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49 超常現象体験
しおりを挟む泣き腫らして目を真っ赤にした両親と、美里ちゃんと崇ちゃんが病室で難しい話をしている。
ちなみに、私は今朝崇ちゃんが経営する会社の経営する病院に転院し、今日は少し前から出産準備の為入院している美里ちゃんも、車椅子に乗って病室に来てくれた。
いつもは不思議な存在が見えないお父さんだけど、お母さんが崇ちゃんにどうにか出来ないか…と相談して、どうにかして私を見えるようにしたらしい。
「ハルカ…ハルカ……なんてことだ。こんなことになって辛いのに…辛いのに、本物のエンジェルに会えるとは……」
本当ならシリアスな場面だろうに、お父さんのお陰で台無しな気がするのは、きっと私だけじゃないはず。だって、お母さんも苦笑いしてるし。
そんな大興奮のお父さんを置き去りにして、崇ちゃんは担当医の先生を交えて、お母さんと美里ちゃんに現状説明をした。
「今は……人間で言うところの"幽体離脱"状態でしょうか……ご当主の力の影響でこのような姿になっていますが……」
昏睡状態の私の頭に付けている脳波計を見ながら説明してくれたのは、偶然が偶然を呼んだ出来事だった……んだと思う。
普通なら…普通の人間なら、あのまま昏睡状態に陥り、しばらく後に植物人間状態もしくは死んでいただろうこと、私の身体に残る崇ちゃんの力のお陰で、肉体を離脱してもこうしていられること…。
「この姿になったのは…おそらくですが…いつも見えている者達のイメージが強く出たのかと思います。そしてこれが功を奏したのだと思います。この姿でなら、もうしばらくは猶予があるかと思います」
との見解だった。
猶予があるねぇ……。
あまりいい響きのない言葉。
やっぱり私、死んじゃうのかな……。
実感ないのは、この姿だからかな……。
自分が自分でなくなる……いや、まだ自分なんだけど…今までの自分でなくなる事実は、中々に受け入れ難い……気がする。
もう、あの時に…皆で楽しく部活したり勉強したり……始まったばかりの高校生活にはもう戻れないのだろうか…。
父母がいて怜くんがいて…妖精の彼女もぼんちゃんもいて……あの家に、生きて戻ることは出来ないのだろうか。
涙も声も出ない身体で、ベッドに横たわる自分を見る。
(せめてみんなに…お別れ言いたかったな。そして……宮田くんが悪いんじゃないよと言いたい。きっと宮田くんは気に病んでいる。気に病んで気に病んで、きっとダメになってしまう。大雑把に見えるけど、意外に繊細で真面目な宮田くん。彼の心が少しでも軽くなるように…)
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