俺の妹になってください

クレハ@WME

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五話

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【俺の妹になってください】

五話

三ヶ森さんとのはじめての喧嘩。やっぱり最初に『はじめて』ってつけるとなんだかエロく感じる。………のはいいとして、俺はなんだかんだで無事に妹と疎遠にならなくて済んだのだ。

めでたしめでたし。

「……ねぇ、あんた。なに三ヶ森さんといちゃついてるの?」

今なら三ヶ森さんを妹にするチャンス!という絶好のところで、馴染みのある声が背後からかかった。

振り向くと木の陰から伸びるように出てきて、不敵な笑みを浮かべる一人の幼女がいた。そいつは指を一本ずつポキポキと鳴らして、厨二病患者ならかっこいいと感じそうな登場をする。

「………悪役っぽいなー。あ、悪役か!」

なんて笑顔で言うと、柏木もふふ。と、笑い、モンスターは後にどす黒いオーラを発しながらもなにも言わずに一歩ずつ近づいてくる。

「じ、冗談ですよ。冗談。ね?だから笑ってくださいよ」

「なに?笑っているのだけれど?」

「目が笑ってねえんだよっ!!」

そう言い終わる頃には俺は腰を抜かして立てなくなっていて、目の前に大きくやつは立っていた。

そこからはもう…………語らせないでください。痛かったんです。

「………はぁ……はぁ。殴りすぎてお腹減っちゃったわね」

俺を十二分に殴ったやつは『あー。すっきり』という満足げな笑顔を浮かべて、そんなことをぬかす。

「そ、そう………ですね………」

三ヶ森さんはこっちを申し訳なさそうに見る。

『おにーちゃん大丈夫?痛かったよね?あとで怪我の手当てしてあげるねっ!!』

なんて、脳内再生できるほどそれは可愛かった。

「じゃ、三ヶ森さん行きましょ。とりあえず、『あなたたちがっ!』いない間に色々調べておいたから」

も、もういいでしょ?そんな親の仇を見るような目で見ないで。

「ごめんなさい。もう、許してください」

俺が謝ると柏木はにっこりと笑った。

「そういえばイケメ……じゃなくて、山口は?」

やつの姿だけなかった。

「あー。えっと、先に料理をする場所の確保に行ってもらったわ」

「………あー。うん。なんとなくわかった……けど………」

「けど?」

柏木は首を少し傾げてキョトンとする。

「……………お前、道わかるの?」

そう訊くと場に静寂が訪れた。

「……やっぱり」

「わ、わかるわよ……」

と、いいながらも俺から目をそらして明後日の方向を向く。

「な、なんか、二人とも………仲良い……ですね」

どこをみてそう思ったかは知らないが、袖をぎゅっと掴んで下を向きながらそういう。

「そうかしら?」

「う、うん……なんか……二人話してて、阿吽の呼吸っていうか………分かり合えてて…そういうの、すごいと思った。私……話すの……あまり得意じゃないから……」

途切れ途切れに彼女は、言葉を俺らにぶつける。

「………三ヶ森さん。話すの…いえ、言葉と言ってもいいわ。それってなにかわかる?」

柏木がそう聞くと少し考え込む三ヶ森さん。

「………コミュニケーションするために、必要な必須項目………かな?」

三ヶ森さんは考えて考えて結果、その答えを出した。

「………必須項目ね。でも、私なら……」

少し寂しそうな、残念そうな音を発しながら俺の前に立って、ボクシングでもするのだろうか?柏木が俺の前で構えた。なにをいうんだろう?なんて考えていた次の瞬間、やつの綺麗な右ストレートが俺の腹部に飛んでくる。

