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事故物件
指名依頼
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スマホの呼び出し音が鳴ったのは、放課後の超常現象研究会での事。
相手は、芙蓉さんだった。
『優樹君。明後日の日曜日は、空いているかしら?』
「ちょっと待って下さい」
手帳をチェックしたが、特に予定は入っていない。
入ってはいないのだが……この日は、撮り貯めてある深夜アニメのチェックをするという極めて重要な作業をやりたいのだけど……
仕事では仕方がないよね。
「特に予定は入っていません」
『良かった。優樹君に、指名依頼が入っているのよ』
「指名!?」
大丈夫だろうか?
実は先日も、中年女性から指名依頼を受けたのだが、その家に行ってみても霊なんかいなかった。
その人は霊がいると錯覚してしまったのかな? と思ったが、そうではない。
その人は、以前に僕が公開した顔写真を見て会いたくなっただけだったというのだ。
まあ、その時はケーキとお茶を出してもらって、無断で写真を撮られただけで特に変なことはされなかったけど……いや、写真を撮られるだけでも十分変な事だけど……
チラっと先輩たちの方を見る。
「これなんか良くない?」
「いやこっちの方が……」
「霊子ちゃんは、どれがいい?」
三人の先輩と樒と、地縛霊の霊子ちゃんは嬉嬉としてこれから僕に着せる服を選んでいる。
こういう事をされるより、ずっとマシだよね。
でも、次の依頼人もそうとは限らないよなあ……
「芙蓉さん。今度の人、大丈夫でしょうね?」
『大丈夫って? なにが?』
「その……またショタコンの人じゃないでしょうね?」
『大丈夫よ。君を指名する人には、指名する動機を聞いているから。『可愛いから』と言った人は、丁寧にお断りしているわよ』
「お手数かけて申し訳ありません」
元をただせば、僕が不用心に顔写真をネットに上げたのが原因だからな。
『今回の指名は、リピーダーだから安心して』
「ということは、以前に仕事を受けた人ですか?」
『ええ。以前に、意識のないおじいさんの生き霊を呼び出して、パスワードを聞き出す仕事をやったでしょ。あの時の人が君のことを気に入ってくれて、姪御さんの新居を霊視してほしいと言うのよね。簡単な仕事でしょ』
確かに簡単な仕事だが……
「何か問題のある部屋なのですか?」
『なんでも、過去に自殺者の出た部屋だそうよ』
事故物件か。
『依頼人さんは霊を見ていないそうだから、すでに成仏している可能性もあるわ。詳しいことは現地で聞いてね』
成仏していない可能性もあるのだよね。悪霊化している可能性も……
ショルダーホルスターに刺してあるエアガンを抜いて、退摩弾の残弾を確認した。
残り十発。
今から発注しても、日曜日までには間に合わないだろうな。
樒にも来てもらおうか? でも、予定は空いているかな?
「樒」
樒がこっちを向いた。
「明後日、予定空いている?」
「え? 特に予定はないけど、なに? デートの誘い?」
いきなり何を言い出すんじゃ!
「え? 社君、神森さんと日曜日にデートするの?」
いかん! 先輩たちにまで誤解が広がっている。
「おお! 社君。顔真っ赤よ」
ええ! 赤くなっている?
「良いわね。私は、一度もデートなんて誘われた事ないのに。神森さんを呪いたくなったわ」
「部長。それは、マジでやめた方がいいです」
「む? なぜだ?」
「神森さんは、常に呪いを跳ね返す神器を携帯しております。下手に呪いなどかけると、跳ね返ってくる恐れが……」
「そうだったのか。危ないところだった」
いや、危ないもなにも、あんた呪いなんてできないって、この前言っていたやん。
「誰と誰がデートするですって?」
うわわ! 氷室先生が部室に入ってきた。
「先生! ……違うんです。僕はただ……」
「社君は、神森さんが好きだったの?」
「そうじゃなくて!」
僕が好きなのは、あなたですよ。氷室先生……これは絶対に口に出してはいけないよね。だって、先生には迷惑だし……
「僕はただ、樒に仕事を手伝ってほしいなと思って……」
ポンっと樒が僕の頭に掌を乗せた。
「分かっているわよ。仕事の話しだって。ちょっとからかっただけよ」
「からかっていたのか?」
「さっき、あんた芙蓉さんと仕事の話をしていたでしょ。私に、なにか手伝ってほしいのでしょ?」
「まあ、そうだけど……」
「まったく、あんたは私がついていて上げないとだめねえ」
ムカ! 違うわい! 僕がついていないと、おまえは不正行為やるだろ。
だから、僕はおまえと組まされているんじゃないか!
