インスタントガールフレンド

クレハ@WME

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第11話

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11話

なんでこんなことになっているんだろう?…………
さっきまで、白崎さんと一緒にいろいろなところに回って楽しむはずだったのに……

綿菓子が溶けて手にへばりつくみたいに鬱陶しいような奴らが、僕に付いてくる。いくら違うところに行っても付いてくるやつら…………全く、僕のおまけみたいなやつらだ。

「なんでお前らがここにいるんだよっ!!!」

「だって……大人数で回ったことないし……あ、あと昔はカップル限定なんてことはなかったらしいんだ。だから、友達と回ってみたいなって……」

そう。僕ら以外にも奴らがいたのだ。

僕の幼馴染で天敵の奴らだ。

夜だとはいえ、屋台などの光が花火みたいにあちこちに散りばめられている祭りの中では、彼女の表情が色っぽく見えてしまい、昔の幼馴染みでさえもかわいくみえてしまう……

「そんな顔されたらだめだなんて言えないだろ………?」

「火憐………やっぱりお前はいいこと言うじゃないかっ!!さすが俺の彼女だけはあるっ!!」

「もう、れんったら………」

人前だとかそんなことを無視してやつらはいちゃつき始めた。

くそ。こいつら………一瞬でもときめいてしまった自分を一回殺してやりたい。

こんな奴らだったか?なんて考えていたら白崎さんが目に入った。

白崎さんは世界の終わりでもみかような表情をして空を見上げていた。

な、何事だ??

「ど、どうかしました?」

返事がない。

ど、どうしよう……
こんなんじゃ話せるわけがない。それはまるでシャッターが閉まりきっている商店街のような静けさ。それに対して、あのバカップル共はそんなことを気にしない近くに出来たショッピングモールのような覇気を持ち、僕らに牙をむく……………

なんか話さないとこのままじゃやつらの空気に潰された最悪な夏祭りになる……せっかく来たならやっぱり楽しく行きたいしな……

なんて考えていると、白崎さんが急に立ち止まりその状態を壊すかのように話しかけてきた。

「あ、あの!二宮くん!ずっと前から……いたんだけど………」

 盆踊りの音楽で白崎さんが言っていることがわからないとこもあったが、でも、白崎さんの、あの目が輝いている目を見ればなんとなく、言いたいとこがわかるような気がする。多分だが、何か食べたいんだな………

 まるでりんご飴みたいに赤くしておどおどしている。それもまたかわいくて……いいっ!!

「はいっ!」

 僕はその、遊んでいる子供みたいなかわいさに死に悶えそうになりながら返事をした。

「りんご飴買ってきてもいいですか??」

よしっ!当たり。

僕はこのことを事前にわかっていたが、一つまだ考えていないことがあった。

一緒に付いて行くか?と、いうことだ。

やつらのバカップル共と一緒に居るのも嫌だしいっその事、ストーカーから逃げるように引っ越すか?

で、でも……何こいつどんだけりんご飴欲しいんだよって思われるかもしれない………

もしくは、私につきまとってきてこいつ嫌だなとか思われるかもしれない……………

うーん。でもなぁ……

いや、後のことなんて考えるな。ついて行こうっ!!

僕は決断し、訊いた。

「それ、僕も付いて行っていいですか?」

なぜだろう?返事がない……

あれ?白崎さん?

…………え?いない?

僕が顔を上げてみると……既に白崎さんの姿はなく、遠くに見えるあの白髪の背の高いあの身につけているあの浴衣………間違えるわけが無い白崎さんだ。白崎さんはもう、走ってりんご飴を買いに行ってしまったのだ。

そ、そんな………

せっかく二人きりになれるチャンスだったしプラスあいつらバカップルと離れれるいいところだった。僕はそれを逃したのだ。

うわぁぁぁ!!!最悪だ。
横で僕に見せつけるように、いちゃいちゃしている………
一つため息を吐いた。
多分、今日が今年最高の厄日であろう……………

「なあ、士郎。俺たちはちょっと食いもん買ってくるから、ここで待っててくれねえか?」

うっしゃぁぁぁぁ!!

リア充様がどっかにいくぞーっ!!

