、店員さんがレジでスタンバイしている。
「ありがとうございます。こちら、ペア限定商品ですが、よろしいですか?」
「「はい」」
「承知いたしました。では、手をお繋ぎになり、少々お待ちください」
「「は、はい……」」
ドクン……ドクン……
すげえや。心臓の鼓動が痛い。早い。白崎さんにも、指の血液の通る感覚がわかるんじゃないか?ってくらいに、自分の中の血流がわかる。
そして、周りからは音という音は消え、なにも聞こえない。そして、ん?そ、草原が見えるぞ。さっきまでは店員の前にいただろ?ここは……アルプス?
きれいな水。綺麗な大地。そして、横には白崎さん。なんて、神秘的な……
「士郎っ!大丈夫?もう、買い物は終わりましたよ?帰ってきてっ!」
「あ、だ、大丈夫。絶好調ですよ。なんかこう、五感が鋭く敏感になったような感じで……」
なんて、冗談交じりにそう言うと、白崎さんの手を引きレジから出る。
ふう。なんか、疲れたな。
そんな時は、白崎さんでも見て回復しよう。
本当にかわいいなぁ。日本人離れしたあの容姿。そして、人形のようなあの肌。もう、文句のつけようがない。完璧だ。
「で、白崎さん。次はどこ行きます?」
「うーん。付箋は買ったし、ご飯?」
「じゃ、ご飯で」
「うんっ!!」
とりあえず、ご飯ってことにはなったけど、まず食べるところ探さないとな。時間的にはまだ昼前だし混んでないはず。僕らは、インフォメーションのところに行き、ご飯類に目を向ける。
「どーします?なにがいい?」
と、訊く。
「うーんと、じゃ、どーしようかな?ラーメンとか?」
「そうしますかね」
久々に麺類かもしれない。
そして、ラーメンと言っても色々ある。
まずは、ベースの違いだ。ベースといってもたくさんあるのだが、ここでは代表的なものを二つ上げさせてもらう。魚や昆布などの魚介類と、鶏ガラや骨などの肉類だ。
そして、ここのショッピングモールには、その肉類と魚介の二大ラーメン店がある。
肉一筋堂。と、魚一番軒だ。
どうしようか。がっつりと食べたいならば、肉一筋堂だろう。さっぱりすーっと食べたいならば、魚一番軒だ。
僕は別に白崎さんと一緒ならなんでもいい。
「白崎さん。どーします?ラーメン店二つありますけど……」
「じゃ、どっちもでっ!!」
どんだけ豪食なんだ……
冗談。という訳でもなく……
最初にがっつり系の方に来た。
「店の中入ったあとに言うのもおかしいけど、本当に?」
「え?士郎は食べたくないの?」
「食べたくない訳ではないけど……」
お金なんてあんまり無いし、お腹いっぱいになるだろうし、二軒もいったら、残金が帰りの電車代程度になってしまうと思うんだけど……
「じゃ、行きましょうよっ!」
真っ直ぐ僕を見つめる白崎さんの瞳に、僕は負けた。
結果。
一、二軒目と両方ラーメンを一杯ずつ平らげて、僕は心身共にダメージを受け、動かなくなっていた。
「大丈夫ですか?士郎」
「す、少し休憩していきましょう?」
食べ過ぎはやっぱり辛いな。
そして、ポケットから財布を取りだし、中身を確認する。
ここでの会計が1020円。手持ち残高は1500ちょっと……
う、うう……
まあ、小学生の頃から、ほぼボッチだった僕にはまだ貯金はたくさんある。
なら、大丈夫だ。
うん。大丈夫……
「ねえ、士郎っ!美味しかったねっ!」
心身ともにズダズタな僕に、能天気な白崎さんの腑抜けた声が響いてくる。
財布を閉めて、僕は白崎さんの方を向く。
そこには幸せそうな顔があった。
うん。いい。白崎さん。喜んでくれたし、こんな顔みられるならこんなの痛くない。というか、幸せだ。
体からすーっと、その痛みはどこかに消えた。
「で、次はどこに行きましょうかっ!」
「う、うん……」
続く。
くそ……
僕はかなり……幸せで、困っていた。
「私達は、ちょっと普通にデートしに来ただけだから、またね」
と、バカップルがついて早々、どこかに行き、
「私達も元々、普通にデートするつもりだったから、またね」
と、先輩カップルも、どこかに行ってしまう。
それからというもの………
「お兄ちゃん。あっち行こうよぉ~」
「士郎。こっちだよね?」
右腕を白崎さん。左腕を梨花が僕の腕を綱引きのように引っ張り合い、端から見れば、美少女二人に囲まれた容姿もなにも普通程度のやつ。そんなの端からみたら、両手に花。ちっ!クソリア獣が死んじまえっ!って思うだろう。僕だって、そんな状況におかれて幸せじゃないわけがない。だが今は、そういうのは望んでない。
ただ、僕は白崎さんとデートがしたいだけだ。
でも、こういう状況が、まんざらでもない僕がいる……
だが、どうしようか。
このままじゃ、体が引きちぎれる。
二人を傷つけずに、助かる選択肢は……
「じゃ、二つとも行こうか。時間はいっぱいあるんだし、ね?」
「「じゃ、先にどっちにいくの!?」」
……これは、参ったな。
僕がこんなに幸せでいいのか?
