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三十四話
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【俺の妹になってください】
三十四話
~ あらすじ ~
柏木は遅れてだがプールに来た。でも、柏木の様子が優しかったりして、いろいろとおかしい。
******
「なんで俺を引き上げてくれたんだ?」
純粋に気になって訊いてみると、山口と三ヶ森さんは勝負を柏木に止められたとかでまた勝負し始めて、柏木はつまらなくなったからと、俺を引き上げたということだった。
どこに行くかも知らないが、とりあえず柏木の横を歩く。でも、もう水の中には入りたくねえけどな……
「風見。泳いでどうだった?」
「もう五年はプール行かなくてもいいかな?」
「ねえ、風見」
俺のボケを綺麗に受け流され結構辛辣になったので、もう一回ボケをかましてみる。
「明日は海とかいうんじゃないだろうな?」
「…………風見ってさ?三ヶ森さんのこと好きでしょ?」
「あぁ!好きだよ?」
妹として大好きだ。可愛くて仕方ない。
というかなんでここまでスルーされるんだろ。泣きそう。
「………そう」
「なんでそんなしょぼくれるんだ?」
「別にしょぼくれてなんかないっ!!」
「そうなのか?」
「そうなの!」
そして、柏木はまたずんずんと歩き始めた。
*******
柏木に連れられて勝負をしてる二人のところに戻ると、そこには二人の姿はなかった。
「どこいったんだろ?」
「さあなー」
「あ、おふたりさーんっ!」
と、癒し系ボイスが聞こえた。そっちを振り向くと二人が休憩所のようなところで座って片手にペットボトルを持っていた。多分休憩中なのだろう。もう片手で可愛い俺の妹がこっちに向かって大きくてを振っている。
これは振り返すしかない。
手を挙げた瞬間、俺の方に電流走るっ!!!
「痛ってぇ!!!」
「ど、どうしたの?」
「俺…………四十肩かもしれねえ」
「風見爺ちゃん?聞こえる?」
「介護はいらんっ!!」
そんなことをしながらも、俺らはそっちの休憩所に無事着いた。
「大丈夫ですか?なんか、叫んでましたけど……」
「まあ、問題ないさ」
君達の俺への罰ゲームで、体はボロボロだがな。
「二人共、お昼休みにしませんか?」
恥ずかしそうに頬を赤らめて三ヶ森さんがサンドウィッチを差し出してきた。
「………これって、誰が作ったの?」
「私………です」
「おお!そうなの?ありがとうっ!」
恥ずかしそうにいう三ヶ森さんが可愛いがその横で俺には向けない純粋な笑顔で柏木がそんなことをいいやがって……ちくしょう。不覚にも可愛いと思ってしまった……
「いえいえっ!」
「どれどれ?」
柏木がサンドウィッチをつまみ、唸りを上げた。
「うぅ~ん!うまいっ!!」
「美味いですよね!」
そんな会話が飛び交う。
「あ、ありがとうございますっ!」
柏木があんなに歓喜するとは………どれどれ……
「うめぇ………」
自然と言葉が漏れた。手で掴んだだけでもわかるもちもちのバンズに挟まれたハムと卵が口の中で踊る。
「こりゃー。いいお嫁さんになるなぁ」
「そ、そうですかねー」
なんて照れながらいう三ヶ森さんはやっぱり可愛かった。
******
少し遅い昼飯を食べ終わり、腹ごなしに少しプールで泳ぐことになった。
「なぁ、というか、柏木」
「なに?」
「お前泳げるようになったのか?浮き輪も持ってないようだけど………」
「うっさいわねっ!!泳げなくてもいいでしょ?」
柏木の弱点といえばカナヅチ。このくらいだ。
「あ、そうなんですか?」
「うん。かなり昔からな……」
「なら、風見くん。教えてあげればいいんじゃないですか?」
横にいた妹が急になんか言った。
「………え?」
教えるなんてとんでもない。俺があのバタ足で何度死にかけたか。
「教えたいなら?………まあ、べ、別に、教わらなくもないけど?」
…………横に俺の知らない女の子がいる。いや、柏木ってことはわかるけど、これは柏木じゃない。ってことは知らない人なのか?いや、知ってるけど………って、あれ?
