上 下
3 / 14
そこに死神様がいるらしい

そこに死神様がいるらしい  後編

しおりを挟む
 居酒屋の個室席に僕達は移った。国枝は上座に生中とお通しを置く。
  そこに死神様がいるらしい。
 「さて、健康診断の結果では、俺の身体はまったく問題ないらしい。つまり、俺が三ヶ月後に死ぬなんて事は死神にしか分からない」
 「そうか。それで……」
 「今なら、生命保険に入れる。女房子供に保険金を残してやりたいんだ」
 「入ればいいじゃないか」
 「金がないんだよ。貸してくれ」
  そういう話だったか……
「なんで僕が……」
 「おまえ、最近羽振りが良いそうだな」
 「そんな事はないぞ。僕は貧乏だ」
 「貧乏な奴が、ポルシェで同窓会に来るかよ」
  ちっ!! もっと、質素に振る舞うんだった。
 「確かに金はある。だが、返す当てのない奴に貸す金はない」
 「返す当てならある。三ヶ月後に俺は死ぬぞ。そしたら保険金で返せる」
 「死ななかったら、どうする!?」
 「大丈夫だ」国枝が空席を指さす。「死神が保証している。なんなら、本人に聞いてくれ」
  無理だあ!! と危うく叫び掛けた。
  いや、襖で仕切られているだけだが、ここは個室。問題はない。
 「いい加減にしろ!! 死神なんているわけないだろ」
 「いるじゃないか。ここに。見えないのか?」
 「ああ、見えないよ。見えるなんて嘘さ。みんなを騙していたんだよ」
 「霊がおまえにとり憑いて、色々喋っていたのを見た事があるが……」
 「演技だよ。演技。霊媒師のふりをしていたんだよ」
  不意に、国枝は襖の方を向いて言った。
 「だ、そうです。みなさん」
  襖が突然開く。そこにいた怒れる面々に、僕は見覚えがあった。宗教団体を告訴している被害者団体御一行様である。
 「そうそう、言い忘れたが」
  国枝が僕に名刺を差し出した。
  名刺には『弁護士 国枝 正義』と書いてあった。
 「今は俺、この人達の弁護やってるんだ」

           了
しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

はい、ヒロインを苛めます。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:695

異世界迷宮のスナイパー《転生弓士》アルファ版

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:156pt お気に入り:584

俺を裏切り大切な人を奪った勇者達に復讐するため、俺は魔王の力を取り戻す

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:5,219pt お気に入り:93

女子に間違えられました、、

青春 / 完結 24h.ポイント:284pt お気に入り:31

神様の手違いで異世界のペット?!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:49pt お気に入り:71

【長編版】婚約破棄と言いますが、あなたとの婚約は解消済みです

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:3,855pt お気に入り:2,163

牢獄の王族

BL / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:213

処理中です...