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6.無意識の行動
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夜になってもオーくんは帰ってこない。
一体どこで何をしているのか見当も付かない。
「もしかして…今までの全部夢…??」
言いようのない不安に駆られて、バッグを見に行く。
「?!…いっ…たぁ」
真っ暗なのに電気もつけずにソファから立ち上がって、走り出してしまった為何かに躓いて転んでしまった。
体の至る所が痛むが、そんなことよりも早く確認がしたくて携帯のライトをつけてバッグを探す。
直ぐにそれは見つかり、ライトに照らされたバッグに恐る恐る近付く。
「あっ……」
鬼のストラップは、バッグのどこにも付いていなかった。
「夢じゃ、ない」
安心して思わずその場にへたり込んでしまう。
いまだ本人は不在であるものの、一緒にいた彼は間違いなく現実だという事実に言いようのない感情が湧き立つ。
「安心したら痛くなってきた…」
幾分か落ち着きを取り戻した私は、怪我の具合を確かめる為にも電気をつけようと立ち上がる。
その時だった、
突然ぶわりと暗闇の中を一つの風が吹き抜けた。……もしかして帰ってきたの…??
「ただいま帰りました……おや?電気もつけずに何をしてるんですか?」
「オーくん…!!!」
「おっと」
部屋の明かりを付け、こちらに微笑むオーくんの胸に私は勢いよく飛び込んだ。
「帰ってこないと思った…!!」
「…不安な思いをさせてすみません」
何なく私を受け止め、ぎゅっと抱き締め返してくれるオーくんの胸に頭をぐりぐり擦り付ける。
「直ぐに帰ってくると思ってたのに帰ってこないし……また、私一人ぼっちになっちゃうかと…!」
「私が天音を一人ぼっちにさせるわけがないじゃないですか」
語りかけてくるオーくんの声色はひどく優しくて、先ほどまでの不安や恐怖が一気に和らいでいく。
「本当に?」
「はい、ずっと貴女の側にいますよ」
「うん…」
髪を撫でる手は心地良く、その言葉に安心したからなのか心が落ち着いていくのが自分でもよくわかった。
「…オーくん」
「はい」
「オー、くん」
「…はい、天音」
何度も呼びかける私に呆れた様子もなく、真摯に答えてくれるオーくん。きっと私の不安に気付いてる。
「…パパとママみたいに突然いなくなったりしないでね…」
「約束します」
「…絶対だよ」
家族の繋がりがなくなって、まさかまたこうして誰かと繋がりを持てるなんて思ってなかった。
たとえ相手が人間ではないとしても、私には関係なかった。
「天音がどんなに嫌と言っても離れるつもりはありませんからご心配なく」
「へへ…ありがとう」
不確かな約束だとしても、オーくんがそう言ってくれるだけで安心する。
あ、そういえば…。
「それにしても、こんなに遅くまで何やってたの…?出ていく時も教えてくれなかったけど…?」
「ああ、それはですね…」
言葉を濁すオーくんに思わずじとりとした目で見てしまう。
何?私にも言えない様なことしてきたの。
「何と言いますか、その…関係各所に根回し…というか……は、話し合いです!」
「嘘っぽーい」
先程までの淀みなくスラスラと話していた彼はどこへ行ったのやら。
歯切れの悪さに、余程言いたくないことなのだろうと少し悲しくなった。
「私にも言えないことなの?」
「あっ…その顔やめてください…」
「だって…本当に心配だったんだもん」
「うっ…!!」
何でオーくんがさっきからダメージを食らったような反応してるの。
「ちゃ、ちゃんと家でいい子にしてましたか?」
「言いつけ通り、学校には風邪引いたって嘘ついちゃったけど、連絡してお休みしました」
「えらいです」
頭をよしよしと撫でられ、ふわふわとした気持ちになる。オーくんに頭撫でられるのは好きだなあ。
「ん、」
「まずい、な…」
もっとして欲しいと無意識に頭を手に押し付けていたらしい。
オーくんが赤面しながら理性と戦っていたとは露知らず、私はそれをしばらく堪能していた。
「はっ!!!話が逸れてる!!!」
「ほら、もう寝る時間ですよ」
「…オー、くん…」
結局何をしていたのか聞きそびれてしまったが、オーくんの私を見つめる眼差しがあまりにも甘く思わず言い淀んでしまう。
「……そういえば、私も先ほどからずっと気になっていたことがあるのですが、」
「ん…?」
クンっと何かを嗅ぐ仕草をするオーくんに、自分がまだお風呂に入っていない事を思い出す。
ま、まさか臭かった?!!嫌だ、臭くて嫌われるのだけは絶対に嫌だ!!!それなのに私ったら嬉しさのあまり飛びついてるじゃん…!最悪だ!!!!
