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96、魔道具を君に?

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トーマスさんに貰った魔道具……陽光のベールをすでに結い上げた髪の中に二本程さす。
陽光のベールは日本で使っていたヘアピンのような形をしており、全部で四本あった。
なので残りの二本は、今日はロイス様に使ってもらおうかと思っている。


何かあるとすれば今日が一番確立が高いだろうし、今日は余程の事がなければほぼ二人一緒に行動予定だから、魔道具を二手に分けても支障はない……と思う。


(何がどうなるのか。どんな条件でどう発動するのかお試しの機会もないからしょうがないけど……行くんだから身に付けていた方がいいんだろうな……)


そう思いながら、ロイスが待つ部屋に行きトーマスが持ってきた魔道具についてと、トーマスについても話す。転生者云々はやはりまだ内緒だ。まぁ話したところで、こんななんのチカラもない……とりわけ頭が切れるわけでもないモブっ子な自分に価値はないだろうが、精霊のこともある。必要のないことは話さないのが心配させないだろうことは見てわかるつもりだ。


「ロイス様……さほど大きい物でもございませんので、内ポケットのどこかに忍ばせておいて頂けませんか?」


そのままでは失くしてしまいそうだったヘアピン型の魔道具を小さな袋に入れ、そっと手渡すと素直に受け取ってくれた。


「これは先程の商人が?何度か王都でも見掛けたが……」


見覚えがあったようなので、もしかしたら拠点としている家で会っているかもしれないと言ったら、すんなりと思い出したようだった。




●◯●◯●



魔道具を付けて、二人揃って屋敷を出る。
不測の事態を考慮して、王城まで僅かといえど護衛付きの仰々しい出立となってしまったけれど、これもしょうのないことなのだろうと思う。闇の精霊がどのようなチカラを持っているのか、色々な文献を見ても解らず対処のしようがないからだ。


同じ精霊のソラならば解るだろうと思って聞けば、『ごめん。のチカラは解らないんだ。普通の精霊とは違うんだ…もしかしたら、は巫女なのかもしれない』そう言って、今は御者席に座り他の4精霊と共に、この馬車を……私とロイス様を護ってくれている。


「無事一日が過ぎれば良いのですが……」


純粋に今日の婚約式を喜べないのは少し悲しいけれど、あまり深く考えないようにした。


(考えてみれば前世では結婚式だってしない人多かったもんね。こうして順を追って色々できるのは幸せなことなのかもしれない)


そう思って窓から外を見ようと顔を上げた時、ソラが大きな叫び声が聞こえた。


『ジュリッ!逃げてっっ!!』


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