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第4章 separation
観測者
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黒島郁美に校舎裏を離れるよう言われた後、私は急いで校舎内の階段を駆け上り2階にある生徒会室へと向かった。虎グルが生徒を虐めている所に色グルの郁美が来たのだが、それでは事態が良い方へと転ぶとは思えない。いやむしろ悪化するかもしれない。急いで生徒会長に伝えないと。夏美に伝えないと。
何とか生徒会室まで辿り着き、扉をノックする。
「あの…、夏美会長は居ま…」
夏美が居るのかと尋ねようとしたのだが、自然とその言葉も止まる。それもそうだ。今この生徒会室には誰も居なかったのだから。
(どういうこと?非常時を除いて、放課後の下校時刻までは誰かは生徒会室にいないとなのに…)
だが、その怜花の思考は誰かの叫び声によって遮られた。その声のもとへと近付いて見るとどうやら外からの声のようだ。2階の窓から見下ろせる風景は、そう、校舎裏だ。
「誰だ!そこにいるのは!」
虎グルの1人が声を張り上げる。その視線の先には私が先程郁美にぶつかった角だ。おそらくそこにいるのは郁美だ。何か電話していたようだが、一体何をしていたのだろう。
「また虎丸くんの僕たちかしら」
「…郁美か、どうしてまたここに…」
「たまたま通りかかったのよ、流石にこれを見逃す訳にはいかないわよねぇ…」
郁美は虎グルへと近付いていく。何がそうさせるのかは知らないけど、郁美は至って余裕の表情だ。
「見逃した方が身のためだと思うけどな」
「あなたたちの方こそ今ここから離れた方がいいと思うけれど」
「どういうことだ」
「言葉通りの意味よ」
そう言って郁美は振り返り立ち去ろうとする。だが、もともと折り合いの悪いグループ同士だ。虎グルにしてもここまま見過ごす訳にもいかないだろう。追いかけようと走り出したその刹那、窓から見る私の視界には黄色の何かが過ぎった。縦方向に。上から下へと。黄色い形容しがたい形の物体が落ちていった。そして、
バシャン
と音がした。下を見れば黄色の人間が3人。虎グルの3人だ。そして、ようやく落ちてきた物体が色水だとわかった。え?落ちてきた?私の上の階から、落とされたのか?
「痛てぇ…誰がやった!?」
虎グル3人は校舎を見上げる。私は咄嗟に屈んで身を隠す。私が落としたわけではないけれど、誤解されてしまっては困る。
「てめぇか!!」
一瞬バレてしまったのかと思った。そうではないらしい。何故ならそれに返答した人がいたからだ。
「あ~、もしかして当たっちゃった~?ごめ~ん下のゴミみたいなの狙ったんだけど~、あ!もしかしてそれが君らだったのかな?」
その声は黄田のものだった。黄田台奈、色グル上位の1人だ。名前はウテナと読むけれど、皆からはダイと呼ばれている。私とクラスは違うけれど、多分美術部だったと思う。
「それと~、その色水はアクリル絵の具だから、乾くともうとれないよ~。そんな汚れまみれの服装でそこらへん歩いてたら虎丸くんの面目丸潰れだね~」
虎グルとことん挑発されて、腹立てているようだ。
「流石琴美ね、台奈にまで協力を取り付けたのね。仕事が早いわ…」
「あまり調子のってんじゃねぇぞ!」
1人が勝ち誇った様子で立っている郁美に襲いかかろうとした。だが、それは直前で妨げられた。郁美の後ろにいつの間にか30人程の集団ができていたのだ。柔道部や空手部と言った強者もいる。
「くそ…!」
ここで怯んでしまってはさらに面目が保てないと思ったのだろう。郁美に向かって走り出したとき、
…バン!