「お、おう…………仕方ねえな…………」
本当に調子狂う………
飯を食って少し休んだからかそれなりに回復したのは良かったのだが、なんだか眠い。
「で?何からやればいいの?」
水に入った柏木が俺のことを見上げている。なんか、いいなぁ。
「あー?うん。じゃ、そこ掴んで一人でバタ足してみて」
「わ、わかった………」
柏木がバタ足し始めると、バチンバチンと水を叩く音と噴水みたいに上がる水しぶき。ほんと脚力だけはあるな。
あんなのに蹴られてると思うとゾッとするぜ………
「風見?これずっとしてればいいの?」
「ふぁ………眠い」
「風見!!」
「あ、何?」
柏木は無言で練習をやめ、俺の足を掴んだ。
「なんだよ?」
「死ねぇ!!」
「水だけに水爆固めはやべえってぇぇ!!!」
ばっしゃーんっ!!
このプール………足つくはずなのに深いっ!!
足も腕もボロボロな俺はもがくことも出来ないで、どんどんと水中に落ちていく。
ほ、本当に死ぬ………
*******
「………だい………で……か?」
「大丈夫ですか!?」
朦朧とした意識の中、大声が聞こえてきた。うっすらと目を開けると、必死に呼びかけていたのは、ガタイのいいライフセイバーさんだった。
「あ、あぁ………はい」
「はぁ……よかったです。とりあえず今日のところはお家でゆっくりするといいですよ」
「は、はい…………ありがとうございます………」
俺はプールサイドに横にされて、応急処置してる時に目覚めれたって感じか………
でも、確か俺を助けたのって柏木じゃないのか?
溺れて意識を失う前に見たのは確か、柏木だった。
ライフセイバーさんに訊けば分かるか。
そう思い立ち上がり、立ち上がりそっちへ行こうとすると知った声が聞こえてきた。
「おーい!!風見くんっ!大丈夫かい?」
「あ、あぁ山口か。この通り大丈夫だ」
「風見くん!私もいるよっ!」
「あー。三ヶ森さん。元気?」
「うん。元気………じゃないよっ!!大丈夫なの?」
「あぁ。大丈夫だよ」
「そっかー。なら、よかった………」
「心配かけたね。ごめん……」
「いやいや、舞ちゃんが深刻な顔して…って、舞ちゃん?」
柏木の姿はここにはなかった。
あいつの性格上、これからの行動は帰る。それ以外ない。確証なんてないがなんとなくわかる。
「でも、今日は帰れってさ。ごめん……」
「そうですか……安静にしてくださいね」
「うん。そうさせてもらうよ」
*****
二人から別れた後すぐに俺は着替えを済まして、出口前を見張り始めた。
それから十分くらいしてなんか、変なやつが出てきた。
目立たないような格好に帽子を深くかぶり、マスクにサングラスをしてる小さい子。いや、柏木だ。
「おい、柏木!」
「げっ!!」
「お、おいっ!なんで逃げるんだよ」
逃げる柏木を追い、そのまま外へ出るとポツポツと雨が降り始めていた。
「逃げんなってっ!」
腕を強引に掴んでそう言うと、柏木は冷たい目で、無表情でこう言った。
「…………離して」
「離してもいいが………逃げないか?」
無言で柏木は頷いた。
「ここで話すのはどうかと思うし、俺ん家で少し話さないか?いろいろ………あったろ?」
「………話すことなんてない」
「お前に無くても俺にあるっ!だから黙ってその物調ズラでもいいから着いてこいっ!!」
それから柏木を家に連れ帰る。
でも、何も言わない。
「お茶でいいよな?」
「……うん」
茶を二つ用意し、柏木の正面に腰かけた。
「はいよ。お茶」
「ありがとう……」
「早速だが、本題に入るぞー」
柏木は何も言わないが話だけは聞いてくれるって顔をしていた。
