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十二話
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【俺の妹になってください】
十二話
~ あらすじ ~
合宿二日目。一日目同様に甘い嬌声が聞けるかと思いウキウキして湯船に浸かると、柏木の今の本音を聞いてしまい………
*****
昼まで自由行動とか行ったくせに、起きたらもう昼だった。
なんで誰も起こしてくれないの?
そして、帰りのバスに乗り込む。
バスの中は俺のように寝すぎて眠りにつけない奴と、朝早く起きて遊び疲れている柏木のような奴もいる。
ほとんど半々くらいだ。
確かに、全体を見れば半々かもしれないが、ここ、今俺の座っている場所から見てみると、半々とかそんな割合ではない。俺以外の班全員が寝ていた。
バス内の席位置も班ごとだ。だから、話せる人間はいない。
そして、このバスの縦横の揺れ。眠れるわけがない。姉さんがよくわからないルートでここまで来てしまったがために、俺は二つ並びの席の脇から飛び出すように出てくる、いかにもちゃっちい緊急用の椅子みたいな席に移ったのだ。
「ね、ねえ………」
「なに?」
右側に座っていた女子が話しかけて来た。見覚えはないが、何処かで聞いた声だった。左側は四班の一行がいるがみんな夢の中。壊滅状態である。だが、それに負けず劣らずでこいつの班の奴らも皆ぐっすり夢の中に落ちていた。
「あのー。名前わかる?」
その見知らぬ美人さんは、そう訊いてきた。
「あ、あっははー」
俺は苦笑いを浮かべることしかできなかった。
「わかんないか。まあ、仕方ないよね。話したことないもんね」
彼女も苦笑を浮かべた。
「私は、橘 凛(たちばな りん)」
「あー。柏木と話してた」
「そ、そうだったかな?」
そして、だんまりが続く。
「ご、ごめんねー。気まずいよねー」
ふふ。と、笑いながらも彼女はそう言う。
「あ、あぁ。うん」
しかし、美人だ。金髪のを肩につくくらいまでに伸ばして、毛先を緩やかに縦カールさせ、蹴ったりしたらしなやかでいたそうな美脚を前にだし、柏木に少しくらい分け与えてあげたいほどのスタイル。顔だってかなり整っている。そんな社長令嬢みたいな美人がなんだって俺に話しかけてくるんだ?可愛さだけで言ったら柏木と三ヶ森たんと変わらないレベルだ。
「そっかー。そうだよねー。じゃ、名前、覚えてもらうよ?」
彼女は相変わらず笑っていた。だが、その微笑みには確実に殺意のようなものがあった。
「う、うん」
「なに?怖い?」
怖い。怖いですが、そんなことを言ってしまったらなんというか、首が飛びそうなので笑って誤魔化してみた。
「じゃ、再度自己紹介するね。私は橘凛」
二度目の自己紹介を受けて俺はとりあえず、一度目にしてなかった自己紹介を返しておいた。
「あー。君、春樹って言うんだね。初めて知ったよ」
「そう?」
笑顔を崩さない彼女に俺は適当に愛想笑いを浮かべて返す。すごいやりにくい。このタイプの人間は少し、いや、かなり苦手だ。
「ねえねえ、なんか、話そうよ」
「なにを?」
「なんかー」
「そんなことを言われて話題を提示出来る人間なんていません。居るならば俺の前に連れてきてみてください」
「あっははー。それもそっかー。つまらないね」
満面の笑顔でそう言う彼女に魅入ってしまって、俺は言葉を忘れていた。
「なに?どうしたの?何か私の顔についてる?」
「いや、別になにもない。というか、俺寝ていい?」
「寝れるの?」
「まあ、寝るさ」
話すより眠るふりをして居る方がマシだ。
「あっそー。じゃ、おやすみー」
そう言われて「おやすみ」と返して俺は瞼を閉じて眠りにつく。
まぶたは閉じたのだが、眠れる気がしない。寝れるわけがない。視線が気になるんだもの。
