11 / 16
第3章 Another Side
kinds『N』
しおりを挟む
それから何とか入学式に間に合った。そしてHRももう終わる。隣の席の人が、今朝の男の子だったことには流石に驚きだった。名前は伊宮と言うらしい。コレでコノミヤって読むんだな…。
HRでやるべき事を終えて、チャイムが授業の終わりを知らせた。そして、この15分程度の休み時間だが、やることは既に決めてある。親友の夏海に会いにいく。同じクラスになれば本望だったのだが、入学早々もともとの友人に依存するのはよくない。こういう機会も大切なのかもしれない。
夏海がどのクラスかも分からないので、ひとしきり廊下から覗いてみることにする。
どのクラスも自分のクラスである1組と同じような雰囲気で、群れて騒ぐ者、席の近くの人とお喋りする者。大概はその2種類に分かれていた。夏海を探し始めて3つめのクラス、すなわち4組で後者に属した人の中に夏海がいた。
「おーい!夏海!」
「お、怜花じゃん!久しぶり」
中学の卒業式以来、お互いに顔を合わせたことはなかった。春休みを挟んでいたのだが、2人の学校外での付き合いはほとんどなかった。学校内での親友と言った方がいいのだろう。
「怜花はちゃんと、春休みに外にでたのか?」
「ちゃんと出たよ。商店街とか図書館とか、あと…あ、お花見にも行ったし」
「ゲーセンとかカラオケとかは?」
「行ってないよ」
「そっか、怜花のとこそういうのに厳しいんだっけ。楽しいのになぁ」
「いつか行ってみたいな」
「こっそり連れてってやろうか?」
夏海は冗談含みに問いかける。答えはもちろん、
「やめとくよ、バレたら怖いし」
私の家は確かに厳しいとは思うが楽しくないわけではない。近所の満開の桜がある公園に家族全員でお花見に行ったときは楽しかった。私は私なりに充実してるんだ。
「あ、そうだ。パン買ってきたよ。はい、いつもの」
今朝コンビニで買った大量のパンをバックから出す。このパンがどれほどバックの容量を占めていたのだろうか。取り出した後のバックはほとんど何も入っていないように平たくなった。夏海は一瞬険しい顔になったが、そのパンの袋を受け取った。
「あー、いつものね。うん、ありがとう夏海!」
「どういたしまして」
夏海はkindsのメンバーだ。kindsとは緑明中学のトップカーストに位置していた、仲良しグループの4人組だ。それぞれの名前のイニシャルをとって『K』『I』『N』『D』。繋げて纏めて、『kinds』。その中で夏海は買い物係だそうだ。週に何回か3人が夏海にお金を渡して、昼食を買うなり、物品を買うなりするそうだ。パシリと言えば聞こえが悪いかもしれないが、夏海は役割を与えられ、皆の役に立てれば嬉しいとのことだ。
私も今朝のパン大量購入のように手伝ったりすることもある。でもホントにこれでいいのかな。
2人とも充実はしてても、満足はしていない。
HRでやるべき事を終えて、チャイムが授業の終わりを知らせた。そして、この15分程度の休み時間だが、やることは既に決めてある。親友の夏海に会いにいく。同じクラスになれば本望だったのだが、入学早々もともとの友人に依存するのはよくない。こういう機会も大切なのかもしれない。
夏海がどのクラスかも分からないので、ひとしきり廊下から覗いてみることにする。
どのクラスも自分のクラスである1組と同じような雰囲気で、群れて騒ぐ者、席の近くの人とお喋りする者。大概はその2種類に分かれていた。夏海を探し始めて3つめのクラス、すなわち4組で後者に属した人の中に夏海がいた。
「おーい!夏海!」
「お、怜花じゃん!久しぶり」
中学の卒業式以来、お互いに顔を合わせたことはなかった。春休みを挟んでいたのだが、2人の学校外での付き合いはほとんどなかった。学校内での親友と言った方がいいのだろう。
「怜花はちゃんと、春休みに外にでたのか?」
「ちゃんと出たよ。商店街とか図書館とか、あと…あ、お花見にも行ったし」
「ゲーセンとかカラオケとかは?」
「行ってないよ」
「そっか、怜花のとこそういうのに厳しいんだっけ。楽しいのになぁ」
「いつか行ってみたいな」
「こっそり連れてってやろうか?」
夏海は冗談含みに問いかける。答えはもちろん、
「やめとくよ、バレたら怖いし」
私の家は確かに厳しいとは思うが楽しくないわけではない。近所の満開の桜がある公園に家族全員でお花見に行ったときは楽しかった。私は私なりに充実してるんだ。
「あ、そうだ。パン買ってきたよ。はい、いつもの」
今朝コンビニで買った大量のパンをバックから出す。このパンがどれほどバックの容量を占めていたのだろうか。取り出した後のバックはほとんど何も入っていないように平たくなった。夏海は一瞬険しい顔になったが、そのパンの袋を受け取った。
「あー、いつものね。うん、ありがとう夏海!」
「どういたしまして」
夏海はkindsのメンバーだ。kindsとは緑明中学のトップカーストに位置していた、仲良しグループの4人組だ。それぞれの名前のイニシャルをとって『K』『I』『N』『D』。繋げて纏めて、『kinds』。その中で夏海は買い物係だそうだ。週に何回か3人が夏海にお金を渡して、昼食を買うなり、物品を買うなりするそうだ。パシリと言えば聞こえが悪いかもしれないが、夏海は役割を与えられ、皆の役に立てれば嬉しいとのことだ。
私も今朝のパン大量購入のように手伝ったりすることもある。でもホントにこれでいいのかな。
2人とも充実はしてても、満足はしていない。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる