俺の妹になってください

クレハ@WME

文字の大きさ
12 / 57

十二話

しおりを挟む
【俺の妹になってください】

十二話

~ あらすじ ~

合宿二日目。一日目同様に甘い嬌声が聞けるかと思いウキウキして湯船に浸かると、柏木の今の本音を聞いてしまい………

*****

昼まで自由行動とか行ったくせに、起きたらもう昼だった。

なんで誰も起こしてくれないの?

そして、帰りのバスに乗り込む。

バスの中は俺のように寝すぎて眠りにつけない奴と、朝早く起きて遊び疲れている柏木のような奴もいる。

ほとんど半々くらいだ。

確かに、全体を見れば半々かもしれないが、ここ、今俺の座っている場所から見てみると、半々とかそんな割合ではない。俺以外の班全員が寝ていた。

バス内の席位置も班ごとだ。だから、話せる人間はいない。

そして、このバスの縦横の揺れ。眠れるわけがない。姉さんがよくわからないルートでここまで来てしまったがために、俺は二つ並びの席の脇から飛び出すように出てくる、いかにもちゃっちい緊急用の椅子みたいな席に移ったのだ。

「ね、ねえ………」

「なに?」

右側に座っていた女子が話しかけて来た。見覚えはないが、何処かで聞いた声だった。左側は四班の一行がいるがみんな夢の中。壊滅状態である。だが、それに負けず劣らずでこいつの班の奴らも皆ぐっすり夢の中に落ちていた。

「あのー。名前わかる?」

その見知らぬ美人さんは、そう訊いてきた。

「あ、あっははー」

俺は苦笑いを浮かべることしかできなかった。

「わかんないか。まあ、仕方ないよね。話したことないもんね」

彼女も苦笑を浮かべた。

「私は、橘 凛(たちばな りん)」

「あー。柏木と話してた」

「そ、そうだったかな?」

そして、だんまりが続く。

「ご、ごめんねー。気まずいよねー」

ふふ。と、笑いながらも彼女はそう言う。

「あ、あぁ。うん」

しかし、美人だ。金髪のを肩につくくらいまでに伸ばして、毛先を緩やかに縦カールさせ、蹴ったりしたらしなやかでいたそうな美脚を前にだし、柏木に少しくらい分け与えてあげたいほどのスタイル。顔だってかなり整っている。そんな社長令嬢みたいな美人がなんだって俺に話しかけてくるんだ?可愛さだけで言ったら柏木と三ヶ森たんと変わらないレベルだ。

