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交流編
(80)とある裏側③
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~ラーグ目線~
ジョゼフ__親父からそのチビの存在を伝えられた時には、今まで通り関わらなければいいと思っていた。
実際、俺は他人__特にガキが嫌いだった。
だって、そうだろう?
大人は、まだいい。
【混血】に対して、嫌な感情を持っていたとしてもある程度は隠す。
目を見ればある程度はわかるが、嫌ならば目を見なければいいんだ。
だが、子供は違う。
子供は、本能に忠実だ。
忠実だからこそ、その気持ちを体全体で表す。
幼ければ幼いほど。
今度来たチビは、今まで騎士団で保護されてきたガキの中でもっとも幼い年齢だった。
だから、近づきたくなかった。
俺を見て、泣くかもしれない。
ガキは、泣けば泣くほど体力を消耗し弱って衰弱していく。
俺のせいで死ぬ。
俺は、恐れられたくない。
俺は、ただ【混血】というだけで敵意もない。
なのにガキに恐れられ、その結果そのガキを殺す。
ガキは、本能に忠実で馬鹿で弱い。
ガキは、馬鹿であればあるほど死ぬ確率が高い。
何より、俺の力なら簡単に殺せる。
獣人の母親から来た、力の強さと素早さ。
リザードマンの父親から来た、体の頑丈さと能力。
俺の拳は、体は…………俺にその気がなくても簡単に凶器になる。
だからこそ、俺はガキが嫌い。
簡単に死ぬガキが。
俺を恐れるガキが。
本能に忠実なガキが。
馬鹿なガキが。
でも、そのチビは違った。
いや、違うというよりは違和感の塊だった。
まず、チビは馬鹿じゃなかった。
あの侵入事件の時が、俺の中で『団長が保護したガキ』から『違和感の塊のようなチビ』に変わった瞬間だった。
最初は面倒だと思い、チビに気づかれずにC級を潰そうかと考えていた。
俺は厨房担当の料理人だが、厨房と言う食料の集まった場所を守る担当でもある。
C級ぐらい、簡単に始末できる。
幸い俺は獣化しても【混血】である影響か、獣としての姿は人型の姿よりも小さい。
獣化した後に、リザードマンの能力を使えば小さい存在に化けることができる。
そう思って鼠の姿に変身してチビを見ていたが、その行動はあまりにもおかしかった。
敵を撹乱させるために罠を張ったり、敵の行動を予測したうえで行動したり。
あまりにも、普通のガキのする行動じゃなかった。
普通のガキってのは、こんな状況なら泣きわめいて周りを困らすだけだ。
現に、チビの近くにいたガキがその例だ。
…………いや、あれも違うか。
あれからは、同族の匂いともう一つ違う匂いがした。
たぶん、あのガキはリザードマンとなにかの【混血】。
少なくとも、匂いからして獣人ではない。
リザードマンの能力を持っているからこそ、黒い犬の獣人に変身したんだろうな。
それにしても、あの匂い…………どこかで。
匂いといえば、あのチビの匂いも不思議だ。
別に臭い匂いではない。
どちらかと言うと、ミルクのようなほんのり甘いような。
そんな感じの匂いだ。
例えるなら、まるで生まれたばかりの赤ん坊のような匂いだ。
別に不快感はないが、他の騎士があのチビを可愛がるのはその匂いもあるんだろうな。
…………まあ、見た目と違って中身は全く年相応じゃないが。
明らかに、体と精神の年齢があっていない。
だからこそ、会いたくなかった。
大人が精神のチビは、俺に出会ったらどういう反応をするのかが怖かった。
なのに、あのバカのせいで一緒に菓子を作る羽目になった。
何が悲しくて、大嫌いなガキなんかと菓子を作らなければいけない。
しかも、ガキに教えを乞う。
…………明らかに、俺達が教える側なはずなのに。
だから、ノーヴァに対する嫌がらせの意味で対価をつけた。
少しだけあのチビがどういう答えを出すのかは気になるが、俺はあのチビがどういう思想を持っているのかはどうでもいい。
どうせ、関わることはそうそうないからな。
そう思って陰から見ていたが、まさかの結果になった。
あのチビは、あろうことか自身よりも何倍も年齢が上のノーヴァを説教した。
しかも感情的にではなく、一番相手がしづらい方法で。
感情的に怒るより、冷静に正論で言われると抜け道がなくなる。
副団長がよくやる怒り方だが、まさかあのチビもそうだとは思わなかったな。
…………何よりあのチビの言葉は、少しだけ嬉しかった。
少なくとも、違和感は残るが俺は俺なりにあのチビに関わればいい。
少しだけ、菓子の件について前向きになれた気がした。
ジョゼフ__親父からそのチビの存在を伝えられた時には、今まで通り関わらなければいいと思っていた。
実際、俺は他人__特にガキが嫌いだった。
だって、そうだろう?
