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しおりを挟む都築川さんに休養を勧められ、社版押しもそこそこに帰り支度を始めると、廊下がにわかに騒がしくなった。
「お客様困ります!アポイントの確認を致しますので、玄関ロビーでお待ち頂けますかっ」
誰かが無理やり社内の入り込んできたらしい。
だんだん近くなってくる足音に、危機感を感じたのか都築川さんが身構えた。
「美里!美里!僕だよ!マークだよ!」
部屋の扉をドンドンという音と共に聞こえてきたのは、日数的にまだ海外にいるはずのマークだった。
え??なんで?え?昨日の連絡ではまだあっちだったよね?
そんなことを思いつつ、都築川さんにマークを中に通してもらうことにした。
「マーク様いらっしゃいませ。できれば次回からは電話などでご一報いただければ幸いです」
ちょっと怖い笑顔で一言添える都築川さんをものともせず、ずんずんとデスクの前に仁王立ちしたマークが私に見せたのは、昨日私が送った姉の写真だった。
「へ?は?」
間抜けな声しか出せず呆然としていたら、マークが今日ここに来た理由を教えてくれた。
「ねぇ美里…ハニーは…僕のハニーは、なぜ泣いたんだい?彼女は僕にはあまり泣きごとを言わないんだ。美里になら話すだろ?何かあったのかい?僕が何かしたのかい?」
マシンガンのように繰り出される言葉に、マークって日本語が上手いんだなぁ…なんて的外れな事を考えつつ、カバンにしまっていた自分のスマホを出し、ササっと姉にSNSでメッセージを送る。
“マークが来たんだけど、昨日の話どうする?”
”え?まじで?”
”うん、マジ”
”了解、そのまま病院に来るように言って”
ちょうど動画でも見ていたのであろう、思いがけず早くリターンが来て助かった。
そして、短い文で色々と察してくれた姉に感謝した。
「マーク…お姉ちゃんから病院に来てって、メッセージ来たんだけど」
連れてきてではなかったので、きっと姉は直接自分の言葉で話したいのだろう。
せっかくここまで来たのに、私の話は碌に聞けず病院へ行かなくてはいけない事に、抗議しつつも渋々病院に行った……都築川さんが手配してくれたタクシーで。
「嵐のようなお方でしたね……」
マークが出て行った後の扉を見ながら、ため息をつくようにぼやいた一言に、私も賛成した。
はぁ……マークのお陰で疲れが倍増したよ……なんて…今日の彼を見たら言えなくなってしまった。
彼が病院に行けない日は、姉の写真を撮り必ず彼に送る。
姉がポロポロと泣いたあの日は、病室に着いてから写真を撮っていない事に気が付き、目を冷やしたりして…それこそ何度かテスト撮影をして、泣いた後だと気が付かれないように、再三確認して送ったのだ。
けれど……多分、目がいつもより潤んでいて、少し…ほんのちょっとだけ目が赤いのを見つけたのだろう。
仕事もそこそこに、SNSで私に宣言した通り、すぐに飛んで帰って来たのだ。
「お姉ちゃんには、あれぐらい独占欲が強い人でいいのかもしれない……」
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