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12~宮藤真純の場合~
しおりを挟むみのりが刺された。
連絡が入ったのはつい数分前。
ついさっきまで、この部屋で会議の議事録を取っていた。
他の役員達も呆然として、何が起きたのか理解できず手元や…ついさっきまでみのりが座っていた椅子を見たりしている。
「おい真純…お前病院に行け」
そう言ったのは誰だったか…。
呆然とする頭では上手く考えられず、声のした方に顔を向けるのが精いっぱいだった。
「真純、落ち着け…。ここはいいから、お前はとりあえず病院に行け。さっきタクシー呼んどいたから。財布とスマホと…まぁ、忘れ物は届けてやる。とりあえず今は病院だ」
そう言われ、タクシーに乗せられ病院に向かった。
どういう事なんだ?刺されたってなんで?
頭の中は「なんで?」という言葉だけがグルグル回る。
兄貴…真咲が…家が暴漢に襲われた時を思い出す。
あの時も呆然とする俺を叱咤してみのりが救急車を呼んでくれたりしていたっけ。
二つ年下の隣に住んでいる幼馴染。
昔からしっかりした子で、おしゃれでも美人でもないが、気配りができやさしい…俺の初恋で、今でも好きな子だ。
「ナオキカンパニー」の数人いる取締役の一人であった真咲が亡くなってすぐに、真咲の代わりに俺が取締役に就任した。まぁ…真咲が出資した分を現金で返すことが出来なくて、苦肉の策で…らしいけれど…。
そんな俺が投入した人材。市川みのり…隣の幼馴染だ。
サービス業は嫌だという彼女を、どうにかこうにか説き伏せてのハンティングだったが結果的に会社にとって無くてはならない人材になった。
ハンティングした俺自身も、まさかここまでやるとは思わなかった。
俺がハンティングした理由は、みのりに言ったら激怒されそうだけど、仕事に期待してのものではない…ただ単に、手元に置いておきたかったからだ。
目の届かないところに行って、いつの間にか結婚でもされたらたまったもんじゃない…という邪な理由だ。
今日はみのりの31歳の誕生日だった。
プレゼントも準備して…今日はの夜は食事に行く約束もした。
幼馴染でガキの頃から色々見られているし知られている。
今更交際を申し込むのもなんだか…と思ったので、一気に結婚を申し込む予定だった。
運が良ければ結婚はまだでも、交際は受けてくれるだろう…と思っていた。
その位には好かれていると思っていた。
なのに……。
●〇●○
手術室の前には、ついさっきまでみのりと一緒にいた、石崎が座っていた。
「何があった?」
それしか言葉が出てこなかった。
いきなり土下座をした石崎から経緯を聞いて、怒りがわいた。
こいつのせいで…みのりが刺された?
抑えられない怒りのせいで気が付いたら石崎を思いっきり蹴り飛ばしてしまった。
そして…いつの間にか俺の足元には、ぼろぼろになった石崎が気を失っていた。
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