大人は、まだいい。
【混血】に対して、嫌な感情を持っていたとしてもある程度は隠す。
目を見ればある程度はわかるが、嫌ならば目を見なければいいんだ。
だが、子供は違う。
子供は、本能に忠実だ。
忠実だからこそ、その気持ちを体全体で表す。
幼ければ幼いほど。
今度来たチビは、今まで騎士団で保護されてきたガキの中でもっとも幼い年齢だった。
だから、近づきたくなかった。
俺を見て、泣くかもしれない。
ガキは、泣けば泣くほど体力を消耗し弱って衰弱していく。
俺のせいで死ぬ。
俺は、恐れられたくない。
俺は、ただ【混血】というだけで敵意もない。
なのにガキに恐れられ、その結果そのガキを殺す。
ガキは、本能に忠実で馬鹿で弱い。
ガキは、馬鹿であればあるほど死ぬ確率が高い。
何より、俺の力なら簡単に殺せる。
獣人の母親から来た、力の強さと素早さ。
リザードマンの父親から来た、体の頑丈さと能力。
俺の拳は、体は…………俺にその気がなくても簡単に凶器になる。
だからこそ、俺はガキが嫌い。
簡単に死ぬガキが。
俺を恐れるガキが。
本能に忠実なガキが。
馬鹿なガキが。
でも、そのチビは違った。
いや、違うというよりは違和感の塊だった。
まず、チビは馬鹿じゃなかった。
あの侵入事件の時が、俺の中で『団長が保護したガキ』から『違和感の塊のようなチビ』に変わった瞬間だった。
最初は面倒だと思い、チビに気づかれずにC級を潰そうかと考えていた。
俺は厨房担当の料理人だが、厨房と言う食料の集まった場所を守る担当でもある。
C級ぐらい、簡単に始末できる。
幸い俺は獣化しても【混血】である影響か、獣としての姿は人型の姿よりも小さい。
獣化した後に、リザードマンの能力を使えば小さい存在に化けることができる。
そう思って鼠の姿に変身してチビを見ていたが、その行動はあまりにもおかしかった。
敵を撹乱させるために罠を張ったり、敵の行動を予測したうえで行動したり。
あまりにも、普通のガキのする行動じゃなかった。
普通のガキってのは、こんな状況なら泣きわめいて周りを困らすだけだ。
現に、チビの近くにいたガキがその例だ。
…………いや、あれも違うか。
あれからは、同族の匂いともう一つ違う匂いがした。
たぶん、あのガキはリザードマンとなにかの【混血】。
少なくとも、匂いからして獣人ではない。
リザードマンの能力を持っているからこそ、黒い犬の獣人に変身したんだろうな。
それにしても、あの匂い…………どこかで。
匂いといえば、あのチビの匂いも不思議だ。
別に臭い匂いではない。
どちらかと言うと、ミルクのようなほんのり甘いような。
そんな感じの匂いだ。
例えるなら、まるで生まれたばかりの赤ん坊のような匂いだ。
別に不快感はないが、他の騎士があのチビを可愛がるのはその匂いもあるんだろうな。
…………まあ、見た目と違って中身は全く年相応じゃないが。
明らかに、体と精神の年齢があっていない。
だからこそ、会いたくなかった。
大人が精神のチビは、俺に出会ったらどういう反応をするのかが怖かった。
なのに、あのバカのせいで一緒に菓子を作る羽目になった。
何が悲しくて、大嫌いなガキなんかと菓子を作らなければいけない。
しかも、ガキに教えを乞う。
…………明らかに、俺達が教える側なはずなのに。
だから、ノーヴァに対する嫌がらせの意味で対価をつけた。
少しだけあのチビがどういう答えを出すのかは気になるが、俺はあのチビがどういう思想を持っているのかはどうでもいい。
どうせ、関わることはそうそうないからな。
そう思って陰から見ていたが、まさかの結果になった。
あのチビは、あろうことか自身よりも何倍も年齢が上のノーヴァを説教した。
しかも感情的にではなく、一番相手がしづらい方法で。
感情的に怒るより、冷静に正論で言われると抜け道がなくなる。
副団長がよくやる怒り方だが、まさかあのチビもそうだとは思わなかったな。
…………何よりあのチビの言葉は、少しだけ嬉しかった。
少なくとも、違和感は残るが俺は俺なりにあのチビに関わればいい。
少しだけ、菓子の件について前向きになれた気がした。
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