先程よりもさらに大きな音だ。まるで何かが破裂したかのように耳を劈くような音がした。水だ。だが今度は無色透明だ。黄田ではない。私は窓から身を乗り出して上を見る。他の人もさらに上を見上げる。そこには空のバケツを持ち、こちらを睨みつける人影があった。
「生徒会…かよ…」
郁美も虎グルもそこに立ち尽くすばかり。
そして、もうひとつのバケツを手に取り投げ出された無形の水が強く地面を打ちつけた。
何とか生徒会室まで辿り着き、扉をノックする。
「あの…、夏美会長は居ま…」
夏美が居るのかと尋ねようとしたのだが、自然とその言葉も止まる。それもそうだ。今この生徒会室には誰も居なかったのだから。
(どういうこと?非常時を除いて、放課後の下校時刻までは誰かは生徒会室にいないとなのに…)
だが、その怜花の思考は誰かの叫び声によって遮られた。その声のもとへと近付いて見るとどうやら外からの声のようだ。2階の窓から見下ろせる風景は、そう、校舎裏だ。
「誰だ!そこにいるのは!」
虎グルの1人が声を張り上げる。その視線の先には私が先程郁美にぶつかった角だ。おそらくそこにいるのは郁美だ。何か電話していたようだが、一体何をしていたのだろう。
「また虎丸くんの僕たちかしら」
「…郁美か、どうしてまたここに…」
「たまたま通りかかったのよ、流石にこれを見逃す訳にはいかないわよねぇ…」
郁美は虎グルへと近付いていく。何がそうさせるのかは知らないけど、郁美は至って余裕の表情だ。
「見逃した方が身のためだと思うけどな」
「あなたたちの方こそ今ここから離れた方がいいと思うけれど」
「どういうことだ」
「言葉通りの意味よ」
そう言って郁美は振り返り立ち去ろうとする。だが、もともと折り合いの悪いグループ同士だ。虎グルにしてもここまま見過ごす訳にもいかないだろう。追いかけようと走り出したその刹那、窓から見る私の視界には黄色の何かが過ぎった。縦方向に。上から下へと。黄色い形容しがたい形の物体が落ちていった。そして、
バシャン
と音がした。下を見れば黄色の人間が3人。虎グルの3人だ。そして、ようやく落ちてきた物体が色水だとわかった。え?落ちてきた?私の上の階から、落とされたのか?
「痛てぇ…誰がやった!?」
虎グル3人は校舎を見上げる。私は咄嗟に屈んで身を隠す。私が落としたわけではないけれど、誤解されてしまっては困る。
「てめぇか!!」
一瞬バレてしまったのかと思った。そうではないらしい。何故ならそれに返答した人がいたからだ。
「あ~、もしかして当たっちゃった~?ごめ~ん下のゴミみたいなの狙ったんだけど~、あ!もしかしてそれが君らだったのかな?」
その声は黄田のものだった。黄田台奈、色グル上位の1人だ。名前はウテナと読むけれど、皆からはダイと呼ばれている。私とクラスは違うけれど、多分美術部だったと思う。
「それと~、その色水はアクリル絵の具だから、乾くともうとれないよ~。そんな汚れまみれの服装でそこらへん歩いてたら虎丸くんの面目丸潰れだね~」
虎グルとことん挑発されて、腹立てているようだ。
「流石琴美ね、台奈にまで協力を取り付けたのね。仕事が早いわ…」
「あまり調子のってんじゃねぇぞ!」
1人が勝ち誇った様子で立っている郁美に襲いかかろうとした。だが、それは直前で妨げられた。郁美の後ろにいつの間にか30人程の集団ができていたのだ。柔道部や空手部と言った強者もいる。
「くそ…!」
ここで怯んでしまってはさらに面目が保てないと思ったのだろう。郁美に向かって走り出したとき、
…バン!
先程よりもさらに大きな音だ。まるで何かが破裂したかのように耳を劈くような音がした。水だ。だが今度は無色透明だ。黄田ではない。私は窓から身を乗り出して上を見る。他の人もさらに上を見上げる。そこには空のバケツを持ち、こちらを睨みつける人影があった。
「生徒会…かよ…」
郁美も虎グルもそこに立ち尽くすばかり。
そして、もうひとつのバケツを手に取り投げ出された無形の水が強く地面を打ちつけた。
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