「…………ごめん」
「……え?」
「なぁ、これで水に流してくれないか?」
これで終わり。喧嘩なんて全部これでいつも通り終わるんだ。
「…………無理。ムリだよ…………」
「………無理?なんで?」
いつもこれで終わるのに、柏木からの許しが出なかった。
「ねえ、覚えてる?中二の頃の喧嘩のこと」
「あぁ………」
忘れる訳が無い。どうでもいいような喧嘩だったのにまさかあんなに気まずくなるなんてって、かなり後悔したもんな…………
「あの時も謝ってくれたよね?」
「まあな……」
「今回だって同じ。私が悪いのに風見が謝る。………なんで?今回に至っては私の悪ふざけで死にかけたんだよ?なのになんで私とまだ関わろうとするの?家にまで呼んでさ?私とつるんでいたってろくなことないじゃない……」
「お前らしくねえな。そんなこと言うなんて」
「え?」
柏木がキョトンとした顔をしてこちらを首を傾げて見ている。
「俺の知ってる柏木舞はそんな奴じゃねえっ!!」
「………本当の私なんてこんなもんよ。結局強がりでしかないのよ………」
「自虐ネタだ?はっ!全然笑えねえっ!お前どこまで落ちるんだよ。俺の知ってる柏木はな。人のことも考えねえで自分勝手に俺を引っ張っていくそんな強引な女だ。何か言われれば口より先に手が出るようなそんなやつだ。そんなやつが今更謝ったって遅いんだよっ!!」
「……………私が来たせいで死にかけたんだよ?私がそもそも来なければ………」
「黙れっ!!人は人と関わった時点で迷惑をかけるんだ。それを許せるか許せないかでその人の相性は決まるんだよ。俺が許せるなら許せるんだ。だからお前は何も気にしなくていいんだっ!」
「……………そんな……無理。無理だよ。私は風見が思ってるほど強くなんてない。ただの高校一年の女子でしかないんだから………」
「お前が女子を語るなっ!!普通の女の子ってのはな。男子を殴ったりはしたりしねえんだよっ!!お前はなんだ?天下の柏木様だろ?なのにそんな下向きでどうするんだ?いつものお前はどこにいるんだよっ!!」
無我夢中で吠えていて、全然気が付かなかったが柏木はポロポロと泣いていた。
し、しまった………俺もついカッとなっちまって強く言いすぎた………
「………なんで?なんでよ………なんで私のためになんでそこまで熱くなれるの?」
「…………そりゃー。幼馴染みだから?それに、お前俺のこと助けてくれただろ?」
「……………な、なんで知ってるの?」
「なんとなくさ。お前が俺を見捨ててどっかに行く訳ねえからな」
「そんな理由なの?」
「あぁ。俺は人を見る目だけはあるとは思ってるからな。そんな俺の幼馴染みがいいやつじゃない訳がないからな」
「キモいわ……かなり背筋がゾッとしたわ。変態ね……」
柏木は袖で涙を拭うと、鋭い目つきでこちらを睨んできた。いつもの柏木のものだった。いつ見ても怖いぜ。
「……………ひどい言われようだな」
でも、こういう柏木の方がやっぱりいいな。
「でも、あんたのそういうところ嫌い………じゃ無いわよ」
そう言って柏木はお茶を一気に飲み干した。
「私が今回は悪かったわ。風見は悪くない。だから、ごめん」
「それについてはもうとっくに許してるが………なんでだ?」
「え?」
「なんで急にキレ始めたんだ?」
「…………そ、それは………べ、別になんだっていいでしょ?私だって女の子だもん。謎の一つや二つくらいあっていいでしょ?」
「そんなもんか?」
「そうよ。じゃ、わたしはそろそろお暇するわ。またね。風見」
「おう。またな柏木」
柏木を玄関まで見送って、この話は終わった。
次回に続くっ!!