まぶたをゆっくりと開き、寝ていますよっていうギリギリのラインまで目を開いて、前を見ると、そこには顔があった。誰のかはわからないが、確かに人間の顔があった。
「あっ!起きてる」
嬉々の声をあげるさっきのめんどくさい人間の声がする。うぜぇ。
「ねーねー。お話ししよー」
話をする前に、常識をわきまえて欲しい。
「では、世間体やお世辞についてお話ししましょうか」
と、目を完全に開いてそう言うと、当然のように目の前にはこちらを覗き込むようにして無邪気に笑う橘の顔があった。
全く、子供かよ。
「世間体とか知ってるしー。あれでしょ?あれあれ」
「あれあれ。なんて、言ってる時点でわかってません」
きっぱり否定してやると、彼女はつまらなそうに顔をしかめた。
なんて、話をしていたら学校に着いていた。
結局、寝なかったな。
「春樹ー。ありがと」
橘は俺の耳元で囁くようにそう言った。
全く、馴れ馴れしい女だ。
だけど、まあ、つまらなくはなかったな。
*******
帰るまでが合宿です。みたいな、絶対に使われるであろうその一言を年のいった先生からいただいて、解散となった。
俺と姉と柏木は同じ方面だからと言う理由で一緒に帰っていた。
帰路につくと、なんだか懐かしい感じである。
「ねね!春樹。あの子と何話してたの?」
馬鹿姉さんがそんなことを訊いてきた。
「あの子とは誰だ?名前を出せ」
「知らない。バスで話してたじゃん」
多分、橘のことを言っているのだろう。
「あー。変な奴だったなー」
適当に流すようにそう言っておくと、柏木がいつになく元気がないことに気がついた。
結構歩いてきたが一言も話さない。
「どうした?柏木」
「えっ?な、なに?別になんでもないわよっ!」
なんでもねえ奴の反応ではないんだよな。喧嘩をしてるわけではないけど、なんか、どこか彼女との距離が遠い気がする。
「なんか悩み事か?俺には隠し事は出来んぞ?なんていったって幼馴染だからな」
「あんたにだけは知られたくないのに……ばか」
そう呟くように小声でそう言うと、柏木は重たい荷物を持って走り去っていった。
彼女との距離は離れていく一方だ。
十二話
~ あらすじ ~
合宿二日目。一日目同様に甘い嬌声が聞けるかと思いウキウキして湯船に浸かると、柏木の今の本音を聞いてしまい………
*****
昼まで自由行動とか行ったくせに、起きたらもう昼だった。
なんで誰も起こしてくれないの?
そして、帰りのバスに乗り込む。
バスの中は俺のように寝すぎて眠りにつけない奴と、朝早く起きて遊び疲れている柏木のような奴もいる。
ほとんど半々くらいだ。
確かに、全体を見れば半々かもしれないが、ここ、今俺の座っている場所から見てみると、半々とかそんな割合ではない。俺以外の班全員が寝ていた。
バス内の席位置も班ごとだ。だから、話せる人間はいない。
そして、このバスの縦横の揺れ。眠れるわけがない。姉さんがよくわからないルートでここまで来てしまったがために、俺は二つ並びの席の脇から飛び出すように出てくる、いかにもちゃっちい緊急用の椅子みたいな席に移ったのだ。
「ね、ねえ………」
「なに?」
右側に座っていた女子が話しかけて来た。見覚えはないが、何処かで聞いた声だった。左側は四班の一行がいるがみんな夢の中。壊滅状態である。だが、それに負けず劣らずでこいつの班の奴らも皆ぐっすり夢の中に落ちていた。
「あのー。名前わかる?」
その見知らぬ美人さんは、そう訊いてきた。
「あ、あっははー」
俺は苦笑いを浮かべることしかできなかった。
「わかんないか。まあ、仕方ないよね。話したことないもんね」
彼女も苦笑を浮かべた。
「私は、橘 凛(たちばな りん)」
「あー。柏木と話してた」
「そ、そうだったかな?」
そして、だんまりが続く。
「ご、ごめんねー。気まずいよねー」
ふふ。と、笑いながらも彼女はそう言う。
「あ、あぁ。うん」
