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2、始まりの始まり
しおりを挟む「明日はとうとう結婚式ね」
隣の彼女がウキウキとした顔で、車を運転する俺の顔を覗き込む。
付き合って三年…彼女が成人するのを待って、お互いの両親に改めて紹介して認めてもらいようやくここまで漕ぎ着けた。
据え膳食わずに三年……頭のすみっこの方にお花畑がある彼女は、なんでだか俺にカッコよさと誠実さ…そして、男は紳士であるべきだ!なんてのを求め、出会った頃に力説され……一目惚れした俺は律義にそれを守って、頑張ってここまで来た。それも、もう明日で終わり!よくやった俺!!!と叫び出しそうだけれど、運転中だからと改めてハンドルを握り直したその時、走行している車の後方からけたたましいクラクションの音が聞こえた。
「え??なに?なに?」
クラクションの音にびっくりした彼女が後ろを振り返り、俺がバックミラーを見た時には時すでに遅しだった。
俺が生きて最後に見たのは、フロントガラスいっぱいに迫る大型トラックと声も出せず目を見開く最愛の彼女の顔だった。
●○●○
「ごめんねホント」
子供かっと言いたくなるような軽い口調で謝っているのは、自称『世界の調整者』だ。
「君達が亡くなったのってイレギュラーだったんだけどさ、ほら、もう身体もねあんな感じだし……」
視線の先には、トラックに押しつぶされ高速道路の壁に挟まれ、見るも無残な俺と彼女の身体。
まだ息があるらしいけれど、これで戻ったとしても今までのようにはいかない事は、何を言われなくても分かった。
本当は、あのトラックの単独事故の予定だったらしい…が、そのトラックの運転手の魂がかなり抗ってきたらしい。
そして近くにいた俺達に被害が及んで、あの運転手の代わりに俺と彼女が……という結果だそうだ。
「で……彼女は…彼女の魂はどこなんだよ」
今ここにいない彼女の魂はどこに行ってしまったのか。
相思相愛で、明日は結婚式だと話していたばかりなのに。
「う~ん、彼女ねまだあそこにいるんだよ。かろうじて君が庇ったからさ、ちょっとだけ程度が軽くてね。君の息がまだある事に気が付いてまだ君の身体の傍にいるよ」
そう言われてみた時、ちょうど彼女が俺の身体に向かって伸ばした手がぱったりと落ちた時だった。
まさか、こんな形で彼女を看取るとは思わず…俺は声が枯れるほど叫んだ。
こんな風になる為に今まで頑張ってきたわけじゃない。
こんな風に彼女を失くすために一緒にいたわけじゃないと……。
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