「ごっ、ごめん直ぐお風呂…!!」
「いえ…そうではなく、」
離れかけた手が再び私の肩を掴み、私の至る所を嗅ぎ始めた。
本当に勘弁してください…!!!!
「オーくん…、ちょっ…んっ…!」
つむじから始まり、首、胸、お腹…布越しにオーくんの顔が当たるたびに意識しないわけがなかった。
「…っ…」
恥ずかしさのあまり目をぎゅっと瞑り、ただただこの行為が終わるのを待ち続けた。
「んっ…見つけた…」
「んぇっ…???」
何を見つけたのだろうか?
そろりと目を開けばオーくんは屈んでいた。視線の先は私の膝。
「ここ、血が出てます。どうしたんですか?」
「血…?……あぁ…」
かなり恥ずかしかったが、私はオーくんが帰ってくる前の出来事を掻い摘んで話した。
「本当に…貴女って人は…」
「あの時は必死だったんだもん…」
少量だが血が滲んでいる。どうりで痛いはずだ。
「消毒するから、ちょっと離れて…欲しいです」
「……」
何故か膝を見続けるオーくん。声をかけても返事がない。……何で??
もう一度声をかけようとした、その時だった。
突如膝に感じるざらりとした触感。待って…待って!!?!
「ちょ、オーくん?!?」
「…んっ…」
それは間違いなく彼の舌で。
傷口にゆっくりと唇を這わせ、血を舐めとる様に真っ赤な舌を動かしている。
「あっ、あの?!えっ、なん…!??!」
唾液を含ませているのか、ぴちゃりと小さな水音が聞こえ、とてつもない恥ずかしさで頭がどうにかなってしまいそうだ。
あたふたしていると、傷口から少し口を離した彼は一言、
「動かないでください」
「…すみません」
何故か真剣にそう言われ、反射で謝ってしまった…。
私は微動だにできなくなってしまい、ただその光景を半目で見ていたのだが、何というか…エロい。
「よし、終わりましたよ」
「…ん、あれ?」
ペロリと唇を舐めるオーくんを視界から無理やり離し自分の膝を見れば、確かにあったはずの怪我が治ってた。痛みも消えてる。
「えっ?!治ってる!!!」
「はい、治しましたよ」
まさかあの…行為が治療だったなんて!!私一人恥ずかしがってたのがバカみたいじゃん!!!
