人外さんに選ばれたのは私でした ~それでも私は人間です~

こひな

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結婚式の衣装合わせ。
さすがに本人が来ないことには合わせられないので、今日は雪斗さんと二人でホテルの衣裳部門に来ている。
ちなみに……神前式ではないので和装は無し…だと思う。


チラッとしか聞いていないけれど、多分伴侶の契りを結んだ際に行った場所が、人外さん達が信仰する神様がいる神殿または社なんだと思う。だから、きっと挙式は何らかの理由をつけて、行われないだろうと思っている。
だからきっと和装はないはず。そう思っていたら、衣装を担当している人から和装についての案内をされた。


「挙式はなさらないとの事でしたが、お写真だけ前撮りでと伺っております。白無垢・色打掛・大振袖などございます。白無垢にも格がございますので、ご新郎様と相談されるのがよろしいかと思います」


そう言って案内された畳敷きの場所には、所狭しと広げられた花嫁衣装があった。
最近は地味婚が多いせいもあって、友達の結婚式に御呼ばれされても和装を見ることは殆どないので、思わず目移りしてしまう。古書を読んだりしていることもあって、古い結婚式のしきたりだったり、衣装の由来だったりは目にすることはあっても、実際の衣裳を見ることはあまりない。
古物を扱う部門でも、着物の鑑定ははまた違う部署だったりもするので、私には全然縁のない物だった。


「美里のおじい様は、和装も楽しみにしていると聞いた。前撮りの際には来てもらう予定で話は通してある。気に入った物を選べ。俺はそれに合わせて、あとから決めた方が良いだろう。結婚式の新郎は ”そえもの” だからな」


そう笑いながら言う雪斗さんは、自由に選べと言いつつも手触りの良さそうな正絹の着物を素早く選別していく。
そして、最終的に残った五枚程の着物を座る私に宛がい、店員さんと顔映りなどを確認していく。


「美里は色白だからな…こっちの生成りの感じもなかなかいいと思うぞ」


楽しそうに選ぶ雪斗さんの顔を見ているのが楽しくて、思わず『最初に着る花嫁衣装は雪斗さんに選んでもらいたい』なんて赤面しながら言ってしまった事は誰にも言えない、私と雪斗さんだけの秘密だ。
そして、雪斗さんが悩んで悩んで選んでくれた着物は、赤ふきと呼ばれる白無垢だった。
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