霊能者のお仕事

津嶋朋靖(つしまともやす)

文字の大きさ
112 / 314
呪殺師は可愛い男の子が好き

権藤富士の宝

しおりを挟む
 穴から外へ出て、権堂富士を螺旋らせん状に取り巻いている小路こみちを降りていく。

 途中、池の前で芙蓉さんは立ち止まった。

「この池の中に、入り口が隠されていたのよ」

 ここは昨夜、男の子の幽霊が教えてくれた池。

 あの子の遺体は、今もここに沈んでいるのかな?

「でもさ、芙蓉さん」

 樒が池を指差す。

「式神ならこんなところを通らなくても、壁を抜けて中に入れるんじゃないの?」
「権堂富士の壁には、軽い結界が設置されていたのよ。権堂さんも霊能者との付き合いがあったから、式神とか生霊に隠し金庫を見つけられると警戒していたのだと思うわ」

 そう言えば、サラリーマンの幽霊は、最初は結界があって築山の中に入れなかったと言っていた。

 ヒョーは自分の式神をコントロールするために、一時的に結界を解除したのか。

 そして、僕を拉致してから、再び結界を元に戻した。

 だから、式神も池を通らないと入れなくなってしまったんだな。

 あ! そうだ。

「芙蓉さん。帰る前に結界を解除しないと」

 周囲を見回すと、浮遊霊たちが集まってきている。

 サラリーマンの幽霊が僕の前に寄ってきた。

「よかったよ。私たちの事は、忘れられていたのかと心配していたんだ」
「やだな。忘れるわけ、ないじゃないですか」

 ごめんなさい。忘れていました。

 結界杭は、簡単には引っこ抜くことはできないけど、実はドライバー一本で蓋を開けて中のお札を取り出せる仕組み。

 三か所のお札を取り出せば、幽霊は通り抜けられる。

 その中の二つを解除して三つ目に取り掛かった時、結界が緩くなったのか男の子の霊が僕に近づいてきた。

 ドライバーを回しながら、僕は男の子に話しかける。

「君はここの池で溺れたんだよね」
「そうだよ」
「まだ、遺体はここに残っているの」
「ううん。僕の遺体はとっくに回収されたよ」
「そっか。しかし、なんでこんなところで溺れたの?」
「僕は、ここに落ちたわけじゃないんだ。自分から潜ったんだよ」

 え? まさか自殺?

「金塊を取に行こうとして、潜ったんだ。水泳には自信があったから。でも、戻るときに、金塊が重くて浮き上がれなくなって……」
「なんでそんな事を?」
「権堂富士の宝は、僕が成人したら相続することになっていたんだ。だから、先に一つぐらいもらっても」
「君は権堂さんの……」
「孫だよ」
「しかし、なんでそんな事を」
「あの時は、どうしてもお金が必要だったんだ。友達の家族が経営する工場が倒産しちゃって、夜逃げをしなきゃならなくなったんだよ。大切な友達だったので、別れたくなかったんだ。金塊さえあればと思って」

 そうだったんだ。

「今でも時々、霊界からお爺ちゃんの様子を見に来ていたんだよ」
「そこへ運悪く、結界に閉じこめられてしまったんだね」
「そうだけど、せっかく霊能者が来ているのだから、頼みたい事もあったんだ」
「なにを?」
「お爺ちゃんに伝えて欲しい事があったのだけど、もう必要なくなっちゃった」
「必要なくなった? なんで?」
「権堂富士の宝を、貧しい子供たちに寄付してほしいと。でも、その前に税務署に見つかっちゃったね」
「そうか」

 結界が解除されたのはその時……

 結界から出ていく霊たちに僕は手をふった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

野球部の女の子

S.H.L
青春
中学に入り野球部に入ることを決意した美咲、それと同時に坊主になった。

不思議な夏休み

廣瀬純七
青春
夏休みの初日に体が入れ替わった四人の高校生の男女が経験した不思議な話

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

ママはヤンママ女子高生! ラン&ジュリー!!

オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
キャラ文芸
神崎ランの父親の再婚相手は幼馴染みで女子高生の高原ジュリーだった。 ジュリーは金髪美少女だが、地元では『ワイルドビーナス』の異名を取る有名なヤンキーだった。 学校ではジュリーは、ランを使いっ走りにしていた。 当然のようにアゴで使われたが、ジュリーは十八歳になったら結婚する事を告白した。 同級生のジュリーが結婚するなんて信じられない。 ランは密かにジュリーの事を憧れていたので、失恋した気分だ。 そう言えば、昨夜、ランの父親も再婚すると言っていた。 まさかとは思ったが、ランはジュリーに結婚相手を聞くと、ランの父親だと判明した。  その夜、改めて父親とジュリーのふたりは結婚すると報告された。 こうしてジュリーとの同居が決まった。 しかもジュリーの母親、エリカも現われ、ランの家は賑やかになった。

処理中です...