「さ、最初からそう言ってよおお…」
痛みが綺麗さっぱり無くなったことは有り難いが、あの時間は私にとって刺激的すぎた。
「ふふ、すみません…ああしないと治せないもので」
(本当は舐めなくても治せるんですけど)
「いや、まあ…ありがとう」
「どういたしまして。次も怪我したらちゃんと私に行ってくださいね、治しますから」
何故か満面の笑みを浮かべてるオーくんを見て、何とも言い難い悪寒が走り、今後怪我をしない様に気を付けようと固く決意した。
「天音」
「……ん?何??」
「明日からは平穏な生活が戻ってますよ」
「…え、それって…」
私が何かを発するより先に、オーくんの手が私の瞼に覆い被さる。
それと同時に急激な眠気が襲ってきて、私は抗う事もできずオーくんの腕の中で眠りについた。
結局何してたか聞けなかったなと意識を失う寸前、頭をよぎったが、まあいいか。
「おやすみ天音、良い夢を」
一体どこで何をしているのか見当も付かない。
「もしかして…今までの全部夢…??」
言いようのない不安に駆られて、バッグを見に行く。
「?!…いっ…たぁ」
真っ暗なのに電気もつけずにソファから立ち上がって、走り出してしまった為何かに躓いて転んでしまった。
体の至る所が痛むが、そんなことよりも早く確認がしたくて携帯のライトをつけてバッグを探す。
直ぐにそれは見つかり、ライトに照らされたバッグに恐る恐る近付く。
「あっ……」
鬼のストラップは、バッグのどこにも付いていなかった。
「夢じゃ、ない」
安心して思わずその場にへたり込んでしまう。
いまだ本人は不在であるものの、一緒にいた彼は間違いなく現実だという事実に言いようのない感情が湧き立つ。
「安心したら痛くなってきた…」
幾分か落ち着きを取り戻した私は、怪我の具合を確かめる為にも電気をつけようと立ち上がる。
その時だった、
突然ぶわりと暗闇の中を一つの風が吹き抜けた。……もしかして帰ってきたの…??
「ただいま帰りました……おや?電気もつけずに何をしてるんですか?」
「オーくん…!!!」
「おっと」
部屋の明かりを付け、こちらに微笑むオーくんの胸に私は勢いよく飛び込んだ。
「帰ってこないと思った…!!」
「…不安な思いをさせてすみません」
何なく私を受け止め、ぎゅっと抱き締め返してくれるオーくんの胸に頭をぐりぐり擦り付ける。
「直ぐに帰ってくると思ってたのに帰ってこないし……また、私一人ぼっちになっちゃうかと…!」
「私が天音を一人ぼっちにさせるわけがないじゃないですか」
語りかけてくるオーくんの声色はひどく優しくて、先ほどまでの不安や恐怖が一気に和らいでいく。
「本当に?」
「はい、ずっと貴女の側にいますよ」
「うん…」
髪を撫でる手は心地良く、その言葉に安心したからなのか心が落ち着いていくのが自分でもよくわかった。
「…オーくん」
「はい」
「オー、くん」
「…はい、天音」
何度も呼びかける私に呆れた様子もなく、真摯に答えてくれるオーくん。きっと私の不安に気付いてる。
「…パパとママみたいに突然いなくなったりしないでね…」
「約束します」
「…絶対だよ」
家族の繋がりがなくなって、まさかまたこうして誰かと繋がりを持てるなんて思ってなかった。
たとえ相手が人間ではないとしても、私には関係なかった。
「天音がどんなに嫌と言っても離れるつもりはありませんからご心配なく」
「へへ…ありがとう」
不確かな約束だとしても、オーくんがそう言ってくれるだけで安心する。
あ、そういえば…。
「それにしても、こんなに遅くまで何やってたの…?出ていく時も教えてくれなかったけど…?」
「ああ、それはですね…」
言葉を濁すオーくんに思わずじとりとした目で見てしまう。
何?私にも言えない様なことしてきたの。
「何と言いますか、その…関係各所に根回し…というか……は、話し合いです!」
「嘘っぽーい」
先程までの淀みなくスラスラと話していた彼はどこへ行ったのやら。
歯切れの悪さに、余程言いたくないことなのだろうと少し悲しくなった。
「私にも言えないことなの?」
「あっ…その顔やめてください…」
「だって…本当に心配だったんだもん」
「うっ…!!」
何でオーくんがさっきからダメージを食らったような反応してるの。
「ちゃ、ちゃんと家でいい子にしてましたか?」
「言いつけ通り、学校には風邪引いたって嘘ついちゃったけど、連絡してお休みしました」
「えらいです」
頭をよしよしと撫でられ、ふわふわとした気持ちになる。オーくんに頭撫でられるのは好きだなあ。
「ん、」
「まずい、な…」
もっとして欲しいと無意識に頭を手に押し付けていたらしい。
オーくんが赤面しながら理性と戦っていたとは露知らず、私はそれをしばらく堪能していた。
「はっ!!!話が逸れてる!!!」
「ほら、もう寝る時間ですよ」
「…オー、くん…」
結局何をしていたのか聞きそびれてしまったが、オーくんの私を見つめる眼差しがあまりにも甘く思わず言い淀んでしまう。
「……そういえば、私も先ほどからずっと気になっていたことがあるのですが、」
「ん…?」
クンっと何かを嗅ぐ仕草をするオーくんに、自分がまだお風呂に入っていない事を思い出す。
ま、まさか臭かった?!!嫌だ、臭くて嫌われるのだけは絶対に嫌だ!!!それなのに私ったら嬉しさのあまり飛びついてるじゃん…!最悪だ!!!!