美少女二人からこんなに、こんなに……
もう、言葉を失い、気も失いかかったが、ここは理性を保ち冷静に判断する。
「じゃ、こっち行こうか」
と言って選んだのは、白崎さんのほうだ。
「やったー!!」
と、無垢な子供のように素直に喜んでくれる白崎さん。
……え?
「さ、行きましょう!!」
少し、僕の思考回路は停止していた。
ガッと、僕の腕を白崎さんは両手で抱きしめるかのように掴み離さない。
だが、動揺してはいられねえ。
「う、うん」
そして、僕らは歩き出す。
「……ねーねー。お兄ちゃん。私とは?」
どうやら、妹はそれが気に入らなかったらしく、後ろからじとー。という眼差しを向けながら、僕らの後をつけてきている。
「わかった。じゃ、おいで」
僕は仕方なく、渋々ともう片方の腕、に妹を受け入れる。
本当だからね!?私は別に、女の子なんて白崎さんだけでいいんだからね!?
オカマ士郎オンライン。
そして、両腕が柔らかなものに包まれる。
ああ。僕はこの時のために生きてきたのか……
「着きましたっ!」
ほう。着いたか。
そこは単なる雑貨屋だった。
妹は、探索だ。とか言って、ふらーっと行ってしまう。なんか、すごい不自然だったけど………
だが、白崎さんは、僕の腕から離れない。
「ここの雑貨屋。可愛い付箋がいっぱいあるんですよっ!」
あ、そうか。そう言えば、付箋が好きなんだっけ?
変わった趣味をお持ちで……
てか、本当に好きなのね。
だが、はやり僕の腕からは離れようとしない。
「……行って見ないんですか?」
見たいなら離れればいい。素朴な僕らしく、素朴な質問をする。
「え、えっと……士郎の方が好きだから……なんて、ダメですか?」
やばい。こんな返事が返ってくるなんて……心の準備が全くできていない状態でのこれは………
「だ、だめじゃない……です」
目を見て話せるわけもなく、僕はどっか他の方向を向きながら、そう答える。
「あ、は、恥ずかしいこと言っちゃいましたね……」
なにその笑顔……もう、可愛すぎるんだよっ!!
「じ、じゃ……一緒に見ましょうか」
「は、はい…」
そして、僕らは付箋コーナーへと向かう。
もちろん、腕は組んだままだ。
「あ、士郎っ!着いたっ!!」
付箋コーナーに着くと白崎さんは、僕から離れて、付箋に釘付けになる。
誰でもわかるようなトラップの中に、可愛い付箋を入れていたら、白崎さんは釣れるな。
「どうですか?士郎っ!これ、かわいくないですか?」
と言って僕に「獲ったどー」と、言わんばかりに押し付けてくるのが、半分ピンク、半分、青で出来た。カップル専用の可愛らしい付箋である。
夫婦茶碗ならぬ、夫婦付箋といったところだろうか?
「か、かわいいです……ね」
「かわいいですよね!?」
「は、はい」
まあ、確かにかわいい。
おしゃれな喫茶店に置いてあっても、おかしくない付箋だ。
「お兄ちゃんっ!ただいまー」
と、後ろから妹が僕の腕めがけてダイブ。
がっつり捕まれ、右腕は動かない。完全に固められた……
「い、痛いんだが?」
「ん?なにが?」
「いや、君の今つかんでいる僕の腕が。だが」
「しらなーい」
掴んでるのに知らないはないだろう。
「でも、一つ知ってることがあるよ」
と、妹は小声で俯きながら、そう言った。
「お?その心は?」
と、ふざけながら訊く。
「お兄ちゃんが好き……」
先ほどと同じくらいのボリュームで、妹はそう言った。
………え?
