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第3章 Another Side
目撃
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週がかわり、授業も通常のモノに切り替わっている。新しい教科書に新しいノート、そして新しい先生、生徒が私に新鮮さを感じさせる。高校に入ると勉強が一気に難しくなると聞いていたのだが、流石にまだ1週間。つまづくような内容ではない。それはそうと先程から開いた教科書が何かの拍子に閉じてしまう。まだ、教科書が新品で教科書を慣らしていないからこうなってしまうのか。授業中ではあるけれど、こっそりと教科書のちょうど中間のページを開き、グッと力を込めて折り目をつけた。
休み時間だ。50分間の授業が終わって解放される瞬間。嫌いじゃない。そうだ。夏海のところに行こうかな。今朝パンを渡すために会ったけど、休み時間も話し相手になってくれるし何より傍にいると楽しくて、そして温かい。
4組にまで少し距離はあるけど、夏海に会うためならこの廊下の長さも厭わない。鼻歌まじり、とまではいかないが気分は高揚していた。
教室に着くと、夏海の姿がうかがえた…のだが、周りにいるのは一人二人ではない。あ、あの髪形、髪飾りはkindsか。できるだけ関わりたくはないかな。夏海以外はそんな柄がいいわけじゃないみたいだし。4組を後にし、自分の教室へ戻ろうと踵を返す。
「ねえ、ちょっとないんだけど!!」
戻ろうとした矢先に、突然大きな怒号が聞こえてきた。その声の主は蒼井琴美。kindsの『K』で、私のクラスメート。そしてその声は夏海の方に向けられていた。
「なんで、私のパン買ってきてないの!?」
「…パンならあるじゃん、この袋に」
そう言って夏海は今朝私のあげた袋を琴美に開けてみせた。
「だから、私は期間限定のクリームメロンパン買ってこいって言ったじゃん!なんでないの!?」
「…売り切れてたんだよ」
「商店街ならまだあったじゃん。夏海、昼にそこにいって買ってきてね」
「…なんで私が…」
「は?あんた買い物係だよね?今日火曜日じゃん。私たちの昼ごはん買って来る日だよね?いいから買って来いよ」
夏海は完全にいじめられている子犬状態だ。他のkindsの2人は夏海と琴美の会話に参加していないが、琴美に味方していると目と空気でわかる。
「…わかったよ」
夏海は折れて琴美の言うことを聞くことにした。夏海は自分の席について伏したが、指で机を叩く様子から相当ストレスを感じたのだろうと思う。一方の琴美は「分かればいいんだよ」と言い残し3人教室を出ていってしまった。
どうしよう、私のせいだ。私が期間限定クリームメロンパンを買ってこなかったから。携帯を見てみるとそこには夏海からメールが届いていた。
『怜花!おはよう!
今日のパンだけど、悪いけど今あってるクリームメロンパン買ってきてくれない?もちろん、後でお金は返すからさ!お願い!^^
んじゃ、よろしくー』
私がちゃんとメールを見ていればこんなことにはなっていなかっただろう。
机に伏す夏海にかける言葉なんて見つからない。自分の失態で夏海は責められ、もちろん私の名前を出せるはずもない。それこそ、手伝っているのがバレれば夏海にとってはさらに責められ、私にも飛び火が降り掛かるかもしれない。
夏海は昔、私がいじめられているときに助けてくれた。今度は私が夏海の手助けをしたいのだ。
そうこう考えるうちに授業開始のチャイムが鳴った。
「ああ、急がないと…」
急いで教室に戻る。息も切れていたかもしれない。
「音無、大丈夫か?」
「うん、大丈夫」
何が大丈夫なのか分からない。伊宮くんの声も届かない。
ただ、私の脳裏には思い出したくない過去が、蘇る。
休み時間だ。50分間の授業が終わって解放される瞬間。嫌いじゃない。そうだ。夏海のところに行こうかな。今朝パンを渡すために会ったけど、休み時間も話し相手になってくれるし何より傍にいると楽しくて、そして温かい。
4組にまで少し距離はあるけど、夏海に会うためならこの廊下の長さも厭わない。鼻歌まじり、とまではいかないが気分は高揚していた。
教室に着くと、夏海の姿がうかがえた…のだが、周りにいるのは一人二人ではない。あ、あの髪形、髪飾りはkindsか。できるだけ関わりたくはないかな。夏海以外はそんな柄がいいわけじゃないみたいだし。4組を後にし、自分の教室へ戻ろうと踵を返す。
「ねえ、ちょっとないんだけど!!」
戻ろうとした矢先に、突然大きな怒号が聞こえてきた。その声の主は蒼井琴美。kindsの『K』で、私のクラスメート。そしてその声は夏海の方に向けられていた。
「なんで、私のパン買ってきてないの!?」
「…パンならあるじゃん、この袋に」
そう言って夏海は今朝私のあげた袋を琴美に開けてみせた。
「だから、私は期間限定のクリームメロンパン買ってこいって言ったじゃん!なんでないの!?」
「…売り切れてたんだよ」
「商店街ならまだあったじゃん。夏海、昼にそこにいって買ってきてね」
「…なんで私が…」
「は?あんた買い物係だよね?今日火曜日じゃん。私たちの昼ごはん買って来る日だよね?いいから買って来いよ」
夏海は完全にいじめられている子犬状態だ。他のkindsの2人は夏海と琴美の会話に参加していないが、琴美に味方していると目と空気でわかる。
「…わかったよ」
夏海は折れて琴美の言うことを聞くことにした。夏海は自分の席について伏したが、指で机を叩く様子から相当ストレスを感じたのだろうと思う。一方の琴美は「分かればいいんだよ」と言い残し3人教室を出ていってしまった。
どうしよう、私のせいだ。私が期間限定クリームメロンパンを買ってこなかったから。携帯を見てみるとそこには夏海からメールが届いていた。
『怜花!おはよう!
今日のパンだけど、悪いけど今あってるクリームメロンパン買ってきてくれない?もちろん、後でお金は返すからさ!お願い!^^
んじゃ、よろしくー』
私がちゃんとメールを見ていればこんなことにはなっていなかっただろう。
机に伏す夏海にかける言葉なんて見つからない。自分の失態で夏海は責められ、もちろん私の名前を出せるはずもない。それこそ、手伝っているのがバレれば夏海にとってはさらに責められ、私にも飛び火が降り掛かるかもしれない。
夏海は昔、私がいじめられているときに助けてくれた。今度は私が夏海の手助けをしたいのだ。
そうこう考えるうちに授業開始のチャイムが鳴った。
「ああ、急がないと…」
急いで教室に戻る。息も切れていたかもしれない。
「音無、大丈夫か?」
「うん、大丈夫」
何が大丈夫なのか分からない。伊宮くんの声も届かない。
ただ、私の脳裏には思い出したくない過去が、蘇る。
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