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しおりを挟む「お忙しいと思いますので、決められる物を先に決めてしまいましょうか」
今日は雪斗さんと、結婚式の会場となるホテルへ打ち合わせに来ている。
会社同士の色々があるので、衣装以外はおじいちゃんと雪斗さんで……なんて言ったら、雪斗さんには拗ねられて、おじいちゃんからは頭を撫でられながら「好きにやっていいぞぉ~」と孫馬鹿を発揮された。
本気で言ったのに、冗談だととられたようだ………。
そんなわけで今現在、ブライダルサロンにいる私と雪斗さんの前に座るのは、私達の担当者らしい女性……。
挨拶からこっち、ずーーーーーっと、雪斗さんの苗字の「鏑木様」しか言わない。
私って空気のよう。来なくてよかったんじゃない?って真面目に思っている。
雪斗さんは、何かあるごとに「美里は?」「これは美里が考えた方が…」と振ってくれるけど、この担当から『渡利』という名は最初の挨拶のみ。打ち合わせが始まって一時間たった今も変わらず。
正直、ホントに帰ろうかと思っていた時、実にタイミングよく担当者が口を開いた。
「だいぶお疲れのようなので、式の内容は私と鏑木様で詰めておきますので、渡利様には衣装合わせの方に向かって頂いて……」
「結構です。私、帰らせていただきますので、どうぞお二人で、私と彼の式の相談していて下さい」
そう言って雪斗さんには何も言わず、そのまま帰ってきた。
少しだけ…雪斗さんが追いかけて来てくれるかと思っていたのだけれど、追いかけて来てくれる様子も電話もなかった。
「?渡利様?今日は社長と一緒に式に向けてのお話をされに行ったのではないのですか?随分お早いお戻りでしたね」
あのまま帰ってきて、自分の机に座り気持ちを落ち着ける。そして…都築川さんには社長に進言してもらおう。今後あそこに行く時は私は同行しない…と。
「何かあったのですか?」
雪斗さんに進言してもらう手前、説明しなければ行けないので、とりあえずは答えた。
「いいんです…いわゆる私の嫉妬です」
今日行った場所はブライダルサロンだよね?
新郎新婦が結婚式の相談する所だよね?
なんであんな所に、新郎に流し目や色仕掛け、ボディタッチしてくる担当がいるんだよ!なんで雪斗さんは何も言わないんだよ!!!
嫉妬だと…雪斗さんはあんなのに揺らぐわけが無いことは知っている。
けど……
「都築川さん…申し訳ないのですが、社長に今後の式の相談にはついて行きたくないので、必要なら他の人を連れて行って下さいって…」
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