「………これでいいもの」

「な、なんにもよくないわっ!!」

俺のツッコミを綺麗に流すと彼女は俺なんていないもののように踏み付けて、三ヶ森さんの横に立つ。

「だからね?会話なんて必要ないわ。うざければストレス発散に殴る。嬉しくても殴る。そんなのでいいのよ」

「そんなのはサンドバックにやりなさい!……で、三ヶ森さん。ダメだからね?こんなのに影響なんてされちゃ」

「………な、殴るのはいけないと思いますけど……柏木さんが言ってること……なんとなくわかった気がします。だから……」

おかしい。俺がさっきから空気扱いだ。俺見えてるのかな?と、半泣きになっていた俺の前に三ヶ森さんは立つ。

見えてたんだね。信じてたよ。俺が妹を信用してなかったことなんてない。

そして、俺に屈むようにジェスチャーで『………しゃがんで?』と、言われてしまって満面の笑みでそれに答える。

なんだろー。キスでもしてくれるのかな?なんて期待をしていると、パチンとなにかに頬を打たれた。

「平手打ちで許します」

ニコッと笑ってそういう三ヶ森さん。

その笑顔は間違いなく、その『言葉』という概念じゃ表せないものだった。

だけど、一つ言っときますか。

「……なにをどう思うのも受けた側の勝手だ。だから、君の選んだ必須事項ってのもいい選択肢だと思うよ」

俺は三ヶ森さんの耳元で忠告するようにそう言う。

………言葉というものは行動に比べて実に曖昧で不確かでデタラメなものだが、言葉という概念がなければ想いは伝わらない。

だから___

この想いも伝わらない。

不器用で破天荒なリーダーだ。じゃ、サブリーダーの俺はそれをしっかり支えてやらねえとな。

「………脱線しちゃったわね」

「……ん?あ、あぁ。そうだな。なんの話だっけか?」

ぐぅー。

と、それに答えるようにちっちゃな子のお腹が可愛げな音を立てた。

「………記憶って殴れば消えるのよね?」

****

色々、いや、散々なめにあったが俺らはその茂みから出て、てくてくと少し人間の手が入ったような道を進む。

もう、さっきのことは聞かないでください。痛かったんです。はい。

それから暫くなんのあてもなく適当に歩いていると、俺の視界が急に真っ暗になった。

「だーれだっ!」

「…………は?」

こんなにあざといことをしてくる奴なんて……俺は一人しか知らないぞ。

「ね、姉さん?」

と、半信半疑でその手を強引に退かして振り返ると、そこには学校指定の制服姿の女子高生が立っていた。

この高校は学年を色で分けるのだが、それは上履きだけで今は判断するのもがない。パッと見た感じだと一歳や二歳の違いなんて全然わからないしな。

姉は俺に振り払われて、二、三歩こっち向きで踊るように後退してから、少し前屈みになる。

「来ちゃった!テヘッ!」

そして、追い討ちをかけるように自分の頭を軽くポンっと叩きながら桜色の舌をウインクしながらちょっと出す。

はぁ。わが姉ながら本当にあざとい。

「来ちゃった!テヘッ!じゃねえよっ!!帰れ」

「えー。お姉ちゃんが折角来てあげたのにー」

頬をぷぅーと膨らませてみせる。

姉は女子二人が俺の横にいたというのにこういう行為を取る。お前、絶対に女子の友達居ねえだろ。そんな姉をみて少しばかり友好関係が心配になったが、まあ、それはいいか。

「こんにちはー。お久しぶりです」

「おー!柏木ちゃん。久しぶりだねー!高校も同じだったのかー!よかったねー春樹くん」

なーにが『久しぶりー』だ。お前気づいてたろうがっ!

「あー。そーだね」

生返事だけをする。

「で、そっちの子は?」

三ヶ森さんは自分だと気がつくと、キョドッてアワアワとしていた。そりゃー怖いよな。………大丈夫だ。お兄ちゃんが助けてやる。

「あ、そっちは俺のいも………じゃなくて、同じクラスの三ヶ森 美柑さん」

あっぶね。うっかり愛が強すぎて自分の妹とか言いかけちったゾ。

「へえー。美柑ちゃんねー。春樹くんをよろしくねっ!」

「は、はい……」

「にしても、美柑ちゃんかわいいねー。お肌もツルツルだし…」

姉のターゲットが俺から三ヶ森さんにシフトチェンジした。小動物でも扱うかのように撫でられたり触られたりしている。

いいなぁおい!俺も触りてえよっ!!

喋らなければ普通に美人な姉と俺の自慢の可愛い妹。が、セットになっているとやっぱり絵になるな。

『…………助けて、お兄ちゃん。この悪魔みたいな人を退けて?』と、でも言わんばかりに泣きそうになって目で訴えてくる。

うんっ。お兄ちゃん助ける。

「で、姉さん?……説明して」

「うーん?なんの?」

姉さんは首を傾げてキョトンとする。

「そんな可愛い仕草でごまかしてもダメ」

「………あーあ。冷たいな。春樹くんは。……わかったよ。じゃ、なにを言えばいいの?」

わが姉ながらめんどくせえ……

「なんで来た?」

最初にこの質問した気もするんだが、再度俺は姉に問う。

「心配だったから来たのよ?」

「なぁ、姉さんよ。本当に言ってる?」

「おねーちゃんに二言はないわっ!」

ドヤ顔できっぱり言い切る。

「じゃ、姉さん。一つだけお願いがあるんだけど」

「んー?なになにー?」

興味津々って目で今か今かと次の言葉を待っている。なんだかご飯目の前にして待てって言われて待ってる犬みてえだな。

「帰ってくだ……」

「嫌です」

びっくりするくらいの即答であった。

おかしい。なんで?姉さん今お前は多数決的に見てもこっちが有利だぞ?俺は絶対こいつは家に返したほうがいいと思うし、みんなもそう思ってくれているはず。ならば、三対一で勝ってるのに………

「帰れっ!」

「嫌です」

「あ、あの…………」

同じことを繰り返して言いあい、話のゴールが見えない俺らのイタチごっこのような会話に飛び込んで来たのは、か細い声だった。

「どーした?」

「え、えっと……な、なんで、お姉さん風見くんを心配して来てくれたのに………一緒に居てあげないんですか?」

まっすぐな目でそう言われる。

「いや、えっと……一つ上の先輩が後輩の合宿についてくるって変じゃない?それも完全に私情で」

「そ、それは変ですけど………あ、愛さえあるならばそれはそれでいいと思うんですっ!」

頭でも打ったのか我が愛しの妹はとんでもないことを言う。

「そうよ。愛さえあればいいのよ」

多数決。多いほうがえらい。というよくわからないシステムが採用されたわけでもないが、数で言えば三対一。

みんなが冷たい目でこちらを見る。

腹も減ったし戦争もする気も無い。ならば、潔く負けよう。

………もう、いいよ。春樹疲れた。

「わかった」

そうして一年生しかいないはずのこの四班に、なぜか俺一個上である二年生の先輩であるはずの姉が加わった。
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