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59 戸惑い
しおりを挟む『わたしはだいじょうぶ。かくごをきめるじかんはいっぱいあったから』
文字盤で記した言葉を呼んで、崇ちゃんの目が大きく見開いた。
宮田君も……そしていつの間にか窓際に来ていた怜くんも。
「は…るか?お前は何言ってんのか分かってんのか?死んじまうんだぞ?この世からいなくなっちまうんだぞっ!」
気が付けば応接セットの方にいた二人も、動きを止めてこっちを見ていた。
怜くん……それはしょうがないよ。
だって、運命ってやつだよきっと。
そう思ったけれど、身体が上手く動かなくて文字を紡げない……。
だってしょうがないじゃない。
……そう、これはしょうがない事なんだよ。
俯いたまま動けないでいると、どこからともなくぼんちゃんが来て、私の意思伝達を手伝ってくれた。
「陽香はな、迷惑かけてまで生きていたくないらしいぞ。今は勢いで契約できるけど、契約した後での心変わりが怖いらしい。こいつは…陽香はな、ボケボケしとるけど気を使う子なんだよ」
そう言って、今日の話し合いは一度解散した方が良いと提案してくれた。
その間宮田君は、ベッドに横たわる私を見つめ一言も発しなかった。
(きっとまた考え込んでる。宮田君が負う責任じゃないのに……)
●○●○
皆が帰ったあと崇ちゃんとぼんちゃん、担当の先生が病室に戻ってきた。
きっと私の身体の事だろう。
「陽香、少し話をしようか」
そう言うと、ふわっと光が強くなり目の前には妖精サイズの崇ちゃんがいた。
妖精サイズの崇ちゃん。
崇ちゃんに似ている妖精さんはやっぱり崇ちゃん本人だったらしい。
「陽香、よく聞いておくれね?」
そう前置きして話してくれたのは、怜くんや宮田君に話した事とは少し違うことだった。
それは……妖精族に古くから伝わる存在、妖精姫の誕生の兆しがあるとの予言と…その妖精姫が私である可能性がとても高い事。もし、私が妖精姫だった場合は崇ちゃんと美里ちゃんの養女となる話が出ている事。
それと、妖精となって生まれ変わっても、今までと何ら変わりない生活が送れること…崇ちゃんのように人間に紛れて生活が送れるように、チカラによるサポートもしてくれるらしいことだった。
『でも、宮田君と契約しないと今の身体も維持できないのでしょ?』
人外さん同士は言葉が話せなくても話が通じるので楽でいい。
あの場面では聞けなかったことを聞いてしまおうと思い、切り出してみた。
『陽香の場合は、今とてもチカラが弱っている。我々の通常状態であれば仮契約だけでも結べばどうにかなるのだけれど、今の陽香ではそれだけでは身体が維持できない。宮田君と……お互いが想う相手との契約でなければ意味がない。だから、できれば宮田君と契約してくれ。妖精姫の件が無くたって、陽香は俺の大事な家族だ。このまま手をこまねいて、みすみす命を消すようなことはしたくない。俺の…俺と美里気持ちも分かってくれ…』
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