『勇者リリアとレベル999のモフモフぬいぐるみ』 Eden Force Stories I(第一部)

風間玲央

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『第七話・1:魔神覚醒──999の手動で、断罪せよ』

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リリアの眼差しは、ゼル=ザカートを完全に射抜いていた。
黄金の光を帯びたその瞳は、深く、凍りつくほど冷たい。

「……お前、その眼……!」

ゼルが苦しげに吐き捨てる。
だが次の瞬間、怯えるように呻いた。

「……っ、その気配……今さっきまでの“リリア”じゃない……! あれは……“あの時”の……!」

リリア──いや、“颯太”の金の瞳が、すうっと細められる。

(うお、マジで見破られかけてる!? でも……これが最強ログイン演出の威圧力ってやつよ!)

「そう。私は“リリア”。でも……今の私は、それだけじゃないの」

(うわ、なにこのセリフ、自分で言ってて鳥肌立つわ! でも言いたくなるんだよな、こういうときは特に!!)

《──ログイン完了。戦闘AIモジュール起動要請中……》

(……来たな、“自動戦闘演出”。)

──《AI同期:開始要請──》

「……却下」

その一言で、聖域の空気が一変した。
天井の封印模様さえ震え、石畳の上に立つゼルが一瞬息を呑む。
静かな声の奥に、研ぎ澄まされた闘気が溶け込んでいた。
リリアは、ふっと目を伏せて剣を引いた。

(──AI補助なんか要らねぇ。“9999時間”以上のやり込みは、ダテじゃない!)
(操作、全部自分だ。自動補助? ノーサンキュー)
(いくぞ!久しぶりの本気だ!)

「さあ、続きを始めましょうか。──あなたの“未練”、切り裂いてあげる」

(……って俺、なんで女言葉でキメてんだよ!!恥ずかしいわ!!)

「貴様ァア!!」

ゼルの叫びとともに、雷光がほとばしる。
二撃目、三撃目──矢継ぎ早に繰り出される突き。
だがそのすべてが、“魔法大剣レヴァーティン・ゼロ”に弾かれていく。

金属が悲鳴を上げ、火花が散り、雷鳴が壁を震わせた。
火花の閃光に照らされたリリアの顔は微動だにせず、舞台の照明を浴びる役者のように静かだった。

「……なぜだ。あれほど力を積み重ねたというのに……なぜ、届かん……」

「……ねえ、“なぜ”って聞かれるの、あんまり好きじゃないのよね」

(今のトーン、めっちゃ強キャラっぽくね!?)

「だって、“理由”なんてどうでもいいから。……ただ、強い敵に勝つ。それだけでいい」

呼吸と同じ、自然に紡がれた言葉。
まるで“勝つために生まれた”者の声だった。

(見えるんだよ……ッ! こっちは“9999時間”以上やり込んできたんだ──お前とはレベルが違う!!)

リリアの剣が閃く。
ゼルの槍と激突し、雷と炎が交錯する。
閃光が神経を焼き、空気が爆ぜた。

「……ッ、この……小娘がッ……!!」

ゼルの槍が雷を纏って吠える。

だが次の瞬間──

世界が、わずかに止まった。
風が鳴らない。火花さえ凍りついた。

「──“遅い”」

リリアの声が静かに空気を裂いた。

──「斬」。
空気が、一文字の形で裂ける。
世界の膜が、刃に沿って軋む。
そして、音が遅れて追いついた。

一瞬後、風が爆ぜ、ゼルの右腕が肩口から吹き飛ぶ。
血しぶきが弧を描き、焼け焦げた槍が石畳を転がった。

「グゥアアアアアアッ!!」

血の匂いが濃く広がり、聖域の空気を赤く染める。
ゼルの瞳に宿ったのは怒りではなく、抗いようのない恐怖だった。
騎士として積み上げた年月も、雷鳴の誇りも──すべて“リリアの剣”に粉砕されていく。

リリアの剣先が、静かに下ろされた。
その所作は舞台のカーテンコールみたいに静謐だった。

「……もう、やめましょう。これ以上は──あなたが壊れるだけ」

(くぅ~~~今のセリフ、強キャラっぽさ120点!!俺の心臓バクバクで死にそうだ!!)

血に濡れたゼルの口から、震える吐息が漏れる。
それでも彼は執念を吐き捨てた。

「……まだ……終わらぬ……この雷が……我が魂ごと……お前を呪う……ッ!」

カラン……。
崩れた石片が転がる音が、聖域に不気味な余韻を落とす。

そして──

ドクン。

大地そのものが脈打った。
まるで床下に心臓が埋め込まれているかのように、石板が赤黒く震える。
血を吸った紋様が淡く光り、砕けた腕から滲み出す呪詛が地脈に染み込んでいく。

リリアの金の瞳がかすかに揺れた。
胸の奥に、微かな違和感。

(……ちょ……これ絶対“第二形態”あるパターンだろ!?)
(ゲージ出せゲージ!! あと頼むからBGM切り替えて!! 静かなのが一番怖ぇんだよ!!)

心臓が高鳴る。
だがその鼓動は、恐怖だけではなかった。

「……そうか。なら、ここからが本番ね」

黄金の瞳が、再び強く光を宿す。
リリアは、静かに息を吐いた。

(……いやマジで、俺の心臓が先に壊れるって!!)

聖域は沈黙せず、むしろ鼓動を増していた。
──次の鼓動が、新たな戦いの合図だった。

(……実際、汗だくで必死なのを誤魔化して、強がってるだけだからな!がんばれ俺!)
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