「それは、なに?どーしたんだ?」
「………やっぱり、お兄ちゃんは私なんて……」
「おい!どうしたんだ?」
なんか、様子が変だ。ま、まさか。妹悪になるんじゃ……
「う、ううん。お兄ちゃんなんでもないよ。あ、ちょっと、用事思い出しちゃった。またね」
「お、おい……」
妹は走って何処かに行ってしまった。
あれ?この光景どっかで…
ふと、遊園地での白崎さんが走っていく光景を思い出した。
なんで?なんで今、遊園地でのことを思い出すんだ?
わからない。なにが、どうなってんだ?
「ねえ。士郎ったらっ!」
「あ、すいません……」
そうだ。今は白崎さんとデートなのか。なら、無駄なことは考えないでおこう。
今は、彼氏彼女になって初めてのデートなんだ。今前のことに集中しよう。
と、自分に喝を入れる。
「で、しかりん。それは買いに行きます?」
「あ、うん」
これにもペア。と書かれている。
という事は、手を繋いでいないと買えない……
ここは、男の僕から手を伸ばしてあげないと、ダメだよな?
僕はゆっくり、ゆっくりと白崎さんにの方に手を伸ばしていく。
やばい。すげえ恥ずかしい……
それをそっと白崎さんが包む。
それは柔らかく、すべすべしていた。
こんなに心の落ち着くものはあるのだろうか?
「おお!初々しいねぇ」
と、後ろから知った声が聞こえてくる。
バカップルの一人であるれんだ。
「な、なんだよ……」
だが、手は繋いだままだ。
「いんやー。なんでもぉー?じゃ、おせっ……んん。冷やかしも終わったところだし、火憐のところに戻るよ」
「はよ行けやっ!!」
全く、なんだよあいつは…邪魔ばっかりしやがって……
****
「れんっ!どーだった?」
「ああ。二人はすげえいい感じだったぜ?初々しい感じがまた、よかったしな」
「そっか……よかった。本当に……よかった」
「ああ、よかったな」
なんで、私らがここにいるのかは、単なる偶然ではない。話は、デート前まで遡る。
私は、れんと二人で、デートするためにここに来ていた。
ついて早々、みんなとばったり出会い、でも、今回は別に誰とも回る気はなかった。久々にれんとしっかり二人きりでデートがしたいと思っていたからだ。
だけど、私は白崎さんと士郎を見て、疑問が生まれる。なんで、あんなにべたべたしてるのだろう?と。すごい疑問で、すごく不安だった。
普通、付き合ってすぐ、そんなにべたべたはできるわけがない。
私達だって、バカップルと思われるほどべたべた出来たのは最近からだ。
なのに、あの二人はデート開始早々、初デートなのにも関わらず、べたべたしていた。
不自然だ。おかしい。では、なんで?
考える必要もなかった。
私が夏祭り後に、あんなことをしたから……
これが私に「れんと幸せになってほしい」という思いでやってるのだとしたら、どれ程、私は士郎に迷惑をかけてしまったのかと。謝っても謝っても、どれ程頭を地面につけ土下座しようとも、許されることではない。
そんな罪悪感に似た感情のまま、デートなんてできるわけがない。
だが、今はそのデートの真っ最中なのだ。
「なんか、大丈夫か?」
私の心を読んだかのように、そういってくる。そんなに、私は顔に出るのかな?
「ああ。そうか。わかったぞ?前のことを気にしてるんだな?」
「………え?なんで?」
確か、私からは言ってないし、士郎が!?
「あ……俺は気にしてないから」
「そ、そう。でも……」
「もう、俺は決めたんだ。火憐」
「な、なにを?」
「火憐。もう、お前を離さないって。お姉さんとも約束したしな」
「………う、うう……」
私は唸ることしかできなかった。
てか。不意打ち過ぎる。でも、このおかげで気付けた気がする。私はもう、迷わない。だから、しっかりと「未練がましいことなんてない」って伝えないと。
「火憐。あいつらを探すぞ!」
「うんっ!流石!私の彼氏っ!」
そして、趣味が付箋ならとここしかない。と思い、ここに来た。
案の定、二人は居てれんが私の代わりに行ってくれた。
そして、今に至る。
でも、よかった。本当に……
*****
本当になんなんだ?あいつらは……
まあ、いいか。
「……じゃ、しかりん。レジに行きましょうか」
「で、ですね…」
本当に嵐みたいに荒らして行きやがって。
そして、僕らはレジに向かう。手を繋いだまま。
端から見れば、まあ、そりゃ初々しいと言われてもおかしくはないかな?