「ごっ、ごめん直ぐお風呂…!!」
「いえ…そうではなく、」
離れかけた手が再び私の肩を掴み、私の至る所を嗅ぎ始めた。
本当に勘弁してください…!!!!
「オーくん…、ちょっ…んっ…!」
つむじから始まり、首、胸、お腹…布越しにオーくんの顔が当たるたびに意識しないわけがなかった。
「…っ…」
恥ずかしさのあまり目をぎゅっと瞑り、ただただこの行為が終わるのを待ち続けた。
「んっ…見つけた…」
「んぇっ…???」
何を見つけたのだろうか?
そろりと目を開けばオーくんは屈んでいた。視線の先は私の膝。
「ここ、血が出てます。どうしたんですか?」
「血…?……あぁ…」
かなり恥ずかしかったが、私はオーくんが帰ってくる前の出来事を掻い摘んで話した。
「本当に…貴女って人は…」
「あの時は必死だったんだもん…」
少量だが血が滲んでいる。どうりで痛いはずだ。
「消毒するから、ちょっと離れて…欲しいです」
「……」
何故か膝を見続けるオーくん。声をかけても返事がない。……何で??
もう一度声をかけようとした、その時だった。
突如膝に感じるざらりとした触感。待って…待って!!?!
「ちょ、オーくん?!?」
「…んっ…」
それは間違いなく彼の舌で。
傷口にゆっくりと唇を這わせ、血を舐めとる様に真っ赤な舌を動かしている。
「あっ、あの?!えっ、なん…!??!」
唾液を含ませているのか、ぴちゃりと小さな水音が聞こえ、とてつもない恥ずかしさで頭がどうにかなってしまいそうだ。
あたふたしていると、傷口から少し口を離した彼は一言、
「動かないでください」
「…すみません」
何故か真剣にそう言われ、反射で謝ってしまった…。
私は微動だにできなくなってしまい、ただその光景を半目で見ていたのだが、何というか…エロい。
「よし、終わりましたよ」
「…ん、あれ?」
ペロリと唇を舐めるオーくんを視界から無理やり離し自分の膝を見れば、確かにあったはずの怪我が治ってた。痛みも消えてる。
「えっ?!治ってる!!!」
「はい、治しましたよ」
まさかあの…行為が治療だったなんて!!私一人恥ずかしがってたのがバカみたいじゃん!!!
「さ、最初からそう言ってよおお…」
痛みが綺麗さっぱり無くなったことは有り難いが、あの時間は私にとって刺激的すぎた。
「ふふ、すみません…ああしないと治せないもので」
(本当は舐めなくても治せるんですけど)
「いや、まあ…ありがとう」
「どういたしまして。次も怪我したらちゃんと私に行ってくださいね、治しますから」
何故か満面の笑みを浮かべてるオーくんを見て、何とも言い難い悪寒が走り、今後怪我をしない様に気を付けようと固く決意した。
「天音」
「……ん?何??」
「明日からは平穏な生活が戻ってますよ」
「…え、それって…」
私が何かを発するより先に、オーくんの手が私の瞼に覆い被さる。
それと同時に急激な眠気が襲ってきて、私は抗う事もできずオーくんの腕の中で眠りについた。
結局何してたか聞けなかったなと意識を失う寸前、頭をよぎったが、まあいいか。
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