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事故物件2
盗んだバイクで走りだすのは十五になってからにしろ
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パトカーに呼び止められたのは、目的地まで後五分のところまで来たときのこと。
僕は、道路の端にスクーターを止めた。
いったい何だろう?
信号も一時停止も守っていたし、横断歩道ではちゃんと歩行者に先を譲ったから歩行者妨害なんてしていないし、もちろん速度はきっちり三十キロを守っていたし……
ミニパトから降りてきた婦警さんが僕の前に立つ。
「君、免許証を出しなさい」
「え? 僕、何か違反しました?」
「いいから出しなさい」
「はあ」
ここは逆らわない方がいいな。
婦警さんは僕の免許をシゲシゲと見つめた。
「これ、本当に君の免許証?」
「そうですけど」
「お兄さんから、借りた物じゃないの?」
「僕は一人っ子ですけど」
「だけど君は小学生でしょ。免許証をどうやって手に入れたの?」
そういう事か。
「今、僕が着ている服は三多摩高校の制服ですけど」
「高校?」
「高校生です。十六歳です。公立なので、付属小学校とかではありません」
ミニパトから、もう一人の婦警さんが降りてきた。
「洋子。どうしたの?」
「優花。この小学生が、どうあっても高校生だと言い張るのよ」
だから高校生だって……
「ん?」
後から降りてきた婦警さんが、僕の顔をのぞき込む。
「ああ! 君は社さんよね?」
え? 知っている人だっけ?
「今日は女装しないの?」
うわわ! なんでそんな事まで知っているんだ!?
「な……な……なんの事ですか!? 女装なんてした事……あ……ありません! そんな変な事……」
「何言っているの。この前、女装して痴漢を何人も捕まえてくれたのは君でしょ」
そうだった! あの時は何人かの警察官に痴漢を引き渡していたから、結構顔も覚えられていたのか。
後から降りてきた婦警さんが、同僚の方をふり向いた。
「この子、背が低くて可愛い顔しているけど、間違えなく高校生だから」
「そうなの? でも高校生が、こんな夜中に何をしているの?」
僕は名刺を差し出した。
「霊能者協会? それじゃあ、この近くで幽霊でも出たの?」
「詳しい事は言えませんが、その先にある物件で、仕事を依頼されまして……」
スマホが鳴ったのはその時……
電話の相手は魔入さん。
『ちょっと社さん。まだなの?』
「すみません。お巡りさんに呼び止められて……」
僕は婦警さんの方をふり向いた。
「もう行っていいですか?」
「待って、そういう事ならパトカーで先導します」
「え? でも……」
「実を言うとね。小学生がバイクを盗んで、この辺りを走り回っているという通報があったのよ。このまま君を行かせると、また別の警官に呼び止められる事になるから」
なんて迷惑な小学生だ。バイクを盗むなら十五になってからだろ……
いやいや、十五になってもやっちゃだめだが……
現地に着くと、魔入さんは門の前で待っていた。
「ちょっと! 社さん。どうしてパトカーなんかに先導されて来るのよ?」
「いや……それが、子供がバイクを盗んだとかで……」
バイクと覚しきエンジン音が聞こえてきたのはその時……
「わあ! 止まらん! 止まらん!」
ん? どっかで聞いたような幼女の声……
声の方へ目を向けると、一台の原付バイクがウイリー走行で突っ込んでくる。
乗っているのは、ノーヘルの幼女。
いや、あいつは!
「わあ! そこを退くのじゃ!」
タンハー! バイクを盗んだ小学生ってこいつか……
僕は、道路の端にスクーターを止めた。
いったい何だろう?
信号も一時停止も守っていたし、横断歩道ではちゃんと歩行者に先を譲ったから歩行者妨害なんてしていないし、もちろん速度はきっちり三十キロを守っていたし……
ミニパトから降りてきた婦警さんが僕の前に立つ。
「君、免許証を出しなさい」
「え? 僕、何か違反しました?」
「いいから出しなさい」
「はあ」
ここは逆らわない方がいいな。
婦警さんは僕の免許をシゲシゲと見つめた。
「これ、本当に君の免許証?」
「そうですけど」
「お兄さんから、借りた物じゃないの?」
「僕は一人っ子ですけど」
「だけど君は小学生でしょ。免許証をどうやって手に入れたの?」
そういう事か。
「今、僕が着ている服は三多摩高校の制服ですけど」
「高校?」
「高校生です。十六歳です。公立なので、付属小学校とかではありません」
ミニパトから、もう一人の婦警さんが降りてきた。
「洋子。どうしたの?」
「優花。この小学生が、どうあっても高校生だと言い張るのよ」
だから高校生だって……
「ん?」
後から降りてきた婦警さんが、僕の顔をのぞき込む。
「ああ! 君は社さんよね?」
え? 知っている人だっけ?
「今日は女装しないの?」
うわわ! なんでそんな事まで知っているんだ!?
「な……な……なんの事ですか!? 女装なんてした事……あ……ありません! そんな変な事……」
「何言っているの。この前、女装して痴漢を何人も捕まえてくれたのは君でしょ」
そうだった! あの時は何人かの警察官に痴漢を引き渡していたから、結構顔も覚えられていたのか。
後から降りてきた婦警さんが、同僚の方をふり向いた。
「この子、背が低くて可愛い顔しているけど、間違えなく高校生だから」
「そうなの? でも高校生が、こんな夜中に何をしているの?」
僕は名刺を差し出した。
「霊能者協会? それじゃあ、この近くで幽霊でも出たの?」
「詳しい事は言えませんが、その先にある物件で、仕事を依頼されまして……」
スマホが鳴ったのはその時……
電話の相手は魔入さん。
『ちょっと社さん。まだなの?』
「すみません。お巡りさんに呼び止められて……」
僕は婦警さんの方をふり向いた。
「もう行っていいですか?」
「待って、そういう事ならパトカーで先導します」
「え? でも……」
「実を言うとね。小学生がバイクを盗んで、この辺りを走り回っているという通報があったのよ。このまま君を行かせると、また別の警官に呼び止められる事になるから」
なんて迷惑な小学生だ。バイクを盗むなら十五になってからだろ……
いやいや、十五になってもやっちゃだめだが……
現地に着くと、魔入さんは門の前で待っていた。
「ちょっと! 社さん。どうしてパトカーなんかに先導されて来るのよ?」
「いや……それが、子供がバイクを盗んだとかで……」
バイクと覚しきエンジン音が聞こえてきたのはその時……
「わあ! 止まらん! 止まらん!」
ん? どっかで聞いたような幼女の声……
声の方へ目を向けると、一台の原付バイクがウイリー走行で突っ込んでくる。
乗っているのは、ノーヘルの幼女。
いや、あいつは!
「わあ! そこを退くのじゃ!」
タンハー! バイクを盗んだ小学生ってこいつか……
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