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第十二章

砲兵陣地

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 このままだと、十分もしないうちに三つの橋で同時に戦闘が始まる。こっちも戦力を三つに分散するべきか? それとも、各個撃破?

 いや、各個撃破の余裕はない。三つの橋の一つでも突破されて町に進入されたら、大きな損害が出るだけでなく《イサナ》からの誘導弾や、潜水艦からの艦砲射撃など、町に被害を出しそうな兵器が使えなくなる。

 戦線を維持しながらレイラ・ソコロフを捜し出して和平を進めるか、無理なときは町に入られる前に《イサナ》から誘導弾で攻撃。

 だが、相手は反帝国勢力。できれば、穏便に済ませたい。

「西の橋はミール。僕と芽依ちゃんは南の橋。Pちゃんはドローンを動員して北の橋を守ってくれ」

 それぞれに指示を出した後、僕はキラの方を振り返る。

「キラは、ここを守ってくれ」
「ここを?」
「もし、僕が攻め手ならここを狙うはずだ」

 考えすぎかもしれないが、大軍で正面から押し寄せている間に、小部隊を町内に進入させて町役場を襲撃する可能性もある。あるいは昨日のうちから、町内に部隊を潜ませているかもしれない。

 もし、僕が攻め手側なら絶対にそうする。

「ここをガラ空にするわけには行かない。キラには、ここを守っていてほしい」
「分かった」
「お兄ちゃん。あたしは?」
「ミクは引き続き、空からエラを捜してくれ。それと、堀を渡ってきそうな奴がいたら、潰しておいてくれ」
「うん。分かった」

 アーニャの方を向く。

「引き続き、ここの指揮をお願いします。レイラ・ソコロフを見つけたら連絡してください」
「ええ、分かったわ。でも、その前に……」
「何でしょう?」
「さっきの砲兵陣地を先に占領しなさい」
「占領? 潰すのではなくて……」
「ええ。敵は大砲を合図に攻撃を開始した。という事は、あの砲兵隊は何らかの方法で、レイラ・ソコロフからの指令を受け取っているはずです。隊長を捕まえれば、レイラ・ソコロフの居場所が分かるかもしれません」
「なるほど」

 いや、考えてみれば当然だな。

「しかし、砲兵陣地を占領している間に南の橋を……」
「それは、《水龍》と《海龍》からの艦砲射撃で防ぎます。君達はその間に砲兵陣地を占領しなさい」
「艦砲射撃で? 大丈夫ですか? 橋ごと破壊しかねないですよ」
「大丈夫。八十ミリ電磁砲レールキャノンの精密射撃なら、橋を壊さずに弾幕を張れるわ」
「分かりました」

 僕と芽依ちゃんは、テラスから外へ飛び出した。
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