「おう、俺はここにいるから二人でのんびりしてきなよ。」

うっ!!!こんな事を考えてしまったけど、やっぱり皮肉言ってるようで嫌だな……

なんて少しの後悔と自分の人間性の悪さに押し潰されそうになっていた所。火憐が僕が座っていたベンチに座って、靴を脱ぎながられんになにか言っている。

「ねえ、れん。なんか慣れない靴履いて、少し痛いから、ここで士郎と休んでていいかな?」

と、言っていたので僕は足を見た。細くまるで一本の棒のようにスラっとした脚っ!!しゃぶりつきたくなるような太ももっ!!

ダメだダメだ。理性を保つんだっ!一人で興奮してしまっているじゃねえか………これじゃただの変態みたいじゃねえか………

「大丈夫か?」

「大丈夫っ!!」

「うん……少し休めば大丈夫」

「うん?どうした士郎?急に立ち上がって」

「なんでもねえよ」

「無理はすんなよ?じゃ、俺の彼女を頼むな?士郎」

「あ、う………うん」

「それじゃ、行ってくる早く買ってくるから、それまで待っててくれよー」

走りながら何処かへ走り去っていった。

どうしよう…………昔の事とかいろいろあって気まずいんだが。

「なんでそんなに離れてるの?」

僕は火憐から逃げるように無意識にベンチの端に座っていたようだ。

「なんでもないよ?」

「なら、近ずいてもいいよね?」

「う、うん………」

火憐がこっちにどんどん近ずいてきて、もう、僕と火憐の肩は当たり、もう距離なんてないっ!!!ゼロだ。

「ねえ、士郎………ごめんなさい」

「え?なんの話だ?」

「まだ、怒ってるよね?あの事…」

あの事?どこ事だろうか?わからない。

「…………どれの事かな?」

と、僕が口にすると急に死んだ魚のような顔をしてうつむいた。
な、なんで?僕は何か間違えしまったんだろうか…………?

あっ!!!

僕はすぐでは無かったが、重大なミスをしていることに気がついた。

相手の立場になって考えておくべきだったな。

「ち、違うよ?複数あってどれかわからないって事じゃなくて思い当たる節がないって事だから……」

「そ、そうなの?」

そう言いながらゆっくりと火憐は顔を上げた。

「う、うん」

か、かわいい………だが、ダメだ。こいつは幼馴染で、れんの彼女だ。もう、今更なにがあっても遅い。

「よ、よかったー」

なんて言っているが、顔に出やすい火憐の顔にはまだ、不安の文字が見える。

「考えすぎじゃないか?」

「なんで?私の考えてる事わかるの?」

「そりゃ、長い年月一緒に居ればわかるよ。それに……」

「それに?」

…………とても幼稚園くらいからずっと、好きだったから、なんてとても言えないっ!!!

「……なんでもないよ」

「気になるじゃん!教えてよ~」

僕に真っ直ぐに目を向けて話しかけてくる。そんな目から逃げるように僕は他の方に目を逸らし、そのまま話も逸らそうとして考えてみた。

「そういえば、れん遅いよなー」

「そうやって話を逸らそうとしても無駄だよ?答えてよ~」

僕は軽く火憐に聞こえないくらいで舌打ちを打ちながら僕は次なる話の逸らし方を考えてみた。

あれ?無いな………
詰んだか?チェス風に言うと
……………チェックメイトッ!!!

「いや、まだ王手ってところですよ~士郎さんっ!!」

この声はなんだ?僕の頭の中だけに響いてくる何者かの声。だが、この明るく跳ねるようなこの声。いつも語尾がいつも敬語。
これを間違えるわけが無いどう考えたってインスタントガールフレンドしかいない。

「チェス風に言ったんだから、チェックでいいじゃねえかよっ!!」


「さすがいいツッコミじゃないですか。士郎さんっ!!」

こいつ、ところでどこにいるんだ?

「今は用事でかなり遠くに居ます。」

どうやって話してんだろ?

「これもインスタントガールフレンドの力でやっています。人間界のもので近いのは電話です」

全ての謎が一問一答でさっと解けた。さっさと、最初の話に戻ろうと思う。

どうすればいいんだ?

「今の私には………が足りなくてヒントしかなので、ヒントッ!!!
顔をよく見て考えて見てください。あと、幼馴染みだからこそわかる事って大事ですよ?
おっと、もう時間なので私はこれ以上は助言できないので、あとは頑張ってくださいねっ!士郎さん」


ちょっと待てよっ!!

