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第十二章
轟く砲声
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とりあえず、ロンロンと連絡を取ってみた。
『レイラ・ソコロフの本陣らしき陣地はまったく見あたりません』
「分かった。引き続きたのむ」
ちょうどその時、Pちゃんが、包帯だらけになったアルダーノフを車椅子に乗せて連れてきた。
「ご主人様。ヴィクトル・アルダーノフを連行しました」
イモムシ状態で床に転がっていたデポーラが、アルダーノフの姿を見て爆笑する。
「ギャハハハハ! どこのミイラ男かと思ったら、アルダーノフのオヤジかよ! いいザマだな!」
こいつら、普段から仲が悪いようだな。悪党同士仲良くできんものか……いや、されても困るが……
「へ! どこのイモムシかと思ったら、小便たれのデポーラかよ。無様だな」
「んだとう! てめえ……おい町長! アルダーノフの賞金額はいくらだ!?」
アルダーノフも賞金首だったのか。
デポーラに質問された町長は、秘書に尋ねてから答えた。
「金貨三十枚よ」
「ギャハハハハハ! だっせー! たった三十枚かよ! アタイなんか金貨百枚だぜ!」
おいおい……自分に掛けられた賞金額を自慢して、どないすんじゃ!
あ! 賞金と聞いて、ミールが目を輝かして町長にすり寄っている。
「町長さん。アルダーノフの賞金もいただけますか?」
「ええ……戦いが終わったら……」
「カイトさん。ちゃっちゃっと戦い終わらせちゃいましょう」
だから、そのためにもレイラ・ソコロフを探し出して、和平交渉を……あ! そのためにアルダーノフを連れてきたんだ。
僕はアルダーノフの傍らに寄った。
「アルダーノフ。レイラ・ソコロフの居場所はどこだ?」
「け! 誰が教えるか」
「言わないなら、魔法を使って何もかも聞き出すぞ。そうなると喋らなくて済むことまで喋る事になるが……」
「魔法だと!?」
アルダーノフはギョッとして、床に転がっているデポーラに視線を向けた。
続いて正座しているデポーラに視線を移動。
「分身魔法か?」
「知っているのか? 分身魔法で作られた分身は、術者の命令に逆らえないって」
「知っている。この前、それをされたばかりだからな」
「されたって? 誰に?」
「レイラ・ソコロフの部下に分身魔法使いがいるんだよ。そいつに俺の分身を作られてな……」
「なるほど。で、どうする? レイラ・ソコロフの居場所をこのまま黙っているなら、君の分身を作るけど」
「それだけは勘弁してくれ」
「じゃあ、話してくれるかい?」
「それが、知らないんだ」
「ミール。魔法の準備を」
「はーい!」
「待ってくれ! 俺は本当に知らないんだ。ほら、こいつ」
デポーラの分身を指さす。
「デポーラの分身からは聞いたのだろう? こいつも知らないと言っていたはずだ」
「じゃあ、レイラ・ソコロフはどうやって、攻撃の指示を出すんだ?」
「それがだな、大砲の音が聞こえたら、ロータスへ進軍しろって指示を受けていたんだが……」
大砲?
「ひょっとして、拳銃の銃声を大砲と勘違いして進撃したのか?」
「なに? あれは拳銃だったのか?」
僕は床に転がっているデポーラを指さした。
「あれは、こいつが撃った威嚇射撃だ」
「クソ! どうりで他の部隊が動かないと思ったら」
アルダーノフはデポーラを睨みつけた。
「やい! デポーラ! 紛らわしいことすんじゃねえ!」
「へん! 拳銃と大砲の違いも分からないのかよ。バーカ! バーカ!」
「なんだと、この小便たれ!」
「うっせー! ハゲオヤジ!」
「この頭は剃っているだけだ! ハゲじゃない」
「ハゲをごまかすために剃ってんだろ! バレバレ……」
ドーン!
突然の砲声が、二人の喧嘩は中断させた。
砲声? という事は、これが進撃の合図!?
