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事故物件
それを言われると弱い
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この様子だと、千尋さんってバラエティ番組に出ている人のようだ。
僕は樒の耳元で囁いた。
「この人って、誰なの?」
「オカルト芸人の六道魔入。『六道魔入の怪奇レポート』の司会とかやっている人よ」
「それって、バラエティ番組なの?」
「オカルトバラエティ番組と言うそうよ。最近は事故物件に住んで、そこに起きている心霊現象をレポートするなんて事をやっているわ」
それじゃあ、この部屋に入ったのも取材だったのか。
「他にも、いろんなバラエティ番組に出ているけど、名前ぐらい聞いた事ないの?」
僕は首を横にふった。
「初めて聞いた」
ていうか、芸人の名前なんて知らんわ。
興味ないし……
でも……本人の前で悪いこと言っちゃったな……
「あのお……千尋さん……」
「なあに、社さん。低俗な番組に出演している低俗な女に何か用かしら?」
うう……怒っている。ここは……
「ごめんなさい!」
謝るしかない。
思い切り土下座した。
「別に謝らなくてもいいわよ。どうせ私の出演する番組なんて、教育上よろしくない低俗番組ばかりだし……」
うう……許してくれそうにない。どうしよう?
「でも、悪いと思うなら、私の頼みを聞いてくれるかな?」
「はい! なんでも、聞きます!」
は! 思わず言ってしまったけど、何をさせられるんだろう?
「ちょっと、待ったあ!」
突然、樒が僕と千尋さんの間に割り込む。
「六道魔入さん。優樹の罪悪感につけ込んで、不当な要求をする気じゃないでしょうね?」
「不当な要求とは?」
「そりゃあ、お金とか、お金とか、お金とか……」
金しか思いつかんのか!
「大丈夫よ。むしろ願いを聞いてくれたら、こっちが謝礼金を出してあげたいぐらいだから……」
「え!? そうなんすか?」
一瞬、樒の目に$¥マークが浮かんだ。
「でも、霊能者協会では、規定の料金以外は受け取れない事になっていたわね。残念だけど……」
「うう……ものすごく残念」
「私の頼みは、さっきも言ったけど、霊を呼び出して欲しいのよ」
つまり、心霊番組に出すために霊を呼び出せと……
でも、霊を見せ物にするなんて……
「霊を呼び出す事はできます。ただし、僕が呼び出せるのは、過去に僕が関わったことのある霊だけですよ」
「良いわよ。霊ならなんだって」
「でも、霊は物じゃないのですよ」
「分かっているわよ。バリオン物質じゃないという事ぐらい」
「そういう意味じゃありません。霊は、元々生きていた人間だったのですよ。それを見せ物にするなんて、ひどくないですか?」
「あらあ? じゃあ、人が一生懸命作っているテレビ番組を、低俗呼ばわりするのはひどくないの?」
「う……」
それ言われると弱い。
結局僕は、霊を呼び出すことに同意した。
僕は樒の耳元で囁いた。
「この人って、誰なの?」
「オカルト芸人の六道魔入。『六道魔入の怪奇レポート』の司会とかやっている人よ」
「それって、バラエティ番組なの?」
「オカルトバラエティ番組と言うそうよ。最近は事故物件に住んで、そこに起きている心霊現象をレポートするなんて事をやっているわ」
それじゃあ、この部屋に入ったのも取材だったのか。
「他にも、いろんなバラエティ番組に出ているけど、名前ぐらい聞いた事ないの?」
僕は首を横にふった。
「初めて聞いた」
ていうか、芸人の名前なんて知らんわ。
興味ないし……
でも……本人の前で悪いこと言っちゃったな……
「あのお……千尋さん……」
「なあに、社さん。低俗な番組に出演している低俗な女に何か用かしら?」
うう……怒っている。ここは……
「ごめんなさい!」
謝るしかない。
思い切り土下座した。
「別に謝らなくてもいいわよ。どうせ私の出演する番組なんて、教育上よろしくない低俗番組ばかりだし……」
うう……許してくれそうにない。どうしよう?
「でも、悪いと思うなら、私の頼みを聞いてくれるかな?」
「はい! なんでも、聞きます!」
は! 思わず言ってしまったけど、何をさせられるんだろう?
「ちょっと、待ったあ!」
突然、樒が僕と千尋さんの間に割り込む。
「六道魔入さん。優樹の罪悪感につけ込んで、不当な要求をする気じゃないでしょうね?」
「不当な要求とは?」
「そりゃあ、お金とか、お金とか、お金とか……」
金しか思いつかんのか!
「大丈夫よ。むしろ願いを聞いてくれたら、こっちが謝礼金を出してあげたいぐらいだから……」
「え!? そうなんすか?」
一瞬、樒の目に$¥マークが浮かんだ。
「でも、霊能者協会では、規定の料金以外は受け取れない事になっていたわね。残念だけど……」
「うう……ものすごく残念」
「私の頼みは、さっきも言ったけど、霊を呼び出して欲しいのよ」
つまり、心霊番組に出すために霊を呼び出せと……
でも、霊を見せ物にするなんて……
「霊を呼び出す事はできます。ただし、僕が呼び出せるのは、過去に僕が関わったことのある霊だけですよ」
「良いわよ。霊ならなんだって」
「でも、霊は物じゃないのですよ」
「分かっているわよ。バリオン物質じゃないという事ぐらい」
「そういう意味じゃありません。霊は、元々生きていた人間だったのですよ。それを見せ物にするなんて、ひどくないですか?」
「あらあ? じゃあ、人が一生懸命作っているテレビ番組を、低俗呼ばわりするのはひどくないの?」
「う……」
それ言われると弱い。
結局僕は、霊を呼び出すことに同意した。
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