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『第五話・5 勇者邸、再建へ──そして翼はまだ眠る』
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──そして、甘い香りがようやく薄れた頃。
王は再び玉座の前に立ち、胸を張った。
どうやら“満足の余韻”では飽き足らなかったらしい。
「勇者リリアよ! よくぞこの国を、そして我がスイーツ庫を救った!」
(まだそこ!? もう“氷槍戦役”が“デザート戦争”みたいな扱いになってんじゃん!!)
王は重々しく手を広げ、後方の兵士が金色の箱を運んでくる。
「これは褒美である! 王都西区にある屋敷一棟、及び生活支援金十万リルを与える!」
セラフィーが小声で囁く。
「一応、貴族街よ。……まあ、戦で半壊してるけど。」
一瞬、沈黙。
(半壊!? 今それ小声で言うやつじゃないだろ!!)
「えっ……あ、ありがとうございます……!」
(いやちょっと待て。十万リルって、王国経済の単位的に微妙じゃね!? 感謝しなきゃいけないけど庶民感覚で“初期費用+敷金”くらいだぞ!?)
宰相が横から書簡を読み上げる。
「屋敷は、かつて“第一魔導卿”の別邸として使用されており──」
声にわずかな誇らしさが滲む。
「由緒正しき血筋と魔力の流れを受け継ぐ、歴史ある建造物にして──」
宰相が、ふと遠い目をして付け加えた。
「……かつて王が『全自動綿菓子製造魔法』の実験に失敗し、噴出したザラメの圧力で屋根が吹き飛び、壁面がキャラメルで固着して剥離した、曰く付きの物件にございます」
(糖害じゃねぇかぁぁぁ!! 戦火よりタチ悪いわ!! 建物の死因が「糖尿病」ってなんだよ!!)
「──が、戦火でも半壊しておる!」
「先にそんなこと言わないでぇぇぇぇ!!」
石造りの広間に、勇者の悲鳴が美しく反響した。
セラフィーが小声で肩を寄せる。
「一応、魔力流通の要所だから、再構築すれば使えるわよ。」
(使えるって、壊れた要塞が“まだ息ある”って言われてる感じじゃね!?)
(てか俺これ修繕じゃなくてリフォーム番組の主人公みたいになってない!?)
(次のクエスト“ビフォーアフター:勇者邸編”とかやめてくれよ!?)
ワン太がぴょこんと顔を出した。
何も言わず、ただじっとこちらを見る。
その目に浮かぶ“あきれ半分・諦め半分”の光が、全てを物語っていた。
(……ああ、わかってるよ。今回も“そういう”褒美だったんだな……)
(忘れてたぁぁ!! 甘味王からのプレゼント、当たり外れが極端すぎる!!)
王がにっこり笑って頷いた。
「さらに、余の特別な計らいで“再建用魔力”を下賜する。
好きに使うがよい! 夢を形にせよ!」
(うわぁ……この人の“好きに使え”って一番危ないやつだ!!)
セラフィーがぼそっと呟く。
「……多分、“使いすぎるとまたニュースになる”やつよ。」
(ほんとそれ!! “勇者リリア、再びバズる”の見出しが見える!!)
宰相が補足するように続けた。
「“再建用魔力”とは、想念を物質化し、建造物の形を取らせる王国特製の高位魔力です。
すなわち、思い描いた通りの邸宅を一瞬で創造できるのです。」
(……要するに“建物クラフト素材”じゃねぇか!!)
(名前めっちゃ荘厳なのに、やってることマイクラのクリエイティブモードだろこれ!!)
(てか“夢を形にせよ”って、建築失敗したら悪夢も形になるやつじゃん!!)
王が満足げにうなずき、玉座の後ろで魔力の光がきらめく。
リリアは乾いた笑顔を浮かべた。
「……あの、できれば取扱説明書つけてください……」
(そうだよ! “再建用”とか言ってるけど、絶対初心者向けじゃねぇだろ!!)