「とにかく、私の予定は問題ないから。で、どこで何時に待ち合わせする?」
とりあえず、待ち合わせ場所と時間を決めた。
しかし、当日、樒は時間になっても待ち合わせ場所に現れなかった。
相手は、芙蓉さんだった。
『優樹君。明後日の日曜日は、空いているかしら?』
「ちょっと待って下さい」
手帳をチェックしたが、特に予定は入っていない。
入ってはいないのだが……この日は、撮り貯めてある深夜アニメのチェックをするという極めて重要な作業をやりたいのだけど……
仕事では仕方がないよね。
「特に予定は入っていません」
『良かった。優樹君に、指名依頼が入っているのよ』
「指名!?」
大丈夫だろうか?
実は先日も、中年女性から指名依頼を受けたのだが、その家に行ってみても霊なんかいなかった。
その人は霊がいると錯覚してしまったのかな? と思ったが、そうではない。
その人は、以前に僕が公開した顔写真を見て会いたくなっただけだったというのだ。
まあ、その時はケーキとお茶を出してもらって、無断で写真を撮られただけで特に変なことはされなかったけど……いや、写真を撮られるだけでも十分変な事だけど……
チラっと先輩たちの方を見る。
「これなんか良くない?」
「いやこっちの方が……」
「霊子ちゃんは、どれがいい?」
三人の先輩と樒と、地縛霊の霊子ちゃんは嬉嬉としてこれから僕に着せる服を選んでいる。
こういう事をされるより、ずっとマシだよね。
でも、次の依頼人もそうとは限らないよなあ……
「芙蓉さん。今度の人、大丈夫でしょうね?」
『大丈夫って? なにが?』
「その……またショタコンの人じゃないでしょうね?」
『大丈夫よ。君を指名する人には、指名する動機を聞いているから。『可愛いから』と言った人は、丁寧にお断りしているわよ』
「お手数かけて申し訳ありません」
元をただせば、僕が不用心に顔写真をネットに上げたのが原因だからな。
『今回の指名は、リピーダーだから安心して』
「ということは、以前に仕事を受けた人ですか?」
『ええ。以前に、意識のないおじいさんの生き霊を呼び出して、パスワードを聞き出す仕事をやったでしょ。あの時の人が君のことを気に入ってくれて、姪御さんの新居を霊視してほしいと言うのよね。簡単な仕事でしょ』
確かに簡単な仕事だが……
「何か問題のある部屋なのですか?」
『なんでも、過去に自殺者の出た部屋だそうよ』
事故物件か。
『依頼人さんは霊を見ていないそうだから、すでに成仏している可能性もあるわ。詳しいことは現地で聞いてね』
成仏していない可能性もあるのだよね。悪霊化している可能性も……
ショルダーホルスターに刺してあるエアガンを抜いて、退摩弾の残弾を確認した。
残り十発。
今から発注しても、日曜日までには間に合わないだろうな。
樒にも来てもらおうか? でも、予定は空いているかな?
「樒」
樒がこっちを向いた。
「明後日、予定空いている?」
「え? 特に予定はないけど、なに? デートの誘い?」
いきなり何を言い出すんじゃ!
「え? 社君、神森さんと日曜日にデートするの?」
いかん! 先輩たちにまで誤解が広がっている。
「おお! 社君。顔真っ赤よ」
ええ! 赤くなっている?
「良いわね。私は、一度もデートなんて誘われた事ないのに。神森さんを呪いたくなったわ」
「部長。それは、マジでやめた方がいいです」
「む? なぜだ?」
「神森さんは、常に呪いを跳ね返す神器を携帯しております。下手に呪いなどかけると、跳ね返ってくる恐れが……」
「そうだったのか。危ないところだった」
いや、危ないもなにも、あんた呪いなんてできないって、この前言っていたやん。
「誰と誰がデートするですって?」
うわわ! 氷室先生が部室に入ってきた。
「先生! ……違うんです。僕はただ……」
「社君は、神森さんが好きだったの?」
「そうじゃなくて!」
僕が好きなのは、あなたですよ。氷室先生……これは絶対に口に出してはいけないよね。だって、先生には迷惑だし……
「僕はただ、樒に仕事を手伝ってほしいなと思って……」
ポンっと樒が僕の頭に掌を乗せた。
「分かっているわよ。仕事の話しだって。ちょっとからかっただけよ」
「からかっていたのか?」
「さっき、あんた芙蓉さんと仕事の話をしていたでしょ。私に、なにか手伝ってほしいのでしょ?」
「まあ、そうだけど……」
「まったく、あんたは私がついていて上げないとだめねえ」
ムカ! 違うわい! 僕がついていないと、おまえは不正行為やるだろ。
だから、僕はおまえと組まされているんじゃないか!
「とにかく、私の予定は問題ないから。で、どこで何時に待ち合わせする?」
とりあえず、待ち合わせ場所と時間を決めた。
しかし、当日、樒は時間になっても待ち合わせ場所に現れなかった。
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