人外さんに選ばれたのは私でした ~それでも私は人間です~

こひな

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ふと…一人でいると碌なことを考えない…と、だいぶ前に亡くなった父方の祖母が言っていたのを思い出す。


ひと言でいえば『纏まりのない我が家』を必死に纏めようとしていた祖母。
会うたびに『お父さんいなくて寂しいくない?ごめんね』と言っていた。
あの頃は何を謝っているのか分からなかったのだけれど……
祖母は子供(私の父)の育て方を間違ったと周囲に言っていたらしい。


『いつまでも大学に残っていないでちゃんと働きなさい』


祖母が父に言っていたのを聞いたことがある。
田舎の何も知らない人にとっては、身体を動かす事こそが勤労なのだろう…と今になって思うけど、父が大学の教授で生活が不安定だった…なんてことは無かった。
スポンサーもちゃんと付いていた父は昔から優秀だったのだろうし、祖母はまぁ色々勘違いしていたのだろうと思う。


ちなみに、父のスポンサーをしていた企業の社長の娘が母だ。
決して政略結婚ではない…らしい。
父が母に一目惚れして、押して押して押して押したという話も何度も聞いた。
ほろ酔いの母から。


『お父さんってクマさんみたいでかわいいでしょ♪』


ヒグマのような父を『クマさん♪』とぬいぐるみのように言う母も色々ズレている人だけれども…。


「色々話して信じてもらえるかな……」


何処からどのように話すか…若しくは話さないでごまかすか。
元はお嬢様でぽやぽやしているように見えても、実際は違うだろうと思う。
『考古学者の妻』だからと言って、妻もロマンを追いかけているとは限らない。


社長との出会いから始まり今に至るまで。
もっと正確に言えば、社長と出会う前…アンティークや古書を扱う道を選んだ時にまで遡っての事も…。


「もしかしたら、お父さんには信じてもらえるかもしれないけど、お母さんにはどうかな…」


だんだんと暗くなる病室で、あちこちに思考を飛ばす。
今こんなこと悩んでもしょうがない…と、分かってはいる。
分かっているのだけれど……。


「あ"ぁ…ばあちゃんの言うとおりだ…一人でいると碌なこと考えないかも」


こんな時は寝てしまうに限る。
夢でなければがあったばかりだ。身体も心も疲れているはず。
きっと明日には、自分の知らない空白部分を埋めてくれる話が聞けるはずだし、も、流れをみて話せればいいや……そう考えを無理くりまとめて布団に潜った。
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