三十四話
~ あらすじ ~
柏木は遅れてだがプールに来た。でも、柏木の様子が優しかったりして、いろいろとおかしい。
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「なんで俺を引き上げてくれたんだ?」
純粋に気になって訊いてみると、山口と三ヶ森さんは勝負を柏木に止められたとかでまた勝負し始めて、柏木はつまらなくなったからと、俺を引き上げたということだった。
どこに行くかも知らないが、とりあえず柏木の横を歩く。でも、もう水の中には入りたくねえけどな……
「風見。泳いでどうだった?」
「もう五年はプール行かなくてもいいかな?」
「ねえ、風見」
俺のボケを綺麗に受け流され結構辛辣になったので、もう一回ボケをかましてみる。
「明日は海とかいうんじゃないだろうな?」
「…………風見ってさ?三ヶ森さんのこと好きでしょ?」
「あぁ!好きだよ?」
妹として大好きだ。可愛くて仕方ない。
というかなんでここまでスルーされるんだろ。泣きそう。
「………そう」
「なんでそんなしょぼくれるんだ?」
「別にしょぼくれてなんかないっ!!」
「そうなのか?」
「そうなの!」
そして、柏木はまたずんずんと歩き始めた。
*******
柏木に連れられて勝負をしてる二人のところに戻ると、そこには二人の姿はなかった。
「どこいったんだろ?」
「さあなー」
「あ、おふたりさーんっ!」
と、癒し系ボイスが聞こえた。そっちを振り向くと二人が休憩所のようなところで座って片手にペットボトルを持っていた。多分休憩中なのだろう。もう片手で可愛い俺の妹がこっちに向かって大きくてを振っている。
これは振り返すしかない。
手を挙げた瞬間、俺の方に電流走るっ!!!
「痛ってぇ!!!」
「ど、どうしたの?」
「俺…………四十肩かもしれねえ」
「風見爺ちゃん?聞こえる?」
「介護はいらんっ!!」
そんなことをしながらも、俺らはそっちの休憩所に無事着いた。
「大丈夫ですか?なんか、叫んでましたけど……」
「まあ、問題ないさ」
君達の俺への罰ゲームで、体はボロボロだがな。
「二人共、お昼休みにしませんか?」
恥ずかしそうに頬を赤らめて三ヶ森さんがサンドウィッチを差し出してきた。
「………これって、誰が作ったの?」
「私………です」
「おお!そうなの?ありがとうっ!」
恥ずかしそうにいう三ヶ森さんが可愛いがその横で俺には向けない純粋な笑顔で柏木がそんなことをいいやがって……ちくしょう。不覚にも可愛いと思ってしまった……
「いえいえっ!」
「どれどれ?」
柏木がサンドウィッチをつまみ、唸りを上げた。
「うぅ~ん!うまいっ!!」
「美味いですよね!」
そんな会話が飛び交う。
「あ、ありがとうございますっ!」
柏木があんなに歓喜するとは………どれどれ……
「うめぇ………」
自然と言葉が漏れた。手で掴んだだけでもわかるもちもちのバンズに挟まれたハムと卵が口の中で踊る。
「こりゃー。いいお嫁さんになるなぁ」
「そ、そうですかねー」
なんて照れながらいう三ヶ森さんはやっぱり可愛かった。
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少し遅い昼飯を食べ終わり、腹ごなしに少しプールで泳ぐことになった。
「なぁ、というか、柏木」
「なに?」
「お前泳げるようになったのか?浮き輪も持ってないようだけど………」
「うっさいわねっ!!泳げなくてもいいでしょ?」
柏木の弱点といえばカナヅチ。このくらいだ。
「あ、そうなんですか?」
「うん。かなり昔からな……」
「なら、風見くん。教えてあげればいいんじゃないですか?」
横にいた妹が急になんか言った。
「………え?」
教えるなんてとんでもない。俺があのバタ足で何度死にかけたか。
「教えたいなら?………まあ、べ、別に、教わらなくもないけど?」
…………横に俺の知らない女の子がいる。いや、柏木ってことはわかるけど、これは柏木じゃない。ってことは知らない人なのか?いや、知ってるけど………って、あれ?
