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37、モテないわけじゃないよ

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朝は通常通りに起きて活動する。
ミレーユは昼餐後に登城するらしく、その後の色々を考えると今日会うことは難しいかと思い、本当にいつも通り……窓の外やドアにちらちらと視線がいってしまうのはしょうがないと割り切ってもらい、普段通りに執務をこなした。


「疲れた……」


思いがけず計算が全然違っている書類を見つけてしまい、徹底的に間違い直しをしていたら、気が付いたらだいぶ遅い時間になっていた。この書類を作った奴は俺を試してるんじゃないかと思うほどあちらこちら間違っていた。トマスに指示して部署異動を命じなければ…なんて思いつつそろそろ夕食の時間かと思い机の上を整理していると、ドアをノックする音が聞こえた。


いつも通り、ドアの前には警備がいるので、不審人物ではないだろうと、入室の許可を出したのだけれど一向に入ってくる気配がない。不審に思い、ゆっくりこちらから開けたら、真っ赤な顔をしたミレーユが立っていた。


「えっ…はっ?え…あの、とりあえずどうぞ」


思わずどもってしまったけれど、ドアを少し開けたままミレーユを部屋に招き入れソファに座る事を勧め、控えている者に飲み物を頼む。マナーとしてこれは間違っていないはず…多分。


「ミレーユ嬢……婚約破棄から始まって今回の登城のこと…色々と申し訳ない」


謝らなければいけないことが多すぎて、何をどう詫びたらいいのか分からない。
とりあえず謝ってしまったが、彼女は気を悪くしたんじゃなかろうか?
いきなりの訪問で緊張しつつ考える。


しばらく無言の時間が流れた時、またノックの音が聞こえる。給仕の者だろうと思って許可を出すと、カートを押しながら入ってきたのはトマスと侍女が一人。


「殿下、お仕事お疲れ様でございます。先ほど給仕の者がおりましたので途中から変わりました。毒味は済んでおります」


そう言って、俺に座るように促しミレーユにもお茶を勧める。


ちなみに…安易にそこら辺の者にお茶を頼むなと、こってり怒られた。
ミレーユの前で言わないだけ、一応俺のプライドは考えてくれていたようだ。



●〇●〇



「殿下…ミレーユ様とお話は出来ましたか?」


分かっているだろうに聞いてくるトマスに思わず舌打ちをしてしまった。


「はぁ…わかってるだろ。あんな感じで話しなぞできなかったよ。兄上の婚約破棄からの始まって、今回の登城の要請を謝ったくらいで終わった。それもいきなりの事だったから、すまなかったとしか言えなかった」


ため息をつきながら話しをする。
執務で疲れて、緊張して疲れる。


「何だかな…女性とまともに話す機会も今まで無かったからかだいぶ緊張した」


モテないわけじゃない……こう見えてみイケメンらしいし王子だし。
けど、今の今まで女性を避けに避けて来たのが裏目に出てしまったらしい……思わず苦笑いしてしまった。
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