自分からは見えなくとも、なんとなくわかる。
動きが固く、ロボットのようになってることくらいだが。
そして、なんとかレジまで辿り着くと、店員さんがレジでスタンバイしている。
「ありがとうございます。こちら、ペア限定商品ですが、よろしいですか?」
「「はい」」
「承知いたしました。では、手をお繋ぎになり、少々お待ちください」
「「は、はい……」」
ドクン……ドクン……
すげえや。心臓の鼓動が痛い。早い。白崎さんにも、指の血液の通る感覚がわかるんじゃないか?ってくらいに、自分の中の血流がわかる。
そして、周りからは音という音は消え、なにも聞こえない。そして、ん?そ、草原が見えるぞ。さっきまでは店員の前にいただろ?ここは……アルプス?
きれいな水。綺麗な大地。そして、横には白崎さん。なんて、神秘的な……
「士郎っ!大丈夫?もう、買い物は終わりましたよ?帰ってきてっ!」
「あ、だ、大丈夫。絶好調ですよ。なんかこう、五感が鋭く敏感になったような感じで……」
なんて、冗談交じりにそう言うと、白崎さんの手を引きレジから出る。
ふう。なんか、疲れたな。
そんな時は、白崎さんでも見て回復しよう。
本当にかわいいなぁ。日本人離れしたあの容姿。そして、人形のようなあの肌。もう、文句のつけようがない。完璧だ。
「で、白崎さん。次はどこ行きます?」
「うーん。付箋は買ったし、ご飯?」
「じゃ、ご飯で」
「うんっ!!」
とりあえず、ご飯ってことにはなったけど、まず食べるところ探さないとな。時間的にはまだ昼前だし混んでないはず。僕らは、インフォメーションのところに行き、ご飯類に目を向ける。
「どーします?なにがいい?」
と、訊く。
「うーんと、じゃ、どーしようかな?ラーメンとか?」
「そうしますかね」
久々に麺類かもしれない。
そして、ラーメンと言っても色々ある。
まずは、ベースの違いだ。ベースといってもたくさんあるのだが、ここでは代表的なものを二つ上げさせてもらう。魚や昆布などの魚介類と、鶏ガラや骨などの肉類だ。
そして、ここのショッピングモールには、その肉類と魚介の二大ラーメン店がある。
肉一筋堂。と、魚一番軒だ。
どうしようか。がっつりと食べたいならば、肉一筋堂だろう。さっぱりすーっと食べたいならば、魚一番軒だ。
僕は別に白崎さんと一緒ならなんでもいい。
「白崎さん。どーします?ラーメン店二つありますけど……」
「じゃ、どっちもでっ!!」
どんだけ豪食なんだ……
冗談。という訳でもなく……
最初にがっつり系の方に来た。
「店の中入ったあとに言うのもおかしいけど、本当に?」
「え?士郎は食べたくないの?」
「食べたくない訳ではないけど……」
お金なんてあんまり無いし、お腹いっぱいになるだろうし、二軒もいったら、残金が帰りの電車代程度になってしまうと思うんだけど……
「じゃ、行きましょうよっ!」
真っ直ぐ僕を見つめる白崎さんの瞳に、僕は負けた。
結果。
一、二軒目と両方ラーメンを一杯ずつ平らげて、僕は心身共にダメージを受け、動かなくなっていた。
「大丈夫ですか?士郎」
「す、少し休憩していきましょう?」
食べ過ぎはやっぱり辛いな。
そして、ポケットから財布を取りだし、中身を確認する。
ここでの会計が1020円。手持ち残高は1500ちょっと……
う、うう……
まあ、小学生の頃から、ほぼボッチだった僕にはまだ貯金はたくさんある。
なら、大丈夫だ。
うん。大丈夫……
「ねえ、士郎っ!美味しかったねっ!」
心身ともにズダズタな僕に、能天気な白崎さんの腑抜けた声が響いてくる。
財布を閉めて、僕は白崎さんの方を向く。
そこには幸せそうな顔があった。
うん。いい。白崎さん。喜んでくれたし、こんな顔みられるならこんなの痛くない。というか、幸せだ。
体からすーっと、その痛みはどこかに消えた。
「で、次はどこに行きましょうかっ!」
「う、うん……」
続く。
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