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霧の鬼編
(131)欠いた冷静さ
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~紗彩目線~
「切り裂き……ジャック……」
「よりによって、あの連続殺人鬼かよ」
仮面の男性__切り裂きジャックの言葉に、私とジャックさんに緊張が走る。
切り裂きジャックといえば、S級の連続殺人鬼。
しかも、なぜか女性ばかりを狙う変態…………じゃなかった連続殺人鬼。
倒れていた獣人の女性も、彼に狙われた被害者か。
「ねぇ、リトルレディ。そこから出て、私とお話ししましょう?」
「ねぇ、リトルレディ。あなたは、どんな色が好きですか?」
答えを求めていないのか、まるで歌うように言う切り裂きジャック。
どうしてだろう?
一見、普通の紳士にしか見えない。
片手に握られている大鎌さえなければ。
しかも、大鎌は赤色に濡れていて鈍い光を反射している。
…………新手のホラー映画か?
いや、この場合はサスペンス映画か。
どちらにしても、私はリアルな体験は遠慮したいな。
大鎌さえ持っていなければ、声からしてもイケメンそうなのにな……。
声がかっこよかったら、女性にもてそうなのに。
「ねぇ、リトルレディ。貴方には、そんな武骨な仮面は似合いませんよ。あなたに似合うのは、真っ赤な薔薇や真っ赤な血でしょう」
前言撤回、声がかっこよくても思想がアウトだった。
いや、なんで赤いバラの次に血が出てくるの?
無骨なお面って、ガスマスクのことですか?
…………あ、そう言えばガスマスクの存在をすっかり忘れていた。
主に目の前の人物のインパクトがいろいろな意味で強すぎて。
とりあえず、情報を見てみるか。
そう思いながらガスマスクに触れると、視界の中で青い文字があったと思えば複数の黒い文字が浮かび上がってくる。
【 個有スキル名:霧の国の悪鬼
内容:刃物を振ると斬撃(魔法属性は関係なし・属性によって色が違う)を飛ばすことができる
透明化ができる
デメリット:壁などをすり抜けることができない
相手が男だと、能力が半減する 】
情報を読み取って思ってしまったことが二つ。
…………このガスマスク、いろいろな意味で最強じゃない?
でも、名前が出てこないところが気になる。
そう思って何度か触れたけれど、目の前にい浮かぶのは【エラー】の文字だった。
そういえばレオンさんも何度も見ることはできないって言っていたけど、そこも反映されちゃったか。
でも、これで切り裂きジャックが女性ばかりを狙う理由がわかった。
男性相手だと能力が半減しちゃうから、そうならない女性ばかりを狙っていたのか。
しかも、透明化。
うん、厄介すぎる能力ばかりついてくるな。
デメリットは地味なくせに。
それに切り裂きジャックって言う名前なのに、個有スキル名も切り裂きジャックなの?
彼の親は、彼の個有スキル名をそのまま名前にしちゃったの?
もうちょっと、まともな名前を付けてあげようよ。
お爺ちゃんになった時に孫から「切り裂きジャックお爺ちゃん」って呼ばれるんだよ?
私だったら泣きながら改名するし、親に殺意持ちそうだわ。
「ああ、リトルレディ。何故、そのような年端もいかない餓鬼などと一緒にいるのですか? そんな餓鬼と一緒にいても、楽しくはないでしょう?」
切り裂きジャックの言葉に、私は思ってしまった。
紳士を自称するんなら、しっかりと紳士らしくしなさい。
少なくとも、紳士は子供のことを餓鬼とは言いません。
もうやだ、この名前が可哀そうな変態殺人鬼。
思わず何度目かわからないけれどひいてしまい、無意識に後ろに下がろうとしてジャックさんに当たってしまった。
謝ろうと後ろを振り向くと、怪我の止血を終えたジャックさんが何かをしている。
「ねぇ、リトルレディ。あなたは、白色には何が似合うと思いますか? 私はそうですねぇ____赤色でしょうか?」
確かに紅白はめでたいけど、あんたが言うとやって来るのはめでたいことじゃなくて血みどろの惨劇でしょ。
あと、白には青も似合うと思います。
「ああ、ああ。リトルレディ、あなたはなんて真っ白な肌をしているのでしょう!! とても小さくて、とても真っ白。なんと美しいお人形なのでしょう」
「ッ!? お人形?」
「ええ、ええ。とても美しいお人形。真っ白な肌を赤く染めれば、きっともっと美しくなるでしょう。…………ああ、ゾクゾクしてきます」
切り裂きジャックの言葉に、私はもう心の中で泣きそうになってしまった。
この切り裂きジャックは名前が可哀そうな変態殺人鬼じゃなくて、人形に興奮する性癖を持った変態殺人鬼だったんだと。
この人、人形に対して興奮するの?
いや、別にそういう性癖の人もいるのかもしれないんだろうけど、できればそういうことは公言しないでほしいんだけど。
他の人は知らないけど、私は紳士(仮)の性癖なんて知りたくなかったんだけど。
え、なに?
この世界には、かわった性癖の人しかいないの?
実は、シヴァさんたちもかわった性癖を持っているの?
私も、ちょっとアレな性癖を持った方がいい?
私は、混乱していた。
冷静に考えなければいけないのに、冷静さを欠いてしまった。
そして、冷静さを欠いてしまったからこそ気づかなかった。
結界にできていたヒビに。
ガッシャンッ!!
