36 / 84
36 後天的なもの
しおりを挟む里奈の周囲に少しずつ光が集まってきている。
里奈の目線を見ていると、小さな光は流石に見えていないようだけど、明らかに大きな光……お人形のような妖精の姿の子は見えているような感じだ。
「里奈?……それ……」
里奈の手のひらに乗る妖精を指差す。
とりあえず、周りの光は置いておいてだ。
「ああ……これ?え?陽香にも見えるんだ?ってか、陽香にはいつも同じ子がいるよね」
そういって、制服のポケットからひょこっと顔を出したぼんちゃんを指す。
「はぁ……なんだ…良かった。私だけじゃないんだ……」
そういって見えるようになった経緯や、その時の心理状況をついでのように色々教えてくれた。
「最初はね、目の端にちらちら映る程度だったの。ほら、よくあるじゃん…こう、この辺にチラッとさ……」
身振り手振りで一生懸命教えてくれる里奈が新鮮で、思わずニコニコしてしまった。
だって…上手く言えないんだけれど、里奈はいつも間に一つ見えないモノを置いて距離を取る。
それはきっとわざとではなく無意識でなのだと判るんだけど、やっぱり少し寂しい。
周りではツンツンとかクールビューティーとかって言うけれど、万葉がいると全然違うのが判る。
安心しているのだと思う。だから、思いっきり笑うし大きい声も出す。
あれが普通なのかもしれない……そう思ったら、今までの里奈が私達に見せていた『里奈』は何だったんだ?
自然と疑問がわくくらい全然違う。
でも、そんな心の支えである万葉を想う事を止めるの?
そう思うけれど、里奈に関してはマイノリティのことでもある。
けど多分恐らく万葉は、友達としての里奈なら受け入れられるけれど、そういった意味では受け入れるのは難しいだろう…と、世間知らずな私にだって分かってしまった。
「高校に入ってから見えるようになったんだ。万葉のこと諦めろってことかなぁ?なんてね。その代わり、私の心を癒しに来てくれたのかもって思ったんだ」
膝を抱えて語る里奈の声が、気のせいか少し震えている。
泣きそうなのかもしれない。
ドラマや漫画なら『思いっきり泣きなよ』なんて言うんだろうけど、何となく言える雰囲気でもないので黙って聞いていた。アドバイスできる経験なんて、私にだってないからしょうがないよね。
そう無理やり思い込み、諦めて里奈の次の言葉を待つことにした。
「まぁ…万葉のことは自分でどうにか線引きするよ。よかったらまた聞いてくれるかな?」
だいぶ間があったけれど、里奈の泣き笑いな感じでこの話は終わった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら
瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。
タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。
しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。
剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
現実とサキュバスのあいだで ――夢で告白した相手が、同居を始めた話
そう
青春
ある日家に突然現れた謎のサキュバスのホルさん!
好感度はMAXなようで流されるがまま主人公はホルさんと日常を過ごします。
ほのぼのラブコメというか日常系小説
オチなどはなく、ただひたすらにまったりします
挿絵や文章にもAIを使用しております。
苦手な方はご注意ください。
ヤクザに医官はおりません
ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした
会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。
シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。
無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。
反社会組織の集まりか!
ヤ◯ザに見初められたら逃げられない?
勘違いから始まる異文化交流のお話です。
※もちろんフィクションです。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる