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呪殺師は可愛い男の子が好き

金塊

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「じゃあ、俺たちはこれで」

 ヒルコと闇子はそのまま、巨大スライムの中に入っていく。スライムは入り口を閉じると、床に開いている四角い縦穴の中へ入っていった。

 ここに入る時は、あの穴を通って来たのか。

 それなら……

「先に忠告しておく。あの穴からは逃げられない」

 僕の考えを読んだかのように、ヒョーはヘリウムボイスで言った。

「なんで?」

 僕の問いかけにヒョーはすぐには答えず、僕を縛っているロープを引っ張って縦穴の近くまで連れてきた。

 コートの内側からライトを出して、穴の中を照らしだす。

 四角い穴にはコンクリートの階段があったが、一メートルほど下ったところに水面があり、階段は水面の下へ続いていた。

「見ての通り、水没しているのだよ。君たちはスライムの中にいたから、無事に通れた」

 水没!? そういえば、権堂氏は権堂富士の入り口は水没していると言っていた。

 それじゃあ、ここは権堂富士の中!

「私も、あのスライムと似たような能力を持った式神が使えるので、ここへ入れた。しかし、君はここから逃げる事はできない」

 じゃあ、ここで僕はこの人と二人切り。

 闇子はド変態だと言っていたけど……僕、何をされるの? 怖い!

 ヒョーはライトの向きを変えた。

 スチール棚が照らし出される。

 スチール棚の上にあるのは、金塊!?

 さっきから、キラキラ光っていたのはこれだったのか。

 ヒョーがライトを消したので、再び部屋の中は薄暗くなる。

「あのお……」

 恐る恐る僕は訪ねた。

「僕に何か、恨みがあるのですか?」

 もし、恨みがあるなら、さっさと謝っちゃおう。

 そして、こんな怖いところから出して……もらえるかな?

 やっぱり殺さないと気が済まないほど、僕はこの人を怒らせる何かをやってしまったのだろうか?

 だが、ヒョーは首を横にふるだけだった。

「じゃあ、どうして僕を指名したのです? どうして僕を、ここへ連れてきたのです?」

 ヒョーは、おもむろにボンベのヘリウムを吸い込んでから答える。

「君を指名した理由を知りたいのか?」
「知りたいです」
「ふふふふふふ」

 なんだ? この不気味な笑い。何を考えているんだ?

「私が君を指名したその訳は……」

 こ……怖い。怖くて震えが止まらない。

「可愛いからだ」

 は? 
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