人外さんに選ばれたのは私でした ～それでも私は人間です～

８０

「その後も紆余曲折ありましたし、長くふせる事もございましたが、ミヤコはそれを乗り越えてくれ、私に二つの宝を抱かせてくれました」


今までわりとハードな話をしていたのに、家族を語る都築川さんの表情はとても穏やかで…話を聞くだけで冷たくなっていた心が、一気にほんわりと暖かくなった。


「状況は違いますし、何がきっかけかも私には分かりませんが…もしかしたら…と」


そう言われて…ふと…まさか…と思う。


「もしかしたら、姉のことがきっかけかもしれません。姉が……姉のお腹の赤ちゃんが……」


今抱えている事を都築川さんに話す。
姉のお腹の赤ちゃんが双子であること。
双子の内の一人は発育が悪く、産まれても死産の確率が高いことを……そして、自分がその立場にたったら……と考えてしまった事を。


「タイミングもございますが…私事わたくしごとを話したばかりに、ご心労をお掛けして申し訳ございません」


いやいやいや…都築川さんが謝ることじゃないし……なんて、コントのようなやり取りをしつつ、社版押しを再開する。
そして、社版を押しながらまた考える。


私が焦ってもしょうがないのは解っている。
少しガス抜きも必要かな……。
たまには自分のメンテナンスも大事だよね。
そう思いながら、昨日雪斗さんと食事の約束を思い出し、嬉しくてつい社版を押す手もぺたんぺたんと早くなった。