「お、おう…………仕方ねえな…………」
本当に調子狂う………
飯を食って少し休んだからかそれなりに回復したのは良かったのだが、なんだか眠い。
「で?何からやればいいの?」
水に入った柏木が俺のことを見上げている。なんか、いいなぁ。
「あー?うん。じゃ、そこ掴んで一人でバタ足してみて」
「わ、わかった………」
柏木がバタ足し始めると、バチンバチンと水を叩く音と噴水みたいに上がる水しぶき。ほんと脚力だけはあるな。
あんなのに蹴られてると思うとゾッとするぜ………
「風見?これずっとしてればいいの?」
「ふぁ………眠い」
「風見!!」
「あ、何?」
柏木は無言で練習をやめ、俺の足を掴んだ。
「なんだよ?」
「死ねぇ!!」
「水だけに水爆固めはやべえってぇぇ!!!」
ばっしゃーんっ!!
このプール………足つくはずなのに深いっ!!
足も腕もボロボロな俺はもがくことも出来ないで、どんどんと水中に落ちていく。
ほ、本当に死ぬ………
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「………だい………で……か?」
「大丈夫ですか!?」
朦朧とした意識の中、大声が聞こえてきた。うっすらと目を開けると、必死に呼びかけていたのは、ガタイのいいライフセイバーさんだった。
「あ、あぁ………はい」
「はぁ……よかったです。とりあえず今日のところはお家でゆっくりするといいですよ」
「は、はい…………ありがとうございます………」
俺はプールサイドに横にされて、応急処置してる時に目覚めれたって感じか………
でも、確か俺を助けたのって柏木じゃないのか?
溺れて意識を失う前に見たのは確か、柏木だった。
ライフセイバーさんに訊けば分かるか。
そう思い立ち上がり、立ち上がりそっちへ行こうとすると知った声が聞こえてきた。
「おーい!!風見くんっ!大丈夫かい?」
「あ、あぁ山口か。この通り大丈夫だ」
「風見くん!私もいるよっ!」
「あー。三ヶ森さん。元気?」
「うん。元気………じゃないよっ!!大丈夫なの?」
「あぁ。大丈夫だよ」
「そっかー。なら、よかった………」
「心配かけたね。ごめん……」
「いやいや、舞ちゃんが深刻な顔して…って、舞ちゃん?」
柏木の姿はここにはなかった。
あいつの性格上、これからの行動は帰る。それ以外ない。確証なんてないがなんとなくわかる。
「でも、今日は帰れってさ。ごめん……」
「そうですか……安静にしてくださいね」
「うん。そうさせてもらうよ」
*****
二人から別れた後すぐに俺は着替えを済まして、出口前を見張り始めた。
それから十分くらいしてなんか、変なやつが出てきた。
目立たないような格好に帽子を深くかぶり、マスクにサングラスをしてる小さい子。いや、柏木だ。
「おい、柏木!」
「げっ!!」
「お、おいっ!なんで逃げるんだよ」
逃げる柏木を追い、そのまま外へ出るとポツポツと雨が降り始めていた。
「逃げんなってっ!」
腕を強引に掴んでそう言うと、柏木は冷たい目で、無表情でこう言った。
「…………離して」
「離してもいいが………逃げないか?」
無言で柏木は頷いた。
「ここで話すのはどうかと思うし、俺ん家で少し話さないか?いろいろ………あったろ?」
「………話すことなんてない」
「お前に無くても俺にあるっ!だから黙ってその物調ズラでもいいから着いてこいっ!!」
それから柏木を家に連れ帰る。
でも、何も言わない。
「お茶でいいよな?」
「……うん」
茶を二つ用意し、柏木の正面に腰かけた。
「はいよ。お茶」
「ありがとう……」
「早速だが、本題に入るぞー」
柏木は何も言わないが話だけは聞いてくれるって顔をしていた。