途中聞こえてないしいろいろわかんねえんだよっ!!!

マシンガンみたいに言葉を連射して僕に発言権を与えないままにインスタントガールフレンドとの電話みたいな通信が切れた気がする。

仕方ない………インスタントガールフレンドの言ってたヒントとやらを頼ってみようか。

顔をよく見ろだっけ?

僕は彼女の顔を眉間にしわを寄せて凝視した。

「なに?どうしたの?梅干しみたいな顔をして」

「い、いや…なんでもない」

「そうなの?なら、早く教えてよ~」

ダメだ。全然わかんねえ…………

いや、よく考えてみろよ?

幼馴染み?

この時、数学のちょっとしたひっかけ問題が解けた感じであった。なんだよ。僕が直ぐにわかるような事じゃねえか。

「顔に書いてあるんだよっ!!何もかもっ!!!」

独立宣言をした人みたいに僕は、堂々と彼女に宣言した。

「なんですとぉぉぉぉ!!!」

「じゃ、じゃあ………私の考えていた事わかるの?」

「あ、ああ!大体はな」

「なら、答えてよ」

なぜか声が震えていて、顔が真っ赤になっていた。僕はされた事がないが告白する前みたいな感じだ。

まさか!?

告白っ!?

「えっ!?どういうことだ?それって二択か?」

「う、うん」

  いつもの彼女だったら、太陽のような、真っ直ぐで、かつ、優しく包み込んでくれるような暖かい眼差しで僕を見つめながら話してくれるのだが、今回は違った。
 
彼女は僕を避けるように彼方此方をみて視線を全く会わせようとしない………

彼氏持ちの奴がなんなんだよっ!!
む、昔好きだったからってそんな………

「おーい!士郎。火憐ーー」

聞きなれた鬱陶しい声が祭りの激しいノイズと共に僕の耳に入ってきた。
まあ、どちらもノイズみたいなものだが………

「あれ?あの士郎の彼女………じゃなくて友達は?」

れんは笑いながらそう言った。
僕はツッコミも引っかかりもしなかった。

「まだ、戻ってきてないよ」

「さっき『会って先戻りまーす!』って言ってたけど、俺より遅いのか」

と、やつは笑いながらそういうと、僕と火憐の間に堂々と座った。

「はい!火憐っ!たこ焼き買ってきたよっ!!」

「ありがとうっ!」

なんでだろう………こいつら彼氏彼女って感じがまるでしない………

どこかわざとっぽいのだ。

いや、考え過ぎだな。多分本物のリア充ってのはわざとに見えるくらいが本物の彼氏彼女関係ってやつなのかもしれない………

「うん?どうしたの?士郎」

火憐がいつもみたいな眼で僕を見ている。

さっきまでは顔を真っ赤にして今にも爆発するような顔してたのに…………

奴が帰ってきてからいつも通りの火憐だ。

「どうしたの?」

「い、いや………なんでもない」

「そっか!」

「うん………」

何を言いたかったんだろう………

まあ、いいか

それからすぐの事だ。

天使みたいな声が僕の耳に響いた。

これは間違えようもなく、白崎さんだ。

「お待たせしました。待ちました?」

「いや、全然待って…………ってなんですか!?その量の物は」

白崎さんは、台車に乗せてなにかを持って来た。

うん?よく見たら焼きそばみたいなものといろいろ食べ物みたいなものが積まれている…………

まさか!?

こうは思いたくないが、いや、食べ物?なのか?…………

「食べ物ですよっ!」

この考えを提唱した時、白崎さんはこの莫大なにかの物を『食べ物』とそう断言したのだ。

この量あればひと家族が1週間は暮らせるぞ!?

「はい!ここで食べましょうか」

そういうと白崎さんはその山から大きなレジャーシートを取り出すと躊躇なく、まるで花見をする時のように地面の上に敷いた。

祭りの最中だって言うのにのに………

「やっぱり祭りって言ったらこうだよな」

……え?

祭りってのは盆踊りして、花火見て、適当に食べ歩きしたりするもんじゃないのか?

