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第十二章
ミールの姉弟子
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「うりゃあ! ブースト」
芽依ちゃんのブーストパンチを食らった敵兵は、数メートルの高さにまで築き上げられた死体の山の頂上に向かって吹っ飛んでいった。
まったく、次から次へと切りがない。
あまり、しつこく押し寄せるので、死体を橋の袂に積み上げてバリケードを築き上げたのだが、そのバリケードを乗り越えてやってくる者が後を絶たなかった。
正直、あまり気持ちのいい光景ではない。
ロータス兵に至っては、あまりの凄惨な光景に嘔吐する者が続出していた。
いや、死体の山を目にしてもそうならない僕の方が異常なのだろうな。
「北村さん。敵が引き上げていきます」
「どれ?」
空中からバリケードの向こうを見た。
確かに後退しているが……
「おそらく、一時的な撤退だと思います。体制を立て直して、もう一度攻めてくるつもりでしょう」
芽依ちゃんの言う通り、バリケードから百メートル後方で集結していた。
しかし、こっちも弾薬がなくなってきたし一息つける。
弾薬の補給は、もうすぐドローンで送られてくるはず。今のうちに役所と連絡を取っておこう。
通信機にはミールが出た。アーニャはどうしたのだろう?
『カイトさん。今、あたしはミクちゃん、キラと一緒にオボロに乗って空中にいます。そこから、分身を操っているのですが……敵に厄介な分身魔法使いがいて苦戦しています』
「厄介な分身魔法使い?」
『あたしの姉弟子です』
姉弟子!? レイラ・ソコロフの仲間にはナーモ族の魔法使いもいるとは聞いていたが、ミールの知り合いとは……
「知り合いなら、戦いをやめるように説得できないかな?」
『もちろん、あたしはそうするつもりだったのですが、サラ……姉弟子の名前ラ・バン・サラ……通称サラというのですが、なぜかあたしに対抗意識を燃やして『私に勝てたら話を聞いてやる』と言って、問答無用で攻撃を仕掛けてきているのです』
なんか、ややっこしい事になっているな……もしや!?
「ミール……もしかして、君の姉弟子さんは、君がカミラ・マイスキーを陥れた事を知って、怒っているのではないのか?」
『う……いや、それはないと思います。あれを知られていたら、こんなものでは済まないかと……』
それは、とにかく……
「エラはどうなっている?」
『キラとミクちゃんが戦っているのですが、苦戦中です』
苦戦? 前回、エラはアクロに対して為す術もなかったじゃないか?
『建物の中なので、式神を大きくできないのです。そのせいで憑代の位置を特定されてしまって……』
そうか。いくら耐熱仕様の憑代でも、一万度のブラズマボールを何発も食らってはもたない。前回は憑代の位置を特定されなかったので、憑代への集中攻撃を受けなかったが、建物に入れる大きさまでアクロを小さくしてしまっては、憑代の位置は容易に分かってしまう。
エラを建物の外へ引きずり出せれば楽勝なのだが……
『キラも憑代を二つ破壊されてしまって、今三つ目を投下したところです』
キラの憑代は出かける前に三つ出力しておいた。という事は、後一つしか残っていない。
「レイラ・ソコロフとの接触はどう?」
『さっきまで、町長さんとアーニャさんが呼びかけていたのですが……』
「そうか。では、アーニャさんに伝えてくれ。ナンモ解放戦線は、リトル東京の支援を受けていた組織だ。デポーラのような、下っ端ならともかく、レイラ・ソコロフならリトル東京の名前を出せば停戦に応じるはずと」
『わっかりました。では、アーニャさんを探し出して伝えます』
「探し出してって……アーニャさんと連絡取れないの?」
『そうなのです。アーニャさんの通信機がやられてしまったのか、応答がなくて……』
「Pちゃんは?」
『怪我人を連れて、地下室へ逃げましたが、さっきから連絡が取れません』
地下……Pちゃんは地下へ逃れたはいいが、電波が届かなくなったのかもしれない。もしかすると、アーニャも通信機をやられたのではなくて、地下へ逃れたのでは?