そんな大きな音と共に近づいてきた黒に、私はようやくそのヒビの存在に気づいた。
「うわっ」
「ふふふ、元気ですねぇリトルレディ。
______つ・か・ま・え・た」
「切り裂き……ジャック……」
「よりによって、あの連続殺人鬼かよ」
仮面の男性__切り裂きジャックの言葉に、私とジャックさんに緊張が走る。
切り裂きジャックといえば、S級の連続殺人鬼。
しかも、なぜか女性ばかりを狙う変態…………じゃなかった連続殺人鬼。
倒れていた獣人の女性も、彼に狙われた被害者か。
「ねぇ、リトルレディ。そこから出て、私とお話ししましょう?」
「ねぇ、リトルレディ。あなたは、どんな色が好きですか?」
答えを求めていないのか、まるで歌うように言う切り裂きジャック。
どうしてだろう?
一見、普通の紳士にしか見えない。
片手に握られている大鎌さえなければ。
しかも、大鎌は赤色に濡れていて鈍い光を反射している。
…………新手のホラー映画か?
いや、この場合はサスペンス映画か。
どちらにしても、私はリアルな体験は遠慮したいな。
大鎌さえ持っていなければ、声からしてもイケメンそうなのにな……。
声がかっこよかったら、女性にもてそうなのに。
「ねぇ、リトルレディ。貴方には、そんな武骨な仮面は似合いませんよ。あなたに似合うのは、真っ赤な薔薇や真っ赤な血でしょう」
前言撤回、声がかっこよくても思想がアウトだった。
いや、なんで赤いバラの次に血が出てくるの?
無骨なお面って、ガスマスクのことですか?
…………あ、そう言えばガスマスクの存在をすっかり忘れていた。
主に目の前の人物のインパクトがいろいろな意味で強すぎて。
とりあえず、情報を見てみるか。
そう思いながらガスマスクに触れると、視界の中で青い文字があったと思えば複数の黒い文字が浮かび上がってくる。
【 個有スキル名:霧の国の悪鬼
内容:刃物を振ると斬撃(魔法属性は関係なし・属性によって色が違う)を飛ばすことができる
透明化ができる
デメリット:壁などをすり抜けることができない
相手が男だと、能力が半減する 】
情報を読み取って思ってしまったことが二つ。
…………このガスマスク、いろいろな意味で最強じゃない?
でも、名前が出てこないところが気になる。
そう思って何度か触れたけれど、目の前にい浮かぶのは【エラー】の文字だった。
そういえばレオンさんも何度も見ることはできないって言っていたけど、そこも反映されちゃったか。
でも、これで切り裂きジャックが女性ばかりを狙う理由がわかった。
男性相手だと能力が半減しちゃうから、そうならない女性ばかりを狙っていたのか。
しかも、透明化。
うん、厄介すぎる能力ばかりついてくるな。
デメリットは地味なくせに。
それに切り裂きジャックって言う名前なのに、個有スキル名も切り裂きジャックなの?
彼の親は、彼の個有スキル名をそのまま名前にしちゃったの?
もうちょっと、まともな名前を付けてあげようよ。
お爺ちゃんになった時に孫から「切り裂きジャックお爺ちゃん」って呼ばれるんだよ?
私だったら泣きながら改名するし、親に殺意持ちそうだわ。
「ああ、リトルレディ。何故、そのような年端もいかない餓鬼などと一緒にいるのですか? そんな餓鬼と一緒にいても、楽しくはないでしょう?」
切り裂きジャックの言葉に、私は思ってしまった。
紳士を自称するんなら、しっかりと紳士らしくしなさい。
少なくとも、紳士は子供のことを餓鬼とは言いません。
もうやだ、この名前が可哀そうな変態殺人鬼。
思わず何度目かわからないけれどひいてしまい、無意識に後ろに下がろうとしてジャックさんに当たってしまった。
謝ろうと後ろを振り向くと、怪我の止血を終えたジャックさんが何かをしている。
「ねぇ、リトルレディ。あなたは、白色には何が似合うと思いますか? 私はそうですねぇ____赤色でしょうか?」
確かに紅白はめでたいけど、あんたが言うとやって来るのはめでたいことじゃなくて血みどろの惨劇でしょ。
あと、白には青も似合うと思います。
「ああ、ああ。リトルレディ、あなたはなんて真っ白な肌をしているのでしょう!! とても小さくて、とても真っ白。なんと美しいお人形なのでしょう」
「ッ!? お人形?」
「ええ、ええ。とても美しいお人形。真っ白な肌を赤く染めれば、きっともっと美しくなるでしょう。…………ああ、ゾクゾクしてきます」
切り裂きジャックの言葉に、私はもう心の中で泣きそうになってしまった。
この切り裂きジャックは名前が可哀そうな変態殺人鬼じゃなくて、人形に興奮する性癖を持った変態殺人鬼だったんだと。
この人、人形に対して興奮するの?
いや、別にそういう性癖の人もいるのかもしれないんだろうけど、できればそういうことは公言しないでほしいんだけど。
他の人は知らないけど、私は紳士(仮)の性癖なんて知りたくなかったんだけど。
え、なに?
この世界には、かわった性癖の人しかいないの?
実は、シヴァさんたちもかわった性癖を持っているの?
私も、ちょっとアレな性癖を持った方がいい?
私は、混乱していた。
冷静に考えなければいけないのに、冷静さを欠いてしまった。
そして、冷静さを欠いてしまったからこそ気づかなかった。
結界にできていたヒビに。
ガッシャンッ!!
そんな大きな音と共に近づいてきた黒に、私はようやくそのヒビの存在に気づいた。
「うわっ」
「ふふふ、元気ですねぇリトルレディ。
______つ・か・ま・え・た」
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