「Pちゃん。ドローンの映像を出して。全体図で」
「はい。ご主人様」
Pちゃんが壁に映しだした映像には、ロータスを囲んでいた全軍が、三つの橋に向かって動き出す様子が映っていた。
『レイラ・ソコロフの本陣らしき陣地はまったく見あたりません』
「分かった。引き続きたのむ」
ちょうどその時、Pちゃんが、包帯だらけになったアルダーノフを車椅子に乗せて連れてきた。
「ご主人様。ヴィクトル・アルダーノフを連行しました」
イモムシ状態で床に転がっていたデポーラが、アルダーノフの姿を見て爆笑する。
「ギャハハハハ! どこのミイラ男かと思ったら、アルダーノフのオヤジかよ! いいザマだな!」
こいつら、普段から仲が悪いようだな。悪党同士仲良くできんものか……いや、されても困るが……
「へ! どこのイモムシかと思ったら、小便たれのデポーラかよ。無様だな」
「んだとう! てめえ……おい町長! アルダーノフの賞金額はいくらだ!?」
アルダーノフも賞金首だったのか。
デポーラに質問された町長は、秘書に尋ねてから答えた。
「金貨三十枚よ」
「ギャハハハハハ! だっせー! たった三十枚かよ! アタイなんか金貨百枚だぜ!」
おいおい……自分に掛けられた賞金額を自慢して、どないすんじゃ!
あ! 賞金と聞いて、ミールが目を輝かして町長にすり寄っている。
「町長さん。アルダーノフの賞金もいただけますか?」
「ええ……戦いが終わったら……」
「カイトさん。ちゃっちゃっと戦い終わらせちゃいましょう」
だから、そのためにもレイラ・ソコロフを探し出して、和平交渉を……あ! そのためにアルダーノフを連れてきたんだ。
僕はアルダーノフの傍らに寄った。
「アルダーノフ。レイラ・ソコロフの居場所はどこだ?」
「け! 誰が教えるか」
「言わないなら、魔法を使って何もかも聞き出すぞ。そうなると喋らなくて済むことまで喋る事になるが……」
「魔法だと!?」
アルダーノフはギョッとして、床に転がっているデポーラに視線を向けた。
続いて正座しているデポーラに視線を移動。
「分身魔法か?」
「知っているのか? 分身魔法で作られた分身は、術者の命令に逆らえないって」
「知っている。この前、それをされたばかりだからな」
「されたって? 誰に?」
「レイラ・ソコロフの部下に分身魔法使いがいるんだよ。そいつに俺の分身を作られてな……」
「なるほど。で、どうする? レイラ・ソコロフの居場所をこのまま黙っているなら、君の分身を作るけど」
「それだけは勘弁してくれ」
「じゃあ、話してくれるかい?」
「それが、知らないんだ」
「ミール。魔法の準備を」
「はーい!」
「待ってくれ! 俺は本当に知らないんだ。ほら、こいつ」
デポーラの分身を指さす。
「デポーラの分身からは聞いたのだろう? こいつも知らないと言っていたはずだ」
「じゃあ、レイラ・ソコロフはどうやって、攻撃の指示を出すんだ?」
「それがだな、大砲の音が聞こえたら、ロータスへ進軍しろって指示を受けていたんだが……」
大砲?
「ひょっとして、拳銃の銃声を大砲と勘違いして進撃したのか?」
「なに? あれは拳銃だったのか?」
僕は床に転がっているデポーラを指さした。
「あれは、こいつが撃った威嚇射撃だ」
「クソ! どうりで他の部隊が動かないと思ったら」
アルダーノフはデポーラを睨みつけた。
「やい! デポーラ! 紛らわしいことすんじゃねえ!」
「へん! 拳銃と大砲の違いも分からないのかよ。バーカ! バーカ!」
「なんだと、この小便たれ!」
「うっせー! ハゲオヤジ!」
「この頭は剃っているだけだ! ハゲじゃない」
「ハゲをごまかすために剃ってんだろ! バレバレ……」
ドーン!
突然の砲声が、二人の喧嘩は中断させた。
砲声? という事は、これが進撃の合図!?
「Pちゃん。ドローンの映像を出して。全体図で」
「はい。ご主人様」
Pちゃんが壁に映しだした映像には、ロータスを囲んでいた全軍が、三つの橋に向かって動き出す様子が映っていた。
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