85 / 237
呪殺師は可愛い男の子が好き
結界設置班
しおりを挟む
多摩丘陵の一角にある、総面積五百坪はありそうな豪邸。
この邸宅が、呪殺師ヒョーのターゲットにされた権堂正三氏の住居だ。
屋敷の閉める面積は、その中の二割ほどで、八割は庭園。
その庭園の中で一際目立つのは、高さ十メートルはありそうな築山。
近所の人々は、権堂富士と呼んでいるとか……
確かに、塀の向こうで夕日を浴びている小さな山は、富士山に見えるな。
というか、富士山を模して作ったのだろう。
「しっかし、どんな悪いことすれば、こんな大きな家に住めるのかしらね?」
声の方を振り向くと、樒がバイクから降りるところだった。
「樒。悪いことをしないと、お金は稼げないと決めつけているのか?」
「ええ!? 違うの」
権堂邸の門前で樒とそんな事を話している僕たちの傍に、茶色の軽自動車が止まった。
トヨタのピクシスエポック。芙蓉さんの車だ。助手席には、ミクちゃんが乗っている。
芙蓉さんの車が止まったとたんに、門扉が自動的に開き始めた。
運転席の窓が開いて芙蓉さんが顔を出す。いつもの巫女装束だけど、これって運転に支障はないのかな?
「二人とも、私の後から着いて入ってきてね。バイクをそこらに止めちゃだめよ。駐車監視員がやってくるから」
僕たちはバイクのエンジンをかけて、軽自動車の後を追って屋敷内に入っていく。
ふと、権堂富士の方に目を向けた。
ん? 山頂に誰か人がいる。あんなところで、なにをしているのだ?
おっと、よそ見運転は危ないな。
視線を一度前方に戻してバイクを停止させ、もう一度権堂富士の方を見た。
あれ? さっきの人がいない。
もう山を降りちゃったのかな?
いけない! 芙蓉さんの車から引き離されてしまった。
バイクを走らせていると、ほどなくして玄関前に着いた。
玄関前には、芙蓉さんの車と樒のバイクの他に、白いワゴン車が一台停止している。
ワゴン車の横には、『霊能者協会』とロゴが入っていた。
先に来ていた結界設置班の人達の車だな。
作業服姿のおじさんが、図面を広げて芙蓉さんに見せている。
結界の設置状況を説明しているのだろう。
バイクを止めて、ヘルメットを取ると芙蓉さんが僕の方を見ていた。
「優樹君。なにをしていたの?」
「いや、築山の上に人がいたものだから、気になって……」
それを聞いて、結界班のおじさんが僕の方を振り向いた。
「ああ! それはうちのスタッフだよ。築山の上から、結界の設置状況を、写真に撮っていたんだ」
「ああ、そうだったのですか」
その時、樹木の陰から作業服姿の女性が出てきた。
大きなマスクとサングラスで顔はよく分からないが、歳は二十代後半ぐらいだろうか?
女性はデジカメをおじさんに差し出す。
「主任。写真を撮ってきました」
「おお、ご苦労さん」
おじさんはデジカメの映像をチェックすると、芙蓉さんの方を振り向いた。
「では、御神楽さん。私たちはこれで引き上げます」
「お疲れさまでした」
「結界が式神に破られる事はないと思いますが、人の進入は結界では防げません。万が一、結界の内側に術者に入られたら終わりですので、十分お気をつけ下さい」
そう言い残して、結界設置班の車は帰っていった。
「よく来てくれたな」
結界設置班の車を見送っていると、突然背後から声をかけられた。
振り向くとそこには、すっかり頭髪が禿げ上がった小太りの爺さんが白いスーツを纏って立っていた。
今回の依頼人、権堂正三氏だ。
不動産業を営んでいて、年齢は今年で六十九だと言う。
この邸宅が、呪殺師ヒョーのターゲットにされた権堂正三氏の住居だ。
屋敷の閉める面積は、その中の二割ほどで、八割は庭園。
その庭園の中で一際目立つのは、高さ十メートルはありそうな築山。
近所の人々は、権堂富士と呼んでいるとか……
確かに、塀の向こうで夕日を浴びている小さな山は、富士山に見えるな。
というか、富士山を模して作ったのだろう。
「しっかし、どんな悪いことすれば、こんな大きな家に住めるのかしらね?」
声の方を振り向くと、樒がバイクから降りるところだった。
「樒。悪いことをしないと、お金は稼げないと決めつけているのか?」
「ええ!? 違うの」
権堂邸の門前で樒とそんな事を話している僕たちの傍に、茶色の軽自動車が止まった。
トヨタのピクシスエポック。芙蓉さんの車だ。助手席には、ミクちゃんが乗っている。
芙蓉さんの車が止まったとたんに、門扉が自動的に開き始めた。
運転席の窓が開いて芙蓉さんが顔を出す。いつもの巫女装束だけど、これって運転に支障はないのかな?
「二人とも、私の後から着いて入ってきてね。バイクをそこらに止めちゃだめよ。駐車監視員がやってくるから」
僕たちはバイクのエンジンをかけて、軽自動車の後を追って屋敷内に入っていく。
ふと、権堂富士の方に目を向けた。
ん? 山頂に誰か人がいる。あんなところで、なにをしているのだ?
おっと、よそ見運転は危ないな。
視線を一度前方に戻してバイクを停止させ、もう一度権堂富士の方を見た。
あれ? さっきの人がいない。
もう山を降りちゃったのかな?
いけない! 芙蓉さんの車から引き離されてしまった。
バイクを走らせていると、ほどなくして玄関前に着いた。
玄関前には、芙蓉さんの車と樒のバイクの他に、白いワゴン車が一台停止している。
ワゴン車の横には、『霊能者協会』とロゴが入っていた。
先に来ていた結界設置班の人達の車だな。
作業服姿のおじさんが、図面を広げて芙蓉さんに見せている。
結界の設置状況を説明しているのだろう。
バイクを止めて、ヘルメットを取ると芙蓉さんが僕の方を見ていた。
「優樹君。なにをしていたの?」
「いや、築山の上に人がいたものだから、気になって……」
それを聞いて、結界班のおじさんが僕の方を振り向いた。
「ああ! それはうちのスタッフだよ。築山の上から、結界の設置状況を、写真に撮っていたんだ」
「ああ、そうだったのですか」
その時、樹木の陰から作業服姿の女性が出てきた。
大きなマスクとサングラスで顔はよく分からないが、歳は二十代後半ぐらいだろうか?
女性はデジカメをおじさんに差し出す。
「主任。写真を撮ってきました」
「おお、ご苦労さん」
おじさんはデジカメの映像をチェックすると、芙蓉さんの方を振り向いた。
「では、御神楽さん。私たちはこれで引き上げます」
「お疲れさまでした」
「結界が式神に破られる事はないと思いますが、人の進入は結界では防げません。万が一、結界の内側に術者に入られたら終わりですので、十分お気をつけ下さい」
そう言い残して、結界設置班の車は帰っていった。
「よく来てくれたな」
結界設置班の車を見送っていると、突然背後から声をかけられた。
振り向くとそこには、すっかり頭髪が禿げ上がった小太りの爺さんが白いスーツを纏って立っていた。
今回の依頼人、権堂正三氏だ。
不動産業を営んでいて、年齢は今年で六十九だと言う。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
20
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる