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55 光あふれる世界
しおりを挟む今日はなんだか朝から身体がぽわぽわしている。
ここ最近は気分的にも若干落ち込んでいたから余計に違いが分かる。
(今日で入院してどれぐらい経ったんだろう?)
怜くんが日付も曜日も表示されるデジタルの時計を置いて行ってくれたけど、入院した日を正確に知らないから分からない……っていうか、今の私が日付や時間を知ったところで何になるのか……。
自分の本当の身体から遠く離れるわけにもいかないので、自分の行動範囲は広く見てもこの病院の敷地内……それも建物の外側に行こうとすると身体の力が抜ける。そんな検証を入院初期の頃にやってしまったせいか、諦めるのもだいぶ早かった。
(気のせいじゃなければ本体の血色もだいぶ悪いし……そろそろなの…かな……)
そんな風に…いつものように窓から外を見ながらボーっとしていた。
最近は天気が安定していることもあって看護師さんが窓を少し開けて行ってくれる。
まぁ…開けて言ってくれても外には行けないので、相変わらず窓辺でボーっとしているだけなのだけれど……。
(この周りのほわほわしたのってなんだろう…?)
朝から意識のない本体と私の周りを飛ぶ小さな光。
小さい時に美里ちゃんに教えてもらった、『妖精になる前の意識のない光』に似ている。
時間が経つにつれ増えていき、あと一時間程で日が沈むとなった今は、部屋の中は眩いばかりのほわほわ空間だ。
(今までこんなことになったことないけど…まぁ、この病院は普通の病院じゃないからね…)
フワフワと漂いながら、ベッドに横たわる身体の枕元に座ると、病室のドアが勢いよく開いた。
「はるかっ」
●○●○
すごい怖い顔でドアを開けた怜くん。
「はるかっ大丈夫かっ!」
広くない病室を小走りに駆け寄る怜くん。
『どうしたの?』と文字盤で聞くと、この部屋から光が漏れ出ているのが見えたらしい。
(これだろうなぁ…多分。)
そんな風に部屋を見回していたら、怜くんと一緒に来た崇ちゃんもベッド脇に来た。
今日の崇ちゃんは一段と妖精さん達を張り付かせている。
まぁ、ご当主様だもんね。ある妖精さんが夢見る乙女の目で語っていた。
『ご当主様の傍にいられるのってとっても素敵な事なのよ~。とっても心が安らぐし成長できるし♪』
妖精にとっての成長とは、力が増えてきて具現化力が強くなる事らしい。
きっと、いまここにあるほわほわ達もいずれ成長して、あの妖精さんやぼんちゃん達のようになるのかな?
「陽香?身体の感じはどうだ?」
珍しく崇ちゃんが聞いてきたので、『朝からぽわぽわしてるの。なんか考えてても、まぁいっかってなっちゃうの』と長文だったので疲れたけれど伝えたら、難しい顔で部屋の外にいた担当の先生と話をしに行ってしまった。
「陽香。今日は宮田と里奈と万葉が来てる。父さんからあの道具を借りてきたんだ。宮田にも陽香の姿が見えるようになる。いいか?」
宮田君?宮田君…みやたくん。
会いたかった人の顔が頭を過って、勢いよく頷く。
私の会いたかった人だ♪
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