(建築スキルゼロの俺に与えるなよ、国がまた傾くぞ!?)
そのままリリアは礼をして退出するが、背中で王の声が響いた。
「そなたの屋敷が完成した暁には──国葬級のスイーツパーティを開こうではないか!」
(なんでまた食関係なんだよ!! この国、絶対血糖値で統治してるだろ!!)
宰相がすぐさま青ざめた顔で叫ぶ。
「陛下、それだけはっ……! 予算が砂糖で溶けます!!」
王はにこりと笑い、胸を張る。
「甘味に投資する国に、未来はある!」
(いや糖尿の未来しか見えねぇよ!!)
セラフィーが小さくため息をついた。
「……もう、“糖分経済圏”ね」
(やめろ、そのワード公式に採用されそうだからやめろ!!)
ブッくんがすでに筆を走らせていた。
「“勇者邸、再建へ──国家的パーティ開催決定”……っと。よし、フォントは全面銀箔仕上げだ。日光を反射して網膜を焼く『光害プレス』でいくぜ!」
(読ませる気ねーだろ!! 新聞開いた瞬間に目潰し食らうとか、もはや暗器だよ!!……お前、印刷所じゃなくて兵器工場にいろよ!!)
ワン太は横で無言のまま、
“どうせまた巻き込まれる”という顔でリリアの足元に座り込む。
リリアは額を押さえ、空を仰いだ。
(ああ……次の戦い、たぶんモンスターじゃなくて建築資材だな……)
(新クエスト:“石垣を積め!涙のDIY編”──開幕かよ!!)
「──勇者リリア、戦場を離れてなお混乱の渦中。建築家にジョブチェンジか?」
新聞の見出しが、頭の中に浮かんだ。
(……てかこれもう、建築シミュレーター編突入だろ!!)
――その瞬間、肩甲骨の奥で、ほんの一拍だけ、熱が脈打った。
……玉座の上で、王の指先が、誰にも気づかれず一度だけ止まった。
王は再び玉座の前に立ち、胸を張った。
どうやら“満足の余韻”では飽き足らなかったらしい。
「勇者リリアよ! よくぞこの国を、そして我がスイーツ庫を救った!」
(まだそこ!? もう“氷槍戦役”が“デザート戦争”みたいな扱いになってんじゃん!!)
王は重々しく手を広げ、後方の兵士が金色の箱を運んでくる。
「これは褒美である! 王都西区にある屋敷一棟、及び生活支援金十万リルを与える!」
セラフィーが小声で囁く。
「一応、貴族街よ。……まあ、戦で半壊してるけど。」
一瞬、沈黙。
(半壊!? 今それ小声で言うやつじゃないだろ!!)
「えっ……あ、ありがとうございます……!」
(いやちょっと待て。十万リルって、王国経済の単位的に微妙じゃね!? 感謝しなきゃいけないけど庶民感覚で“初期費用+敷金”くらいだぞ!?)
宰相が横から書簡を読み上げる。
「屋敷は、かつて“第一魔導卿”の別邸として使用されており──」
声にわずかな誇らしさが滲む。
「由緒正しき血筋と魔力の流れを受け継ぐ、歴史ある建造物にして──」
宰相が、ふと遠い目をして付け加えた。
「……かつて王が『全自動綿菓子製造魔法』の実験に失敗し、噴出したザラメの圧力で屋根が吹き飛び、壁面がキャラメルで固着して剥離した、曰く付きの物件にございます」
(糖害じゃねぇかぁぁぁ!! 戦火よりタチ悪いわ!! 建物の死因が「糖尿病」ってなんだよ!!)
「──が、戦火でも半壊しておる!」
「先にそんなこと言わないでぇぇぇぇ!!」
石造りの広間に、勇者の悲鳴が美しく反響した。
セラフィーが小声で肩を寄せる。
「一応、魔力流通の要所だから、再構築すれば使えるわよ。」
(使えるって、壊れた要塞が“まだ息ある”って言われてる感じじゃね!?)
