593 / 893
第十五章

身代わりアンドロイド

しおりを挟む
 プリンターの中から、十二歳ぐらいの少女が歩いて出てきた。

 セーラー服をまとったおかっぱ頭の少女の外見は、どう見てもミク。

 だが、中身はロボットだ。

 ミクそっくりのアンドロイドを、ミールはしげしげとながめる。

「ミクちゃんと、そっくりですね」

 当然だ。そっくりでなければ、レムをだませない。

 最初に、このアンドロイドの三次元データを作ったとき、『もっと胸を大きくして』とミクが言っていたが、リアリティー重視なので却下した。

「しかし、ご主人様。今このアンドロイドを使ってもいいのですか?」
「いいんだ。僕たちがミクのアンドロイドを作る事は、もう敵には知られている」
「でも、カイトさん。今、これを使ったら、あたしたちがスパイに気が付いた事もばれてしまうかもしれませんよ」
「分かっている。だから、これが敵の手に落ちたら、アンドロイドだとばれる前に回収する」

 今回、これをどう使うかというと、アーテミスに三体のアンドロイドを配置して、エラとカミラのグループを除く各グループそれぞれに、その居場所をさりげなく伝えるのだ。

 グループごとに違う場所を……

 どの場所に配置したアンドロイドが襲われるかによって、スパイを見抜くというのが今回の作戦。

 不意にPちゃんのアンテナがピコピコと動いた。

「ご主人様。飛行物体が接近しています。ベジドラゴンと推測されます」

 来たか。さっき、ミールが竜笛を吹いて呼んでおいたのだ。

 アンドロイドをアーテミスへ運んでもらうために……

 甲板に出ると、エシャー、ロッド、ルッコラ、レタスが待っていた。

「じゃあ、エシャー。頼んだよ」
「マカセテ、カイト」

 背中にアンドロイドを乗せたベジドラゴンたちは、アーテミスの方へと飛び去っていく。

 アンドロイドたちはすでに自立モードになっていて、ベジドラゴンがアーテミスに降りると、後は自分で行動して所定の場所で待機する事になっていた。

 程なくして、各アンドロイドから『所定の位置に着いた』という連絡が入る。

 後は、各グループにその位置を教えるだけ。

 ただし、無線はだめだ。

 もし、敵に傍受ぼうじゅされたら、各グループに別の場所を伝えた事を知られてしまう。

 かといって、暗号通信を使うと、あまり重要でもない通信に暗号を使った事を怪しまれる。

 だから、僕が直接行って伝えるしかない。

「装着」

 ロボットスーツを装着して、僕は甲板に上がった。

「ミール。Pちゃん。行ってくるよ」

 甲板上で手を振るミールとPちゃんを残して、僕は《海龍》から飛び立った。 

 二分ほどで、アーテミス上空に着く。

 アーテミスは、ロータスと同じく運河に四方を囲まれた町だった。

 建物は石造りが多いが、壊れている建物も目立つ。

 三年前の帝国軍侵攻の爪痕だろうか?

 町の各所から、激しく煙が立ち上っているのは製鉄所だろう。

 さて、みんなはどこにいるかな?

 お! レイホーと芽依ちゃんを見つけた。

 二人は、クレープの様な物を食べながら街路を歩いている。

「おーい! 芽依ちゃん、レイホー」

 呼びかけながら降り立つと、二人は驚いたような視線を僕に向けた。

「北村さん!?」「おにいさん、どうしたね? ロボットスーツなんかで」
「いや、ちょっとミクに用事があって出てきたのだが、スーツのメモリにアーテミスのマップデータを入れ忘れた。地図を見せてくれないか」
「地図ですね」

 芽依ちゃんがポシェットを探って、クリアファイルに入った地図を取り出す。

「オカカ広場という場所で、ミクと待ち合わせる事になっているんだ」

 とりあえず、これで目的の一つは達成。

「オカカ広場ですね。あ! ここです」

 芽依ちゃんが地図の一カ所を指し示してくれたが、実はそんな事をしなくてもオカカ広場がどこにあるかは知っている。

 この二人のどちらかが接続されているなら、今頃レムは……

レム「小娘は、オカカ広場にいることが分かった。者共行け!」
部下「はは! レム様。必ずや小娘をひっ捕らえてまいります」

 ……という事に、なっているはずだ。

 しかし、そこにいるのはアンドロイド。

 アンドロイドに手を出す奴がいたら、直ちに僕に警報が伝わる手はず……

「お兄さん。ちょっとマズいね」

 ん? レイホー、どうしたのだ。

 うわ! 

 周囲を見回すと、僕たちに注目が集まっていた。

 やはり、ロボットスーツで降りたのは目立ちすぎたか?

「北村さん。上陸してから分かったのですが、私と北村さんは、この町で英雄に祭り上げられています」

 なに? 言われてみれば、僕たちを囲んでいるナーモ族やプシダー族、亡命帝国人たちが口々に「カイト」と言っている声が聞こえる。

 僕を知っているのか?

「なんで?」
「当然ね。この町は、三年前に帝国軍に攻め込まれて大勢の人死んだね。だから、この町の人たちの反帝国感情はすごいね。そんなところへ、帝国軍をコテンパンにやっつけたお兄さんが、金色のロボットスーツで降りて来たら、そりゃ人が集まってくるね」

 マジか?
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...