そんな感じでテレビではやっていたが…………………

「そ、そうなのか?」

「あったりめえよ」

僕がその言葉に驚いてせみの抜け殻みたいになっていると急に首に人の手くらいのなにかがギュッと僕の首を掴んできた。

「せみの抜け殻採取だー!!」

なんて言って採取されてしまった抜け殻の気持ちが少しだけ分かった気がした。

「なんでそんなとこでボケーッと立ってんだよっ!!早く来いよ」

「あ、う、うん………」

そのまま僕は奴に強引に連れられて、その花見みたいな晩餐会に巻き込まれてしまった。

「んじゃ、いただきまーすっ!」

と、言うと皆、一斉にまるで飢えたライオンに餌を与えた時のように恐ろしい速度でその飯を食べ始めた。
そして、一瞬にして莫大な量の飯は消えていた。

「ふぅー食った食ったー。んじゃ、祭りのメインである遊び場に行こうか」

「やったーーっ!!」

「いたたっ………」

「脚が痛むのか?」

「うん………」

「じゃ、俺がおんぶしてあげるよっ!!」

「で、でも…………悪いし………」

「なにいってるんだよ。彼氏彼女じゃないか。こんな時に彼氏を頼らないでどうするんだよ。ここは黙って俺の背中に乗ってなさい。」

か、かっけえ……これじゃ、どちらを彼氏にしたいかって言ったらどう考えてもれんだな………完敗だ……

「じ、じゃお言葉に甘えてお願いしま……す……」

「おうっ!!」

れんはすごいノリノリだが、火憐は全く乗り気ではなかったような気がする。

まあ、いいか。

僕もそろそろ立って行こうか。

僕は立とうと思った。だが、なんでだろう……体が動かない……

た、食べ過ぎ?

こ、こいつら……悪魔か?

あれほどのものを平らげて平然としている。

多分普通の人ならもう歩けなくなっているだろう。現に僕がそうだ。

「少し、休ませて」

「他の人の邪魔になるだろ?」

ま、マジかよ………こいつら邪魔になるって知っててここで食べてたのかよっ!!!

「あ、うん。じゃ、行くよ」

僕は腹が痛かったが、懸命に立ち上がって一歩、また一歩と歩み始めた。

「そうこなくっちゃー」

そして、僕らは遊び場といわれる場所へ向かった。

子供の群がいっぱいいる……………のはとても祭りっぽくていいのだが、そっちをみてもこっちをみても見えるのは男女二人組でのカップル。

こ、ここでもまた………この場の雰囲気につぶされなきゃならないのか…………

いや、待てよ?

今、俺は1人じゃないんじゃないか?

と、思い、横を向くと美しい白髪の少女が立っている。

その子は雲みたいな綿菓子を頬張りながら幸せそうな笑顔でニコニコしている。

これって今更だが、夢じゃないよな?

「ちょっと、僕の頬をつねってみてくれ」

「あ?どうした急に?」

僕の泣きそうな顔を見ると同時に奴は思いっきり、加減もなく僕の頬をつねって躊躇なく思いっきり引っ張った。

「いってぇぇぇぇぇ!!!!」

頬がちぎれるくらいの強烈な痛みが僕の頬から全身へと痛みという名の電撃が身体中に駆け巡るっ!!

痛みとともに『夢じゃない』という確信が持てた。

「気が済んだか?」

つねられた痛みで頬を抑え、その場に座り込んでいたら、旧友のれんが手を差し伸べてきた。

「あ、うん」

ぼくはその手を取り立ち上がった。

こいつもいいとこあるんだな………

なんて思っていたら「じゃ、遊ぼうっかー」っと、火憐が言った。

「うんっ!!」

みんなは賛成のようだ。

「なにからやる?」

この場の流れに任せて僕はこいつらについていった。

「うーん………やっぱり祭りで遊びって言ったらアレでしょ?」

「アレだねっ!」

「アレですねっ!」

ど、どれだ?祭り経験がほぼゼロな僕にははっきりいって全く理解不能であった。

「ど、どれだ?」

と、発言しようとすると、僕はなぜか白崎さんに大きな赤いリボンのついた白いケーキが入っていそうな箱を渡された。

プ、プ、プレゼント!?

お、俺に特別?

