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67 今どこに?
しおりを挟む俺はあの日倒れてから一週間目を覚まさなかったらしい。
夕方、パートが終わったあと毎日来てくれる母親が教えてくれた。倒れた日、病院から電話が来て、両親はだいぶあたふたしたらしい。まぁそうだろう普通は。
「けどさ、来てみて検査結果聞いたらさ、疲労が原因だっていわれてさぁ~」
ケラケラと笑いながら話す母親にも、あの日あったことは何も話していない。
まぁ、これも当たり前だ……と言っても、その当日の記憶はあの光の洪水にのまれれた以降の記憶がない。気が付いたら病院のベッドの上で、すでに一週間経っていた…という訳だ。
「ごめん…」
ケラケラ笑う母親に謝ると、急に真面目な顔をして軽くデコピンされた。
「こんなことで謝ってんじゃないわよ!あんた、だいぶ眠れない日が続いていたからね。いくら体力馬鹿でもゾンビみたいな顔して半月もいたんだから、そりゃ倒れるわよ~」
続けざまに背中をバンバン叩かれ咳き込んでしまった。そして『気にしないの~』と…『話ができるようになったら聞くから』…と言ってくれた。
「それにしても、だいぶいい個室よね~。一日いくらするのかしらぁ」
備え付けの洗面所で手を洗いながらブツブツと呟く。ここはこの病院でもグレードの高い個室……渡利が入院していた病室らしい。
りんごを剥き終わった母親は、洗濯物をササッとまとめて帰り支度を始め、また明日来るから…と言って帰って行った。
はぁ……
ため息をつくと、どこかでクスクスと笑う気がした。俺の空耳なのか……どこかに陽香がいるのか……まだ誰も知らない。
渡利のおじさんも美里さんも……永い時を生きると言う都築川さんっていう人も、こんなことは初めてだと言っていた。
あの日、危篤状態に陥った渡利の人間の身体は死を迎えようとしていた。
それと同時に、妖精化した渡利の身体も終わりを迎えようとしていたらしい。
恐らく、身体の中にあった人外のチカラが枯渇してきたのだろう…とのこと。
昔の文献に妖精姫のことが書かれているものもあったらしいのだけど、昔すぎて参考にならない。全ては予想。
ちなみに…俺が意識を失う前に呼んだ名が、おじさん達の言う"契約"と見なされたのかどうかは分からないけれど、人間の身体の方は危篤状態を抜けたらしい。今はおじさんの屋敷の方に移り、眠り姫状態らしい。
そして……あの小さな妖精化した渡利がいないだけで、もうすぐまた日常が始まってしまう。そんな訳で今はちょっと…いや…かなり落ち込んでいる。
「なぁ、お前…今どこにいるんだ?」
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