人外さんに選ばれたのは私でした ~それでも私は人間です~

こひな

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翌朝…昨日はだいぶ早く寝たせいか、病棟の起床時間である六時前に目を覚ましてしまい、一通り洗面を済ませ朝食を食べた。昨日は気が付かなかったのだけれど、ベッドの横には着替えや洗面道具が一通り入ったバッグが置いてあり、着替えも済ませた。あとは先生からの許可のみ…と待っていると、勇樹が病室にやってきた。


「おはよう。昨日頭打ってたみたいだけど、痛みがあったり吐き気がしたりとかは大丈夫か?」


すっかり退院準備ができている私をみて苦笑いしてるけど、なんで?


「退院手続きはしてきたよ。このまま帰れるから」


そういって、早々に病室を出てタクシーに乗った。
こんな時車があるといいよなぁ~なんてぼやく弟に、維持費が大変よと現実を浴びせかける。いまはシェアリングだなんだとあるんだから、彼女とのデートの時は借りればいいのよ…と言うと真っ赤な顔をして下を向いてしまった。なんだ、家族の心配じゃなくて彼女との事を考えていたんかい!っていうツッコミはせずにとりあえず放置で。だって、弟にアドバイスできるほどの経験は私にはないからね。
墓穴は掘りません。


取り留めのない事を話しながら…あっという間に我が家に到着。
何も知らないで帰った私は、扉を開けた瞬間「へっ?」と間抜けな声を出して止まってしまった。
だって…玄関先で迎えてくれたのは、お母さんでもなく…皆には見えない社長でもなく…お父さんだったから。



●○●○



「具合はもう良いのか?」


居間のソファに座るヒグマ…もとい…お父さんが言った。
いやいやいや…海外出張中のお父さんがなんで家にいるのよ…とボソッというと、お母さんが入院したことを聞いた直後から調整し始めて、昨日帰国する予定ではいたらしい。
色々あってすぐには帰れないし、いつ帰れるかも確定できなかったから連絡はしなかったらしい。


「いやぁ~びっくりしたよ。帰ってきたら風呂場の方から何だかすごい音がするし、傷だらけになった彼が玄関先で倒れているし…」


そう言って視線を送った先には、の妖精さんがバスタオルにくるまれて寝ていた。
チラッと見ただけでも傷だらけなのが分かってしまい、泣きそうになった。


「社長?社長?」


つい声に出てしまったのはしょうがないと思う。
だって…あんな状態の社長を見たのは初めてだったから。
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