(てか俺これ修繕じゃなくてリフォーム番組の主人公みたいになってない!?)
(次のクエスト“ビフォーアフター:勇者邸編”とかやめてくれよ!?)
ワン太がぴょこんと顔を出した。
何も言わず、ただじっとこちらを見る。
その目に浮かぶ“あきれ半分・諦め半分”の光が、全てを物語っていた。
(……ああ、わかってるよ。今回も“そういう”褒美だったんだな……)
(忘れてたぁぁ!! 甘味王からのプレゼント、当たり外れが極端すぎる!!)
王がにっこり笑って頷いた。
「さらに、余の特別な計らいで“再建用魔力”を下賜する。
好きに使うがよい! 夢を形にせよ!」
(うわぁ……この人の“好きに使え”って一番危ないやつだ!!)
セラフィーがぼそっと呟く。
「……多分、“使いすぎるとまたニュースになる”やつよ。」
(ほんとそれ!! “勇者リリア、再びバズる”の見出しが見える!!)
宰相が補足するように続けた。
「“再建用魔力”とは、想念を物質化し、建造物の形を取らせる王国特製の高位魔力です。
すなわち、思い描いた通りの邸宅を一瞬で創造できるのです。」
(……要するに“建物クラフト素材”じゃねぇか!!)
(名前めっちゃ荘厳なのに、やってることマイクラのクリエイティブモードだろこれ!!)
(てか“夢を形にせよ”って、建築失敗したら悪夢も形になるやつじゃん!!)
王が満足げにうなずき、玉座の後ろで魔力の光がきらめく。
リリアは乾いた笑顔を浮かべた。
「……あの、できれば取扱説明書つけてください……」
(そうだよ! “再建用”とか言ってるけど、絶対初心者向けじゃねぇだろ!!)
(建築スキルゼロの俺に与えるなよ、国がまた傾くぞ!?)
そのままリリアは礼をして退出するが、背中で王の声が響いた。
「そなたの屋敷が完成した暁には──国葬級のスイーツパーティを開こうではないか!」
(なんでまた食関係なんだよ!! この国、絶対血糖値で統治してるだろ!!)
宰相がすぐさま青ざめた顔で叫ぶ。
「陛下、それだけはっ……! 予算が砂糖で溶けます!!」
王はにこりと笑い、胸を張る。
「甘味に投資する国に、未来はある!」
(いや糖尿の未来しか見えねぇよ!!)
セラフィーが小さくため息をついた。
「……もう、“糖分経済圏”ね」
(やめろ、そのワード公式に採用されそうだからやめろ!!)
ブッくんがすでに筆を走らせていた。
「“勇者邸、再建へ──国家的パーティ開催決定”……っと。よし、フォントは全面銀箔仕上げだ。日光を反射して網膜を焼く『光害プレス』でいくぜ!」
(読ませる気ねーだろ!! 新聞開いた瞬間に目潰し食らうとか、もはや暗器だよ!!……お前、印刷所じゃなくて兵器工場にいろよ!!)
ワン太は横で無言のまま、
“どうせまた巻き込まれる”という顔でリリアの足元に座り込む。
リリアは額を押さえ、空を仰いだ。
(ああ……次の戦い、たぶんモンスターじゃなくて建築資材だな……)
(新クエスト:“石垣を積め!涙のDIY編”──開幕かよ!!)
「──勇者リリア、戦場を離れてなお混乱の渦中。建築家にジョブチェンジか?」
新聞の見出しが、頭の中に浮かんだ。
(……てかこれもう、建築シミュレーター編突入だろ!!)
――その瞬間、肩甲骨の奥で、ほんの一拍だけ、熱が脈打った。
……玉座の上で、王の指先が、誰にも気づかれず一度だけ止まった。
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