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第十一章

レム?(天竜過去編)

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 会議は電脳空間サイバースペースで、全員参加で行われた。
 
 ただし、発言権は一部の人しかない。もちろん、僕みたいな子供に発言権があるわけなく、傍聴者オブザーバーとしての参加だ。全員参加というより、ネット公開するから、見たい奴は見に来ていいぞというだけ。ただし、多数決を取る時は投票に参加できる。
 楊さんはエリートだから、発言権はあるみたいだけど、電脳空間サイバースペースの楊さんと、生身の楊さんとどちらが発言権を持つかで少し揉めて、結果、生身の方に発言権が与えられた。
 生身の方が、アーニャと直接関わったからだ。電脳空間サイバースペースの楊さんではアーニャから何も聞いていないし……

 会議場の中央に、小熊のようなキャラクターが現れた。これはアーニャのアバター。ちなみに僕のアバターはパンダだ。

 小熊が会議場のみんな向かって挨拶した。

「私はアーニャ・マレンコフ。《天竜》の皆さん。宇宙を漂っていた私を、救って頂きありがとうございました」

 小熊は深々と頭を下げる。

「私が乗っていた船は、マトリョーシカ号でした。私はその船から逃げ出してきたのです」

 会議場の中が一斉にざわついた。

「皆さんの認識ではマトリョーシカ号は、三十年前に行方不明になったそうですね。私の認識では、事件が起きたのは数日前なのです。ただ、私はその後、仲間に起こされるまでは、休眠状態にあったため、時間の感覚がおかしくなっているようです。いったい何が起きたのか、正直言うと私もよく分からないのです。ただ、分かっているのはマトリョーシカ号がレムという存在に乗っ取られ、宇宙条約で禁止されている侵略行為を始めた事。そして地球の船……つまり《天竜》が近づいてくる事を察知したレムは、《天竜》の破壊を目論んでいる事です。私はこの危機を皆さんに伝えて、レムと戦ってもらうために送り出されました」

 白い兎のアバターが発言を求めた。

「戦うと言われても、そもそもレムとは何者なのかね? どんな力を持っている? 聞くところによると、電脳空間サイバースペース内にいる多数の人格が融合して生まれた統合人格だというが……」
「レムの関しては、私もよく分からないのです。電脳空間サイバースペースの中で、私が認識できるのは、その中に作られた仮想現実バーチャルリアリティだけで、その裏にあるプログラムを見ないとレムの正体は分からないと思います」
仮想現実バーチャルリアリティの中だけでいいから、言ってほしい。レムとはどのようなアバターを使っていた?」
「レムに明確なアバターはありません。仮想現実バーチャルリアリティの中で黒い霧のような姿をしていました。ただ、その霧の中に、無数の人の顔が見えるのです。それは、恐らくレムに飲み込まれてしまった人達の顔だと思うのです」
「飲み込む?」
「私が見た感じでは、黒い霧は他人のアバターを包み込んで分解してしまうのです。私はそれを飲み込むと言ってました」
「では、その事はいいとして、レムという存在はマトリョーシカ号を完全に支配下に置いていて、その装備で、我々を攻撃してくるというのだね?」
「そうです。だから、あなたたちにレムと戦ってほしいのです」
「戦えと言われても、この船には宇宙で戦える兵器はない」
「兵器に関しては大丈夫です。この船にないというのは、兵器のデータがないという事ですね。データは私が乗って来たカプセルの中に入っています。この船のプリンターにかければ兵器を出力できます」

 狐のアバターが発言を求めた。

「確かに君の乗ってきたカプセルの中に、データカードがあった。まだ、中を見ていないが、そのカードに兵器のデータのあるのかね?」
「そうです」
「それは良いのだが、一緒にマテリアルカーリッジも入っていたが、まさかあんな物騒なものも使えというのか?」

 マテリアルカートリッジが物騒? どういう事だろ?
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