しかし、美人だ。金髪のを肩につくくらいまでに伸ばして、毛先を緩やかに縦カールさせ、蹴ったりしたらしなやかでいたそうな美脚を前にだし、柏木に少しくらい分け与えてあげたいほどのスタイル。顔だってかなり整っている。そんな社長令嬢みたいな美人がなんだって俺に話しかけてくるんだ?可愛さだけで言ったら柏木と三ヶ森たんと変わらないレベルだ。
「そっかー。そうだよねー。じゃ、名前、覚えてもらうよ?」
彼女は相変わらず笑っていた。だが、その微笑みには確実に殺意のようなものがあった。
「う、うん」
「なに?怖い?」
怖い。怖いですが、そんなことを言ってしまったらなんというか、首が飛びそうなので笑って誤魔化してみた。
「じゃ、再度自己紹介するね。私は橘凛」
二度目の自己紹介を受けて俺はとりあえず、一度目にしてなかった自己紹介を返しておいた。
「あー。君、春樹って言うんだね。初めて知ったよ」
「そう?」
笑顔を崩さない彼女に俺は適当に愛想笑いを浮かべて返す。すごいやりにくい。このタイプの人間は少し、いや、かなり苦手だ。
「ねえねえ、なんか、話そうよ」
「なにを?」
「なんかー」
「そんなことを言われて話題を提示出来る人間なんていません。居るならば俺の前に連れてきてみてください」
「あっははー。それもそっかー。つまらないね」
満面の笑顔でそう言う彼女に魅入ってしまって、俺は言葉を忘れていた。
「なに?どうしたの?何か私の顔についてる?」
「いや、別になにもない。というか、俺寝ていい?」
「寝れるの?」
「まあ、寝るさ」
話すより眠るふりをして居る方がマシだ。
「あっそー。じゃ、おやすみー」
そう言われて「おやすみ」と返して俺は瞼を閉じて眠りにつく。
まぶたは閉じたのだが、眠れる気がしない。寝れるわけがない。視線が気になるんだもの。
まぶたをゆっくりと開き、寝ていますよっていうギリギリのラインまで目を開いて、前を見ると、そこには顔があった。誰のかはわからないが、確かに人間の顔があった。
「あっ!起きてる」
嬉々の声をあげるさっきのめんどくさい人間の声がする。うぜぇ。
「ねーねー。お話ししよー」
話をする前に、常識をわきまえて欲しい。
「では、世間体やお世辞についてお話ししましょうか」
と、目を完全に開いてそう言うと、当然のように目の前にはこちらを覗き込むようにして無邪気に笑う橘の顔があった。
全く、子供かよ。
「世間体とか知ってるしー。あれでしょ?あれあれ」
「あれあれ。なんて、言ってる時点でわかってません」
きっぱり否定してやると、彼女はつまらなそうに顔をしかめた。
なんて、話をしていたら学校に着いていた。
結局、寝なかったな。
「春樹ー。ありがと」
橘は俺の耳元で囁くようにそう言った。
全く、馴れ馴れしい女だ。
だけど、まあ、つまらなくはなかったな。
*******
帰るまでが合宿です。みたいな、絶対に使われるであろうその一言を年のいった先生からいただいて、解散となった。
俺と姉と柏木は同じ方面だからと言う理由で一緒に帰っていた。
帰路につくと、なんだか懐かしい感じである。
「ねね!春樹。あの子と何話してたの?」
馬鹿姉さんがそんなことを訊いてきた。
「あの子とは誰だ?名前を出せ」
「知らない。バスで話してたじゃん」
多分、橘のことを言っているのだろう。
「あー。変な奴だったなー」
適当に流すようにそう言っておくと、柏木がいつになく元気がないことに気がついた。
結構歩いてきたが一言も話さない。
「どうした?柏木」
「えっ?な、なに?別になんでもないわよっ!」
なんでもねえ奴の反応ではないんだよな。喧嘩をしてるわけではないけど、なんか、どこか彼女との距離が遠い気がする。
「なんか悩み事か?俺には隠し事は出来んぞ?なんていったって幼馴染だからな」
「あんたにだけは知られたくないのに……ばか」
そう呟くように小声でそう言うと、柏木は重たい荷物を持って走り去っていった。
彼女との距離は離れていく一方だ。
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