そのあともれん、火憐、の順で僕と同様の品を渡していっていった。

なんだ…………特別な物ではないのか……………

ま、まあ特別な物な訳ないよな……第一、付き合ってもないんだし……

でも、これは何だろう………

「なんですか?これは?」

「えっと、開けてみてくださいっ!」

「あ、はい」

僕は白崎さんに言われるがままにその箱を開けた。

開けてみると、ペンとホワイトボートの小さいのが入っていた。

「えっと………これは?」

「ホワイトボートとペンですが?」

「いや、それは見てわかるけど……なんで?」

「やりたいことかいて見せ合って多数決で決めようよー」

白崎さんは子供のような純粋な笑顔で、僕をまっすぐ見つめている。

か、かわいい……

「士郎さん?」

僕の下にしゃがみ込んでまるで迷子の子供に話しかける時のように首を傾げながら頭の上にはてなマークを浮かべている。

「そ、そうだな。そういうのも悪くないんじゃないか?」

「なら、決まりですねっ!」

「あ、他の皆さんもいいですよね?」

「う、うん」

バカップルは声を揃えてそう言った。

「じゃ、書き込んでください。あ、一つだけですからね?」

「う、うん」

今回の白崎さんは物凄く乗り気であった。多分だが、テレビで見てやりたくなったみたいなことであろう。

まあ、いいか。かわいいし

そして、僕らはそのホワイトボートに淡々とみんなは書き始めた。

みんなは書き終えて、僕待ちらしい。

早く考えなくては………

祭りの遊びで言ったら……なんなんだろう?

祭りの遊びって言うと色々ある。例えば、射的や金魚すくい、デートシュミレートなんてものもあったりする。

うーん…………

みんなで楽しく出来るようなものって言ったらこれしかないっ!!

僕も即座に書き終えるとみんながホワイトボートを開き始めた。

「俺はなんたって、これだよな?夏祭りって言ったら、そうっ!金魚すくいっ!」

れんは笑いながらそう言った。

「それもあるけど私はやっぱりデートシュミレートかなー」

続いて火憐がボートを開きながらそう言った。

「白崎さんは?」

「え、えっと…………恥ずかしいので、先どうぞ」

恥ずかしがってる白崎さんもまた……かわいいなぁ。

僕は漢を見せるためにボートを開いた。
 
「お化け屋敷だよな?やっぱり」

みんなやけに静かだ。

「どうしたんだ?そんなに青ざめて」

「「い、いや………別に………」」 

れん、火憐は口を揃えてそう言った。やっぱり付き合ってるんだな……と、現実をしっかりとこの目で肉眼で確認した。

「ま、まあ……悪くないよな?で、白崎さんは?」

「えっと、これですっ!!」

やつらは、それをみると、まるで死んだような顔をしていた。

なんだろう?と思い、僕も見る。

白崎さんが開示したボートには小さく『お化け屋敷』と書いてあった。

「じゃ、お化け屋敷で決まりだなっ!」

「えっと、俺らはやめとくよ。火憐も足痛めてるし。」

あいつ逃げたな。

まあ、彼女の前では恥かきなくないよなーっと、思い見て見ぬ振りをしてやった。

「そうか。じゃ、白崎さん一緒に行きましょうか?」

「は、はいっ!お願いしますねっ!」

「じゃ、行ってくるよ」

「お、おう……逝ってこい。無事生きて帰ってこれたら、金魚すくいでもしよう」

本格的なやつなのかもしれない。

「死なねえよ。俺はそこまでビビリじゃねえよ」

僕は笑いながらそう言って、二人とは一旦別れて白崎さんと一緒にお化け屋敷に向かった。

「着いたね」

「は、はいっ!」

どうしたんだろう?緊張してるのかな?

「大丈夫ですよ?お化け屋敷楽しみましょうねっ!」

僕が笑いながらそう言うと

「こ、怖がってないんですよ?」

白崎さんは声を震わせながらそう言うと、ロボットみたいに歩き始めた。

怖いんだな。でも、僕が守ってみせるっ!!

とうとうお化け屋敷の前まで来た。

「遊び場から結構歩きましたね」

「怖くない怖くない…………」

お化け屋敷に入る前だというのに彼女はビクビクと震えていた。

「大丈夫ですよ。僕が居ますから」

あ。とっさにそんな言葉が出てしまった。

なに意味不明なこと言ってんだよっ!!

「はいっ!では、私を守ってくださいねっ!」

先ほどまで震えていた彼女は笑顔で僕にそう言った。

ドキっ!!

くっそ。かわいいじゃねえか………

よしよし、よかった。

そして、僕たちはお化け屋敷へと足を踏み入れた。
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