「…………ごめん」
「……え?」
「なぁ、これで水に流してくれないか?」
これで終わり。喧嘩なんて全部これでいつも通り終わるんだ。
「…………無理。ムリだよ…………」
「………無理?なんで?」
いつもこれで終わるのに、柏木からの許しが出なかった。
「ねえ、覚えてる?中二の頃の喧嘩のこと」
「あぁ………」
忘れる訳が無い。どうでもいいような喧嘩だったのにまさかあんなに気まずくなるなんてって、かなり後悔したもんな…………
「あの時も謝ってくれたよね?」
「まあな……」
「今回だって同じ。私が悪いのに風見が謝る。………なんで?今回に至っては私の悪ふざけで死にかけたんだよ?なのになんで私とまだ関わろうとするの?家にまで呼んでさ?私とつるんでいたってろくなことないじゃない……」
「お前らしくねえな。そんなこと言うなんて」
「え?」
柏木がキョトンとした顔をしてこちらを首を傾げて見ている。
「俺の知ってる柏木舞はそんな奴じゃねえっ!!」
「………本当の私なんてこんなもんよ。結局強がりでしかないのよ………」
「自虐ネタだ?はっ!全然笑えねえっ!お前どこまで落ちるんだよ。俺の知ってる柏木はな。人のことも考えねえで自分勝手に俺を引っ張っていくそんな強引な女だ。何か言われれば口より先に手が出るようなそんなやつだ。そんなやつが今更謝ったって遅いんだよっ!!」
「……………私が来たせいで死にかけたんだよ?私がそもそも来なければ………」
「黙れっ!!人は人と関わった時点で迷惑をかけるんだ。それを許せるか許せないかでその人の相性は決まるんだよ。俺が許せるなら許せるんだ。だからお前は何も気にしなくていいんだっ!」
「……………そんな……無理。無理だよ。私は風見が思ってるほど強くなんてない。ただの高校一年の女子でしかないんだから………」
「お前が女子を語るなっ!!普通の女の子ってのはな。男子を殴ったりはしたりしねえんだよっ!!お前はなんだ?天下の柏木様だろ?なのにそんな下向きでどうするんだ?いつものお前はどこにいるんだよっ!!」
無我夢中で吠えていて、全然気が付かなかったが柏木はポロポロと泣いていた。
し、しまった………俺もついカッとなっちまって強く言いすぎた………
「………なんで?なんでよ………なんで私のためになんでそこまで熱くなれるの?」
「…………そりゃー。幼馴染みだから?それに、お前俺のこと助けてくれただろ?」
「……………な、なんで知ってるの?」
「なんとなくさ。お前が俺を見捨ててどっかに行く訳ねえからな」
「そんな理由なの?」
「あぁ。俺は人を見る目だけはあるとは思ってるからな。そんな俺の幼馴染みがいいやつじゃない訳がないからな」
「キモいわ……かなり背筋がゾッとしたわ。変態ね……」
柏木は袖で涙を拭うと、鋭い目つきでこちらを睨んできた。いつもの柏木のものだった。いつ見ても怖いぜ。
「……………ひどい言われようだな」
でも、こういう柏木の方がやっぱりいいな。
「でも、あんたのそういうところ嫌い………じゃ無いわよ」
そう言って柏木はお茶を一気に飲み干した。
「私が今回は悪かったわ。風見は悪くない。だから、ごめん」
「それについてはもうとっくに許してるが………なんでだ?」
「え?」
「なんで急にキレ始めたんだ?」
「…………そ、それは………べ、別になんだっていいでしょ?私だって女の子だもん。謎の一つや二つくらいあっていいでしょ?」
「そんなもんか?」
「そうよ。じゃ、わたしはそろそろお暇するわ。またね。風見」
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