「そっかー。そうだよねー。じゃ、名前、覚えてもらうよ?」

彼女は相変わらず笑っていた。だが、その微笑みには確実に殺意のようなものがあった。

「う、うん」

「なに?怖い?」

怖い。怖いですが、そんなことを言ってしまったらなんというか、首が飛びそうなので笑って誤魔化してみた。

「じゃ、再度自己紹介するね。私は橘凛」

二度目の自己紹介を受けて俺はとりあえず、一度目にしてなかった自己紹介を返しておいた。

「あー。君、春樹って言うんだね。初めて知ったよ」

「そう?」

笑顔を崩さない彼女に俺は適当に愛想笑いを浮かべて返す。すごいやりにくい。このタイプの人間は少し、いや、かなり苦手だ。

「ねえねえ、なんか、話そうよ」

「なにを?」

「なんかー」

「そんなことを言われて話題を提示出来る人間なんていません。居るならば俺の前に連れてきてみてください」

「あっははー。それもそっかー。つまらないね」

満面の笑顔でそう言う彼女に魅入ってしまって、俺は言葉を忘れていた。

「なに?どうしたの?何か私の顔についてる?」

「いや、別になにもない。というか、俺寝ていい?」

「寝れるの?」

「まあ、寝るさ」

話すより眠るふりをして居る方がマシだ。

「あっそー。じゃ、おやすみー」

そう言われて「おやすみ」と返して俺は瞼を閉じて眠りにつく。

まぶたは閉じたのだが、眠れる気がしない。寝れるわけがない。視線が気になるんだもの。

まぶたをゆっくりと開き、寝ていますよっていうギリギリのラインまで目を開いて、前を見ると、そこには顔があった。誰のかはわからないが、確かに人間の顔があった。

「あっ!起きてる」

嬉々の声をあげるさっきのめんどくさい人間の声がする。うぜぇ。

「ねーねー。お話ししよー」

話をする前に、常識をわきまえて欲しい。

「では、世間体やお世辞についてお話ししましょうか」

と、目を完全に開いてそう言うと、当然のように目の前にはこちらを覗き込むようにして無邪気に笑う橘の顔があった。

全く、子供かよ。

「世間体とか知ってるしー。あれでしょ?あれあれ」

「あれあれ。なんて、言ってる時点でわかってません」

きっぱり否定してやると、彼女はつまらなそうに顔をしかめた。

なんて、話をしていたら学校に着いていた。

結局、寝なかったな。

「春樹ー。ありがと」

橘は俺の耳元で囁くようにそう言った。

全く、馴れ馴れしい女だ。

だけど、まあ、つまらなくはなかったな。

*******

帰るまでが合宿です。みたいな、絶対に使われるであろうその一言を年のいった先生からいただいて、解散となった。

俺と姉と柏木は同じ方面だからと言う理由で一緒に帰っていた。

帰路につくと、なんだか懐かしい感じである。

「ねね!春樹。あの子と何話してたの?」

馬鹿姉さんがそんなことを訊いてきた。

「あの子とは誰だ?名前を出せ」

「知らない。バスで話してたじゃん」

多分、橘のことを言っているのだろう。

「あー。変な奴だったなー」

適当に流すようにそう言っておくと、柏木がいつになく元気がないことに気がついた。

結構歩いてきたが一言も話さない。

「どうした?柏木」

「えっ?な、なに?別になんでもないわよっ!」

なんでもねえ奴の反応ではないんだよな。喧嘩をしてるわけではないけど、なんか、どこか彼女との距離が遠い気がする。

「なんか悩み事か?俺には隠し事は出来んぞ?なんていったって幼馴染だからな」

「あんたにだけは知られたくないのに……ばか」

そう呟くように小声でそう言うと、柏木は重たい荷物を持って走り去っていった。

彼女との距離は離れていく一方だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

迷子を助けたら生徒会長の婚約者兼女の子のパパになったけど別れたはずの彼女もなぜか近づいてくる

九戸政景
恋愛
新年に初詣に来た父川冬矢は、迷子になっていた頼母木茉莉を助け、従姉妹の田母神真夏と知り合う。その後、真夏と再会した冬矢は真夏の婚約者兼茉莉の父親になってほしいと頼まれる。 ※こちらは、カクヨムやエブリスタでも公開している作品です。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

隣人はクールな同期でした。

氷萌
恋愛
それなりに有名な出版会社に入社して早6年。 30歳を前にして 未婚で恋人もいないけれど。 マンションの隣に住む同期の男と 酒を酌み交わす日々。 心許すアイツとは ”同期以上、恋人未満―――” 1度は愛した元カレと再会し心を搔き乱され 恋敵の幼馴染には刃を向けられる。 広報部所属 ●七星 セツナ●-Setuna Nanase-(29歳) 編集部所属 副編集長 ●煌月 ジン●-Jin Kouduki-(29歳) 本当に好きな人は…誰? 己の気持ちに向き合う最後の恋。 “ただの恋愛物語”ってだけじゃない 命と、人との 向き合うという事。 現実に、なさそうな だけどちょっとあり得るかもしれない 複雑に絡み合う人間模様を描いた 等身大のラブストーリー。

これって政略結婚じゃないんですか? ー彼が指輪をしている理由ー

小田恒子
恋愛
この度、幼馴染とお見合いを経て政略結婚する事になりました。 でも、その彼の左手薬指には、指輪が輝いてます。 もしかして、これは本当に形だけの結婚でしょうか……? 表紙はぱくたそ様のフリー素材、フォントは簡単表紙メーカー様のものを使用しております。 全年齢作品です。 ベリーズカフェ公開日 2022/09/21 アルファポリス公開日 2025/06/19 作品の無断転載はご遠慮ください。

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

【完結】1日1回のキスをしよう 〜対価はチョコレートで 〜

田沢みん
恋愛
ハナとコタローは、 お隣同士の幼馴染。 親から甘いもの禁止令を出されたハナがコタローにチョコレートをせがんだら、 コタローがその対価として望んだのは、 なんとキス。 えっ、 どういうこと?! そして今日もハナはチョコを受け取りキスをする。 このキスは対価交換。 それ以外に意味はない…… はずだけど……。 理想の幼馴染み発見! これは、 ちょっとツンデレで素直じゃないヒロインが、イケメンモテ男、しかも一途で尽くし属性の幼馴染みと恋人に変わるまでの王道もの青春ラブストーリーです。 *本編完結済み。今後は不定期で番外編を追加していきます。 *本作は『小説家になろう』でも『沙和子』名義で掲載しています。 *イラストはミカスケ様です。

処理中です...