芽依ちゃんのブーストパンチを食らった敵兵は、数メートルの高さにまで築き上げられた死体の山の頂上に向かって吹っ飛んでいった。
まったく、次から次へと切りがない。
あまり、しつこく押し寄せるので、死体を橋の袂に積み上げてバリケードを築き上げたのだが、そのバリケードを乗り越えてやってくる者が後を絶たなかった。
正直、あまり気持ちのいい光景ではない。
ロータス兵に至っては、あまりの凄惨な光景に嘔吐する者が続出していた。
いや、死体の山を目にしてもそうならない僕の方が異常なのだろうな。
「北村さん。敵が引き上げていきます」
「どれ?」
空中からバリケードの向こうを見た。
確かに後退しているが……
「おそらく、一時的な撤退だと思います。体制を立て直して、もう一度攻めてくるつもりでしょう」
芽依ちゃんの言う通り、バリケードから百メートル後方で集結していた。
しかし、こっちも弾薬がなくなってきたし一息つける。
弾薬の補給は、もうすぐドローンで送られてくるはず。今のうちに役所と連絡を取っておこう。
通信機にはミールが出た。アーニャはどうしたのだろう?
『カイトさん。今、あたしはミクちゃん、キラと一緒にオボロに乗って空中にいます。そこから、分身を操っているのですが……敵に厄介な分身魔法使いがいて苦戦しています』
「厄介な分身魔法使い?」
『あたしの姉弟子です』
姉弟子!? レイラ・ソコロフの仲間にはナーモ族の魔法使いもいるとは聞いていたが、ミールの知り合いとは……
「知り合いなら、戦いをやめるように説得できないかな?」
『もちろん、あたしはそうするつもりだったのですが、サラ……姉弟子の名前ラ・バン・サラ……通称サラというのですが、なぜかあたしに対抗意識を燃やして『私に勝てたら話を聞いてやる』と言って、問答無用で攻撃を仕掛けてきているのです』
なんか、ややっこしい事になっているな……もしや!?
「ミール……もしかして、君の姉弟子さんは、君がカミラ・マイスキーを陥れた事を知って、怒っているのではないのか?」
『う……いや、それはないと思います。あれを知られていたら、こんなものでは済まないかと……』
それは、とにかく……
「エラはどうなっている?」
『キラとミクちゃんが戦っているのですが、苦戦中です』
苦戦? 前回、エラはアクロに対して為す術もなかったじゃないか?
『建物の中なので、式神を大きくできないのです。そのせいで憑代の位置を特定されてしまって……』
そうか。いくら耐熱仕様の憑代でも、一万度のブラズマボールを何発も食らってはもたない。前回は憑代の位置を特定されなかったので、憑代への集中攻撃を受けなかったが、建物に入れる大きさまでアクロを小さくしてしまっては、憑代の位置は容易に分かってしまう。
エラを建物の外へ引きずり出せれば楽勝なのだが……
『キラも憑代を二つ破壊されてしまって、今三つ目を投下したところです』
キラの憑代は出かける前に三つ出力しておいた。という事は、後一つしか残っていない。
「レイラ・ソコロフとの接触はどう?」
『さっきまで、町長さんとアーニャさんが呼びかけていたのですが……』
「そうか。では、アーニャさんに伝えてくれ。ナンモ解放戦線は、リトル東京の支援を受けていた組織だ。デポーラのような、下っ端ならともかく、レイラ・ソコロフならリトル東京の名前を出せば停戦に応じるはずと」
『わっかりました。では、アーニャさんを探し出して伝えます』
「探し出してって……アーニャさんと連絡取れないの?」
『そうなのです。アーニャさんの通信機がやられてしまったのか、応答がなくて……』
「Pちゃんは?」
『怪我人を連れて、地下室へ逃げましたが、さっきから連絡が取れません』
地下……Pちゃんは地下へ逃れたはいいが、電波が届かなくなったのかもしれない。もしかすると、アーニャも通信機をやられたのではなくて、地下へ逃れたのでは?
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