霊能者のお仕事

津嶋朋靖(つしまともやす)

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呪殺師は可愛い男の子が好き

大切な物

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 水音を立ててウサギ式神が姿を消した後、ヒョーはエアガンを無造作に放り投げた。

 エアガンは乾いた音を立てて、床に転がる。

 ひどい! 氷室先生からもらったエアガンなのに……

「あ! どこへ行く!?」

 ヒョーの手を振り払って、僕はエアガンの落ちている方へ行きかけた。

 しかし、すぐに背後からヒョーに抱きしめられる。

「君は、ここから逃げられないのだよ」
「放して! 逃げないから……」
「だーめ。邪魔者は消えたことだし、お姉さんと良いことしよう」
「違う! 逃げようとしたんじゃなくて……うぐ」

 僕のセリフは、ヒョーのくちびるさえぎられる。

 しばらくの間、ヒョーはむさぼるように僕の唇を求め続けた。

 突然、ヒョーが僕から顔を離す。

「そ……そんなにイヤだったのか?」

 え?

「私とのキスが、そんなにイヤだったのか?」

 今更なにを……?

「何も、泣かなくても……」

 泣く? あ! いつの間にか僕、涙を流している。

 僕は床に落ちているエアガンに目を向けた。

 氷室先生のくれたエアガンが、あんな乱暴に扱われたのが、悔しくて悲しくて涙がこぼれていたんだ。

「違う……」
「え?」
「逃げようとしたんじゃない。エアガンを、拾いたかっただけなのに……」
「エアガン? 君はこんな玩具おもちゃ執心しゅうしんするのか?」
「あなたに取っては、こんな玩具でも、僕にとっては大切な物です」
「……なぜ、これがそんなに大切なのだ? 男のロマンとかいう奴か?」
「そんなのじゃない。好きな人がくれた物だから、大切にしたかったのに……」
「ええええええ!?」

 ん? ヒョーはなんで、こんなに驚いているのだろう?

「それじゃあ、さっき君が言っていた好きな人とは、わた……イヤイヤ! このエアガンをくれた人か?」

 僕は無言でうなずいた。

 ヒョーはその後、小声でブツブツと独り言を言い始めた。

 時々『計算外』とか『どうする?』とか聞こえてくる以外は、ほとんど聞き取れない。

 何を言っているのだろう?

 しばらくして、独り言をつぶやくのを止めたヒョーは、エアガンを拾い上げると、ハンカチで丁寧ていねいに汚れを拭き取り、僕のショルダーホルスターに戻した。

「そんなに大切な物とは思わなかったのだ。無造作に捨てたりして、済まなかったよ」

 ……?

「私は、君から手を引くよ。君がその人と、うまくいく事を祈る事にしよう」
「あ……ありがとうございます」

 どうしたのだろう? 急に……

「それにしても、御神楽芙蓉の奴は遅いな。可愛い優樹キュンが、どうなってもいいのか」

 その『キュン』も止めてほしいのだけど……鳥肌が立つし……

 それはいいとして……

「ヒョーさん。芙蓉さんと、五年前に何があったのですか?」
「ん? 聞いてないのか?」
「五年前に芙蓉さんがヒョーさんと戦ったという事と、その時に別の式神が回り込んで護衛対象者を殺害した事は聞きましたが……」
「そうか。まあ、間違ってはいないが、詳細は話していないのだな。まあ、話したくもないだろう。あれは御神楽姉妹にとっては黒歴史だからな」
「黒歴史? それも御神楽姉妹という事は、槿さんも関わっているの?」
「その通り。確か、御神楽槿はその後失脚したそうだが、その時は、支部長を勤めていたはずだ」

 それは知っているけど……

「この御神楽姉妹の操る式神が強くて、私もかなり苦戦した。そこで私は悪党らしく、卑怯な手を使う事にした」

 あの……それって、胸を張ってどうどうと言って良いことですか?

「式神が倒せないなら、その術者を狙えばいい。私は龍と虎に戦わせながら、ネズ子に術者を探させた。そして、御神楽槿を見つけ、私は蛇式神を放って捉えた」

 槿さん、捕まっちゃったんだ。

「そして私は、御神楽槿を人質にして、御神楽芙蓉に降伏を迫った。だが、その後で想定外の出来事が……」

 な……何があったんだあ?
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